読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『真田丸』 第35話 「犬伏」

f:id:emitemit:20160111201544j:plain

 










 

はじめ、昌幸は実行可能な策を立ててるんだよね。家康の横っぱらを突いて首をとる。そうなると形勢は一気に上杉(石田)に傾く。佐助が届けた密書で三成の挙兵を知らされると、昌幸は即座に「早すぎる」と。これは正しい読みで、昌幸が戦の戦術面ではまだまだ冴えわたっていることを示している、そして信繁は「早すぎる」の意味をすぐに理解し、理解できない信幸に解説する。信幸は戦術の人ではなく、信繁にはその点、父譲りの才覚がある。こういうのがサラッと1,2分で描かれるけど、視聴者への戦術解説にもなり三者三様の人物描写にもなってて、うまいんだよなあ。

先週の感想で信繁を「父譲りで大局観ゼロ」と書いたけど、戦の成り立ちが戦国真っ盛り期から変化しているのはきちんと読めていたことが判明。父、昌幸は群雄割拠し小競り合いに終始しながら年月が費やされる時代にいまだ身を置いている。そうであってほしいという願いからでもあるんだろう。

「豊臣か徳川、勝った方が次の覇者になる、どちらかにつくしかない」中央政権を長く見てきただけあって、信繁はそこまではわかってるんだよね、そこでどちらかを選ぶとき徳川はあり得ないと思うのも大坂暮らしが長かったから。心情としちゃ、そりゃそうだよなあ。昌幸は「豊臣の下で自分は我慢し続けてた」、かといって徳川の下で働くのも矜持が許さない。昌幸はやっぱり真田という小さな郷の独立領主で、誰かの麾下について安穏を得るより、己の才覚で荒海を渡りたい男なんだなあ。武田信玄への思いは忠誠心というより畏怖心であり、今は郷愁なんだろうなあ、自分を思いきり暴れさせてくれた時代。

で、信幸は凡人だから戦術には疎い(それでも昌幸や信繁より一生懸命戦術書など読んで勉強してるところが泣かせる)。豊臣と徳川、どちらが勝利をおさめるのかもわからない。わからないうえで、二手に分かれるという奇策を出せるのが信幸! なぜなら誰よりも真田のことを考えてるから。家族みんなのことを思ってる、まっすぐな人間だから。

言われてみればほんとハマるんだよね、昌幸は組織としてカッチリしてる徳川軍よりはまだ自由に動けるだろう上杉の友軍のほうが向いてるし、信繁は豊臣寄り。で、父と決別してでも夫の自分につき従う稲がいる。それぞれの信条を考えると一手にどちらかにつくより別れた方がいいんだよな。んで、別れたらどちらかが勝って生き残れる(可能性が高い)。でも、どちらかが負けるのも確実なんだよね。そのリスクを希望に変えることができるのが信幸という真田の新しいトップなんだなあ。熱い。

「兄上には迷惑をかけっぱなしです」
「まあな、だが…」

の意味をはっきりと測りかねて、録画を見直した。この“迷惑”は何を指しているのか? ざっとTLを見た感じでも(真田丸のタグは速すぎて追えないからハナっから追わないんだけど)言及されてなかったように思う。パッと聞いたとき、まるで関が原の結末を予見(信幸がついたほうが勝ち、父たちの助命に動く労力をかける)しているのかと思ったけどそんなはずはなくて、だとすると・・・?

・安房守の血を引き「策士」を自負していた自分が妙案を出せなかったこと

 →でもそれは「迷惑」っていうより「不甲斐ない」みたいな話だよね。

・父と共に上杉(豊臣)につくよりここに残って徳川に父の離反を報告し、麾下に降るほうが大変

→それはあるよね。受けた信幸の「徳川に一番近いのは俺だ(だからしゃあない)」みたいなセリフも。信繁にしたら前回、家康の三たびの勧誘を言下に断ってるから、ここで昌幸が離反したと知ると家康がさらに怒り心頭になって信幸につらくあたるかもしらん。つまり先週「家康を怒らせた」のを含めての「迷惑」。

さらに広げて、

・今後も自分は父の下で働くのに対し、兄は父とは別個で真田を背負う立場になる

ってことも考えられるのかな。兄を助けたい、というのが信繁のもともとの志だったのに、結局兄を一人にして、自分は父と共にあるんだもんね。いくら老いが見えるとはいえ、父といれば矢面に立つのも責任とるのも父だから。いくら再会への希望を秘めていても、こうして別れれば、兄を支え助けることは容易にはできないのは想像できるわけで。

なんにせよ、兄の提案に圧倒されて言葉もなくうなずいたあと、2人になったときくしゃくしゃに泣く信繁が、ここからどう成長していくかですよね。んで、今、超絶かっこいい兄上にはこれからまだまだ苦労があるけどこのままかっこよさ天井知らずで行くのか、ちょっと情けない姿なんかまた見せてくれるのか、どっちにしても心から応援したいと思った。パパは何となく哀しい予感がするけど秀吉の最期ほどむごくはあるまいて・・・!


その昌幸の「表返り」と、ガラシャを引きずりだそうとするきりの「案外重い・・・!」、そして「せっかくやる気になっておったのに気持ちが萎えた!」のあとの「・・・若干な」。それぞれの一言で3回笑わせてもらいました。春ちゃんの「表返りだそうです」もなw 

そしてお屋形さまの「嫌がる奴は逃がしてやれ」を受ける直江は一言も発せず笑わせるww でも実際、真田軍でも嫌がってたよね、百姓足軽キンコン今野。そうだよね、一度戦場から離れたらもう行きたくないよね。ほんのちょっとだけど、庶民の意識にも時代の移り変わりがあると感じさせる描写だった。