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『真田丸』 第23話 「攻略」

大河ドラマ

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何をおいても今回は高嶋政伸の鬼気迫る演技である。『武田信玄』での中村勘九郎(当時)のように、語り継がれる敗軍の将になるのでは。実質3人きりで描かれていながら、「関八州の盟主・北条家の滅び」が目前にあるという重大さがひしひしと伝わってくる。先週のラスト、宣戦布告状を受け取った慄然とした表情を思い出し、あのとき既にわかっていたのだな、と。

内心のおそれを悟られまいと蹴鞠に興じ、やつれを隠すために薄化粧、夏場にひと月も入浴しない体臭を隠すための香・・・。それらを見抜く江雪斎も、認める氏政も、うっうっう・・・。これ(蹴鞠や薄化粧)って、史料か巷説のエピソードなの? 三谷さんの創作?

負け戦になるのは正しい読みとはいえ、「この小田原城があれば安心!」って言いながら風呂にすら入れないって、尋常な怖がり方ではない。それを氏政個人の小心というよりは「5代100年の大大名家を滅ぼす者の怯え」として描いていたのだろうと思う。自分の命がどうとかではなく、家を滅ぼすという事実が氏政を怯えさせているのだと思う。

先週は宣戦布告状を見て怯えをあらわにしていた氏直が、手をこまねく苦渋の中とはいえ、正気を失っていくような父に反比例して覚醒していくような姿が印象的だった。信繁に頭を下げ「助けてくれ」と乞い、手を握る氏直の目は澄んでいて、これまた自分の命がどうとかではなく「家を滅ぼしたくない」という一心の姿に見えた。かつてあれほど狭量で、父の尊大さを表面的に(だけ)マネッコしていた氏直が、ここに至って自分を持ったのだ。

小田原合戦に臨む諸将や諸大名の描き方が面白かった。史上空前の大戦さとはいいながら、上杉も、真田も士気が低い。久しぶりに登場した上杉景勝はいつにもまして暗く無口で、ある意味「もうひとりの北条氏政」であることを感じさせる。「秀吉陣下に自分の場所はない」という氏政の思いをある意味体現しているようなのだ。ひたすら沈鬱な景勝と、ひたすらおっさんの愚痴を繰り広げる昌幸、そして信幸&直江の飲み会w 景勝「大義がない」 昌幸「さよう、大義がない」 大義とか関係なくやる気ないだけww てか大義って言葉、辞書にないでしょパパンww

黄母衣を背負う伝令として各陣を駆けまわる信繁。秀次は小田原を見下ろして桜の海を想像する風流さを見せる。「殿下がおよびです」と言われてもおどおどすることなく、「あいわかった!」と颯爽たる返事、戦場における彼の肝の太さや優秀さを表現してたね。秀次はいろいろ武功がある人だからね。三成と対照的な描写でもあった。

巷間有名な家康の秀吉の連れション…の前に、家康が信繁を誘って連れションするシーンを作った三谷さんw でも、相手の城が丸見えの、見晴らしの良いところに戦陣を構えるって、武者震いとかで立ちションしたくなるのが男の性なのかなーって感じがして自然な連チャンシーンに見えたw ところで信繁ったら家康の二度見してませんでした?

あと、あのシチュエーションで連れションに誘われて出ないって、男の沽券が多少傷つくもんなのかなーってのも自然に思えましたw また、ひたすらやる気のない上杉や真田と違って、「秀吉にまだ疑われているかも=信用されなければならない」立場と自分でわかっていながら、なんとか総攻めを回避しようとするのは、この連れションがあったからなのかなーとも。「北条が滅びれば関八州を与える。代わりに三河も駿河もとりあげるぞ」という秀吉の傍若無人は、家康に別のやる気を起こさせたのだろう。江戸なんて何もない場所だっつの。(しかしのちに江戸は小田原を手本に整備されていくんだよね…詳しくはブラタモリで!)

