『真田丸』 第39話 「歳月」
一見、平穏無事な九度山スローライフなんだけど不穏も孕んでるよ、って描き方がうまいよなあと。
「全部こんな感じか?」「全部こんな感じです」予告ですでにネット民の話題をさらっていった絶妙な間合いのやりとりが序盤に。堺雅人と大泉洋だから、やっぱりこういうのも欲しいなって思うよねw 本人たちもやってて楽しかったのでは。
おそらく昌幸の死を受けて九度山に立ち寄った(?)らしい信之。「孫氏の兵法にも劣らぬ価値」からの「凡人にはわからん」の言葉には、この人の亡父への崇敬が滲んでたね。10年も離れて暮らし、僻地で死なせた(救えなかった)悔恨も含んだ崇敬というのかな。それに比べると、ずっとそばにいて、親父の悲哀もぶれないろくでもなさも実際に見て、暮らしの格好をつけさせるために借金を重ねていた源次郎の感覚はより複雑で生々しい感じもする。
でも、信繁は父のジレを受け継いでるんだよね。いや単純に、九度山の苦しい暮らしでは新品を求めるのも難しいだろうから、寒さをしのぐにはあれがベストなんだろうけど。昌幸のジレや座布団の獣けものした感じが、前半ではワイルドでかっこいい戦国の世を表現していたのに、信之たちが江戸や国元ではカチッと「江戸時代!」って感じの格好をするようになった今、時代に取り残された感を醸し出してる。
夕食時には「何の不満もありません」と家族で口をそろえておきながら、兄と2人になったら「実は生活が苦しいんです」って打ち明けるのがなかなかリアル。確かに九度山の生活は平穏。領地を攻められる恐れもないし、伏魔殿で上手く立ち回る必要もない。でも貧しいから畑仕事に精を出したり、行くところも制限されてるから身内でこぢんまりと過ごすしかない。だから子どもがポコポコ生まれたりするんだけど、佐助がペラペラと信之をdisったり、春がいりいりしてたりもする。
佐助は確かにあんなふうによく喋るのも彼の一面なんだろうけど、ストレスが溜まってるってことだと思うんだよね。能力を発揮する機会が全然ないんだもん。余計なこと喋らずに本気出せる人生のほうが、彼にはラクなんだろうな。江戸にいる薫ママはじめ女衆や女子トークに馴染める茂誠さんは居心地良さそうだけど(家康はもう江戸のインフラ等を整えている!)、戦乱の世が終わることで活躍の場を失う者たちも多くいて、その一人が佐助なんですな。領主たるもの、村の整備や領民の暮らしを安定させるのは大事な仕事、でもそんなの佐助にとっては「面白くない」の一言なんだよね。
徳川も豊臣もほかの大名も出てこなかったのが効いてた今回。中央政治の情報は入らず、というかそんなことより借金かさんで生活が苦しい九度山ライフ、ほんとに僻地で流人生活で、でもだからこそ得られた初めての平穏な日々なんだなあと #真田丸
そんな登場人物の少ない中、OPでトメグループにクレジットされたのは薫ただ一人で、高畑淳子の文字が燦然と輝き弾き消えていくの見て何とも言えない気持ちになった。これからしばらく、大河でも、他のドラマでも彼女を見ることはできないだろう。恐らく初めてだろう、大河クレジットの大トメが、とりあえずのありがとうさようならを彼女に伝えているようで切ない。綺麗な着物を着て若く輝かしい日々を(いろいろ盛りながらw)回顧し、皆に大事にされて幸せそうな薫の最後の姿も。
平穏でやることないから子どもポコポコ生まれて、でも平穏でやることないから春がきりにいらん対抗心燃やしてたりもして、閉そく感なんだよね。で、源次郎は子作りで春に応えることははできても子育てはからきしっていう詰んだ感じな・・・。
春がきりの言葉を聞いて突如態度を豹変どころか大好きモードに入ったわけは、はっきりとは説明してないんだよね。でもなんとやくすんなり納得できる。そういうとこもうまいなーと思う。と言いつつ、あのときの春の心情を忖度してる私なんだけど。 #真田丸
春がきりに心を許したのは、良くいえば、きりの励ましには裏がないってのがわかったんだろうし、悪く言えばきりなんか本当にメじゃない、って確信できたのかなって思う。「源次郎の子どもが欲しいと思うこともあった、でも素直になれなかったし、出産はもう(年齢的にも)叶わない」ってことだよね。そんなきりは切ない。春が3人も子をもうけているからなおさら。サナール紐を両端から思いきり引っ張り合っても、(かつて薫の腕をそれぞれでひっぱったときのように)拮抗した敵じゃないんだ、って春は思えたんじゃないかな、だから自分から吸いつくようにきりの手を握った。目をキラキラさせる春にドン引きするきりが印象的。それでもきりは結局、春の面倒も見るんだろうなー、梅にも裁縫教えてるみたいだし…
きりは、源次郎との仲は「最後にたった一度」みたいな感じかなーと思ってるんだけど(たった一度のあとが「情を交わす」なのか「源次郎に心底から頼りにされる /感謝の言葉をかけられる」なのかは分からない)、やっぱり佐助との接触が最近は気になるよね。霧隠…いや先週も書いたけど。
いろんな人にいろんなことを教わるばかりだったから子どもの育て方がわかんなかった信繁が、息子に対して教わり上手を発揮することで息子を肯定する流れ、よかった。「父はおまえに教わりたいのだ」こういうキラーフレーズを息子に対してもサラッと発揮できるのはさすが愛され次男坊かな #真田丸
大助の碁の打ち筋(正しい言い方がわからない)が昌幸に似てきて内記が驚いたりするのかなあ。親子の碁盤対決はもう1,2エピソードありそうだなあ、最後はきっと泣ける方向なんだろうなあ(想像してもう泣きそう) #真田丸
親子の囲碁シーン良かった・・・不遇だし閉そく感ある九度山の暮らしだけど、そんな暮らしの中でこそ(昌幸が好きだった碁を通じて)通い合う親子の情であり、これはきっと先でも形を変えてリフレインされるんだよね~
先週から稲が微妙に似合ってない感じのピンクの着物を着てて、ん?と思ったら今週は薫様と一緒になってお化粧に夢中、そのうえ徳川に任せとけばいーじゃないと思考停止。本物の都びとで雅を知り、多くの人と交わって政にも精通してそうなお通との対比がえげつない #真田丸
最後、たかに抱きつかれたときの源次郎の顔がすごい好きなんだけど、あれは「困るよー、そんなんされたら据え膳食っちゃうよー」の顔だと思うしきっとあのあといただいたのだと想像している。やることはやっているのだな、と、梅ちゃんのときからそーゆー男だ #真田丸
それにしても、たかちゃんキュートだったなあ。平穏とはいえ閉塞感と諦観の漂う九度山に自由で大らかで若々しい風を吹き込んでいった。広い世界に出ていって自分の才覚で生きてきた娘にほうぼう探し回られてあんなふうに抱きつかれちゃ、そりゃ源次郎は悪い気はせんし春は凶器ふりあげるよな #真田丸
たかちゃん、岸井ゆきのさんだっけ? 初めて見たけどとても魅力的な女優さんですね。