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『とと姉ちゃん』 第12週 「常子、花山伊佐次と出会う」 (下)ツイートと追記: 個は弱いけどきっと途絶しない

ドラマ

 

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平凡な男が暮らす小さなかわいい家は切り取られ、200年続いた伝統の店は看板を下ろすのだった。えらく偉そうで周りを振り回しているらしい男が書く存外綺麗な絵も、きっぷのいい女店主が関東大震災からも立てまわして切りまわしてきた店も、システムに対しては弱い個でしかない。

印刷された絵も文字も、検閲の結果、切り取らなければならなくなった。いっぽうで滝子は、店の中という実体ではなく、帳簿に書かれた文字を見る。ここも対称だったんだな。戦後、常子は書かれるものの強さを信じ、それを誰からも脅かされない雑誌を作るんだろう。もう二度と切り取らなくていい世の中への願いを込めながら。

「美しすぎる」なんて、もはや使い古された感のある形容詞がこれほどぴったりくることもないんじゃないかという、「美しすぎる祖母」滝子が登場したとき、これはいつか彼女がボロボロの老婆になる前フリの姿なんじゃなかろーかとも思ったけど、滝子は凛としたままで物語から去っていった。それが、彼女の誇りが守られたように感じてホッとしてる。

先週の森田屋・今週の青柳と立て続けに戦争によって店を閉めることになったわけだけど、森田屋は家族の絆をさらに強めることが示唆されながらの退場、青柳滝子は最後まで自分で決断し誇り高く、息子と番頭に支えられ、常子に自分の商いの(生き方の)精神を伝えた。ツイートしたように、個の弱さ、限界を描き、蹂躙される姿を描きながらも、しぶとい個、完全に葬り去られたりしない個の姿を描いていたと思う。

そして、絵が切り取られてから物語の舞台からも消えたままの花山伊佐次はどのような顔をし何を思ってこの戦時中を過ごしているのか、気にならずにはいられない。ここはもちろん、わざと、彼の気配を殺しているのだ。「一億火の玉」の激烈なコピーだけを残して。