秀吉の目前で意見を言い、裏では降伏交渉もしている堂々たる働きっぷりの家康。信繁が籠城中の小田原城に入るのが、安易な主人公アゲに見えない。大名の交渉ごとにルートがいくつもあるのは自然だし、信繁の重すぎない身分は使いやすく、それでいてこういった交渉ごとに弁の立つ者が選ばれていたのも事実で、このために先週の戦国リーガルハイがあり、信繁のキャラの積み上げがあったのだなと納得。江雪斎並びに徳川方がこの男こそと恃むのもわかるのだ。

氏政と氏直の親子の対比。ひと月も湯あみできない氏政と、茶々と温泉に行く余裕のある秀吉の対比。ションが出た秀吉と出ない家康の対比。上杉・真田と家康とのやる気のなさの方向の違い。意外に肝の据わった秀次とイライラして腹をこわす三成の対比。そして家康と三成の対比もある。

三成のダメっぷりが・・・w 諸将・諸大名を前に尊大な態度で陣立てや戦略を発表し、信繁にも「負け戦ほど無駄なものはない。そして私は無駄が嫌いだ(キリッ」とキメたあげくの、このダメっぷりであるw そのうえ、上杉・真田の歴戦のつわものの前で忍城水攻め計画をぶちあげるドヤ顔・・・三谷さんの筆が容赦ないw チベスナ顔ってこれね、っていうひどい顔する直江と、あまりのばかばかしさにいっそ晴れやかに笑う昌幸が最高でしたw 三谷さん容赦ないww

茶々。竹内結子ってあんまり馴染みがないのもあって良さがよくわかんないし演技力にも声にもさほど恵まれているとは思えない女優さんだったけど、茶々の投げやり感・やさぐれ感とその底にある虚無感がすごくいいなと思う。「どうせなら焼け落ちるところまで見たいわね」は、強がりでも悪趣味な発言でもなく、彼女に「炎に巻かれてゆくような滅び」にどこか心惹かれてしまう性質があるように感じられた。それはもちろん子どもの頃に経験してしまった複数の滅びによる呪い。幼い息子と遠く離れることに特に痛痒を感じて無さそうなのは、わざとの描写?

てか、滅ぼす気まんまんの北条戦に茶々を連れてくる秀吉の無神経さな・・・。諸将の士気の低さは感じているがゆえの酒宴や「身内を呼び寄せてもいいぞ」発言なのかもしれないけど、基本的にこのごろの秀吉の対応がすべて雑。「唐入りの予行演習だな」だなんて治部と刑部が言ってたけど、小田原でこの士気の低さ、朝鮮出兵のころにはどうなってることやら・・・。

で、今回ちょっとよくわかんない描写がいくつかあったので書き留めておく。来週以降を見れば腑に落ちるのかもしれないし。

・治部と刑部は唐入りについてはあまり批判的でない? 特に戦を嫌ってる三成が唐入りに目に見える不快感を示さないのは不思議。国外なら良いと思ってるのだとしたら、怖い。

・茶々を小田原に派遣することに対して内心の揺らぎすら見えない落ち着き払った寧。病身の秀長に心配かけまいとする優しい義姉の姿でもあったろうけど・・・。秀吉にどこか諦めや割り切りを感じているの?

・前回あまりにかっこよかった反動のように、忍城攻めに手こずる信幸。「いくさ場で暴れまわりたい」のはこの人も同じはずなのに・・・。まあ、大枠は史実なんだろうけど、描写はいささか足りなかったような。のぼうか。のぼう萬斎さまがいるからしょうがないのか! 

・そして信幸に無理な誘いを持ちかける出浦。冗談を言う顔には見えないものの信幸が拒否することを見抜けない出浦さまではないはずで、真意が読めない。佐助を差し出すための策? まだるっこしすぎるよな。


で、いよいよ北条が、そして三成はおめおめと…ってな大ごとを目前に現れた小山田茂誠!! 今それどころじゃないよ!って思えるミクロな人材だけに、このタイミングで出てきたことに逆に興味をそそらせる。すごい引きだなー。うまいよなー。

 

 

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