『真田丸』 第19話 「恋路」

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恋路。副題、「恋しちゃったならしょうがない。」

セリフでも、演者の表情や動きでも、さまざまな情報が示されたのに、肝心なところは断言せず、かなり想像の余地を残した作りになってたように思う。恋心って、理屈でスッキリ整理して語れはしない、ってことだろうか。

一番わかんなかったのは秀吉。



「初めからそれを使ってプロポーズする作戦」と書いたけど、茶々が武具蔵に入るのを待ち構えてたってのは、さすがにないかなーと後になって思った。作戦としては時期が読めなさすぎるような。

でも茶々が「手の内が見え透いたことばかり」と言ったように、技巧を凝らしたプロポーズだったんだろうとは思う。ただ、その中に、「正々堂々といくしかない」という寧のアドバイスが、ちょっとだけ混じっていたんだよね。茶々はその、ひとしずくの真実に動かされた…。

茶々に武具蔵を見せたくないのは普通に本心だったんじゃないかな。見たら嫌でも、死んだ親たちのことを、小谷や北ノ庄のことを思い出すに決まってるし、思い出せば、親たちを滅ぼした秀吉をおぞましく思うはず。それは、茶々に惚れて落とそうとしている秀吉にとってまったく得策ではない。

でも、「あれは淋しい女なのだ」と言ったとおり、秀吉は茶々の性分もよくわかっている(というか、人の性分が読めない男が、百姓から天下は獲れない)。だから、茶々が気に入っていて、なおかつ安全な源次郎を、話し相手につけていたんだ。源次郎を秀吉は完全に信じていた。源次郎は自分の大きさをよく知っていて、自らの身を危うくするようなことをする男ではない、と秀吉は踏んでいたし、実際その通りだった。「蔵に入ってない」と明言する源次郎の真直ぐな目を、秀吉もまた気に入っていたんだと思う。

だから実は蔵に入っていたとわかったときの、源次郎に対する驚愕と怒りも半ば本物だったと思う。自分が人物評価を間違えるはずないし、関白太政大臣豊臣秀吉が、人をたぶらかしこそすれ、だまされるなんて許せるもんじゃなかろう。あの表情、めちゃくちゃ怖かった。

でもそこで、秀吉は源次郎を誅し茶々を叱るより、「今だ! 今が、口説く機だ!」と閃いたんじゃないかな。「殿下をあざむいておりました」と真っ正直に謝る源次郎は、やはり自分にとって何の脅威でもない。けれど、茶々が、自分がかけた封印(蔵を見るな)を解きに連れていく相手に源次郎を選んだのは、ある意味重大な事実。そして、「正面突破で行け」という寧のアドバイス・・・。

いろんな状況を瞬時に捉え、判断して、あのプロポーズになったんじゃないかな。結果的に茶々は落ちた。ナイス判断なんだよね。さすがは天下を獲る男。秀吉の言葉は、いつも全部が芝居なんじゃないんだよね。真実が混じっているから人を動かすんだと思う。





見え透いた言葉の数々だけど、額に汗して一生懸命語り尽くす秀吉の背後で、一言もなく平伏しているだけの源次郎なんだよね。「側室の話を断れば、あまり幸せなことにはならないのでは」と言った源次郎。そんなこと茶々にもわかっていただろう。でも小さくて大きな冒険に源次郎を連れて行った。源次郎にどこか運命を感じていたから。源次郎は蔵の中で自分を刃から守ってくれる。でも、それだけだ。秀吉の前では何の力もない、無力な若者。

歴史上の有名なイベントに、“なぜか”主人公が同席しちゃうのが大河ドラマのお約束で揶揄や批判の的にもなりがちなんだけど、秀吉から茶々へのプロポーズに信繁がただ一人立ち会っているのが、一見、無理やりすぎるのに、このドラマでは必然性のある、ゾッとするようなシーンになってた。

茶々がその人生で三たび絶望するには充分だったのだ。徹底的に無力な信繁を脇に、秀吉に口説かれるのは。





(まったく、「秀次いいわー、憎めない(^^)」「おこうさんいいわー、憎めない(^^)」って、脇にまでどんだけ感情移入させるんだよ!!!って話ですよね)

難攻不落の城にたとえた、喉から手が出るほど欲しい女を手に入れた秀吉。「これが豊臣家の滅びへの道の第一歩」だとナレーションは言う。であれば、今日の秀吉は、勝ったのか?負けたのか? 

重く豪華な扉の向こう、秀吉が囲う籠の鳥になった茶々は、それでもなお、源次郎との運命のつながりを感じている。彼女は(ほぼ)予言どおり、源次郎と時を同じくして死ぬことになる。それは、幸せなのか不幸せなのか?



恋なんてしていない、してるわけがないと言う源次郎の行動に隙が生まれたのはなぜなのか?(隙が隙がと3たびにわたって言い募られるの、面白かったですねw) 茶々の禍々しい予言に「そんなまさか」「お戯れを」ではなく「遠い日でありますように」なんて応じたのはなぜ? 

運命ってなんだろう。それは恋とは違うものなんだろうか。むしろ恋よりも強いものなんだろうか?

なぜ、茶々は信繁と運命がつながっていると感じたのだろう? 信繁と茶々には、愛しい身内(信繁は、妻である梅ちゃん)を戦でなくしたという共通点がある。信繁は、その悲しみを抱えたまま大坂に来たはずだ。顔には出していなかったけれど…。でも、そんな共通点が運命っていうのも、なんかそぐわないよね。やっぱり、理屈で説明できない、茶々の感覚なんだろうけど・・・。


視聴者として、神の視点ですべてを見届けてるはずなのに、考えれば考えるほどわかんなくなるようなラビリンス。そんな、「恋路」の回でした。

小日向秀吉はもちろん、今日は竹内結子がすばらしかったなあ。今までどんな作品より一番、彼女にうおおと思ったかも(というほど、彼女の出演作をあまり見てないんだけど)。美しくて、哀れで、不吉で、でもやっぱり魅力的な女、この物語のファム・ファタールだった。

心をズタズタに壊された寧の、最後の表情もすごかった。天下人の正室として、そして長年連れ添った夫が望むように、鷹揚に笑わなければならないけど、寧は本来、そういうことができない人なんだ。それを無理に笑ったら、まるで妖怪みたいなおそろしい顔にになってた。田舎の、みんなの世話焼きおっかさんだった寧をそんなふうにしてしまったのは秀吉だ。「寧は大事な女だけど戦友みたいなもんで色恋はない」。不倫男の常とう句が、(妻に向かって直接そう言わなくても)妻をこんなふうにしてしまうんだよなあ。

きりちゃんにはホントがんばってほしい。きりちゃんが不幸になったらほんと泣く。まぁ今まで一度も幸せなめにあってない気もするけど・・・w



ほんとは蔵に入ってた! ってことが判明し、すわ修羅場!って雰囲気になったときの、三成の颯爽たる退席術。すばらしかった。殿下のなさることは全肯定。全力で援助。そんな三成も、側室・茶々の登場には危惧を覚える。それはまったく正しい危惧で。

そうそう、茶々の嫁入り前に、秀吉の「唐入り」構想が明かされたのはなかなか画期的な描写ではないかと思いました。もちろん意図的なもののはずで、今後も注意して見たい。

もうひとつの婚姻、信幸と稲。お兄ちゃんと平八郎の、男子トイレでの邂逅www 稲ちゃんの、「殿のために働きたい」は、きっと「父の役に立ちたい」と同義ですね。役割を果たしたいのと、イヤじゃイヤじゃ~な気持ちとが交互にやってくるのがよかった。わかるよね。縁組の話に、「有難い話ですが…」とナチュラルに断ろうとした昌幸が、いかにも田舎の国衆って感じだった。真田レベルでは、そこまで高度な政略結婚ってなかったんだろうな(薫さまは京からきてるけど、さほどの家柄でもなさそうだし)。

でも、いざ政略の匂いを嗅ぐとノリノリになるパパンw 「ここは折れてくれ」「ここは泣いてくれ」家康と昌幸、相似形であるw それにしても、おこうさんとの別れがこんなにつらくなろうとは、登場当時、誰が想像したであろうか!

 

 

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