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『真田丸』 第10話 「妙手」

大河ドラマ

 

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今週も見事な脚本。構成がとても綺麗で、その中身は生き生きとしている。45分があっというま!

北条と徳川のあっと驚く同盟成立で終わった前週。冒頭ナレーション、「昌幸の次の一手は」に期待が高まるも、昌幸さん「わからん」とチと投げやりになっておられる。室賀さんも動揺しててダマレコワッパ発動に至らず、TLに嘆息が広がります。

徳川に残っている信尹さんは今日も冷静にお仕事中。本多正信は彼の有能さにちゃんと気づいています。家康「わしの家臣にならんかのう」。そうだよね、真田よりずっとビッグなうえ、これだけ魅力的な武将だったら、乗り換えちゃおうかなーってなってもおかしくない。今と違って、こうして出張して来たら、LINEも電話もあるわけじゃなし、手紙のやりとりのみで遠い主家と意思統一し続け・モチベーションを保ち続けるのは難しく、しょっちゅう顔を合わせてる外交相手のほうから好条件切り出されたりしたら、情がうつってもおかしくないよね。家康の「わしの家臣に・・・・」も荒唐無稽な話じゃないのです。だけど「信尹はムリ。」ということもちゃんとわかっている正信です。

家康は先週の氏政と同じく真田を雑魚扱い。のちほど、家康は秀吉のことで頭がいっぱいと判明し、「そりゃ真田にかかずらわってる場合ちゃうわな。」と説得力を増す雑魚判断ですが、その雑魚に翻弄された氏政の二の舞を演じる気配も立ち込めます。が、今週は本多正信が切れ者の本領発揮を開始。「雑魚だが毒を持っている」の一言で、真田を招待することに。誘い水にはホイホイのるのが真田昌幸流。碁盤上で「妙手」を打って高梨内記を驚かせたあと、「強気でいかせてもらう」。

と、徳川のもとに参じたのは信幸! そーきたか。「雑魚を呼んだら雑魚の稚魚が来た」と言わんばかりにやる気のない態度を取る家康w しかしお兄ちゃん、強気です。上杉対策のため、虚空蔵山城の向かいの海ガ淵に築城を立案。竣工したら真田が入りますとは、なんという図々しさw 雑魚の毒針の切っ先に触れたかのような苦い顔をする家康。正信に一瞥をくれると「よいでしょう」という頷き。

おそらく正信は(家康も)、いったんその城を真田にまかせるといったところで、いつでも取り上げられると思っているのでしょうね、沼田のように。安全保障上、海が淵の築城は上策であるという判断。真田側も、そこまで分かったうえでの立案なのだと思われます。このヒリヒリした交渉の中で、緊張感なくニコニコと懐から設計図を取りだす信繁。図々しいにもほどがある真田ですw 「おう、これは良い城ができそうじゃ」なんて茶番を家康も演じるww

「そのかわり、沼田と岩櫃は取り上げるからな」とそこは抜かりない家康です。そうそう、こういう、「その代わり」が出てくるのが交渉なんだよね。ああ、こうやってちゃんと交渉する大河ドラマ、いつぶりでしょう(泣)。

お兄ちゃん、ちょっとびっくりするも、「お断り申す!」超強気です。とにかく強気でいけ、何を言われても飲むな、と言い含められてきたようです。のらりくらりとかわそうとする家康。「じゃが・・・」「じゃがではござらん!」 ちょ、音量も間合いも完全に「ダマレコワッパ」の応用編ww お兄ちゃん、ダテに怒鳴られ続けてきてなかった!! その根拠のない迫力に本多平八郎忠勝が発動。・・・を、制する信繁! 先週、藁人形相手に稽古してたのを思い出させる、機敏な動きでした。一触即発のムードに達したところで、信尹が沼田の件はいったん引き取らせてください、と。

これ、面白いなと思うのは、弱い側である真田は、「いったん引き取って判断する」と言えるんですよね。しかし、海が淵の築城について、また先週、徳川につく代わりに何某と何某を…と真田に頼まれた家康は、「その場で」判断を迫られる。「ちょっと家臣と相談する」とは言えないわけです。力関係を思えば一見、逆な気がするけど、強いほうが、否であれ応であれ、デーンと構えてパッと判断しなければならないんですよね。

『戦国大名は、百姓・領主(国衆)、家中(家臣)という重層的な「頼み」構造の頂点に立つ存在。法にもとづく権利などに裏打ちされたわけではない前近代社会において、その位置を維持するには、何よりも名誉を維持し続けることが大事だった。権力の下層に位置する者たちの声を無視しては、その地位は守れなかったのだ。』


と、本作の時代考証をつとめる黒田基樹の著書『戦国大名』にあった。いちいちウジウジ迷ってるようじゃ、「大丈夫かコイツ」と思われる。強者にとって、「頼もしからず」というレッテルを貼られるのは、何より避けなければならないこと。



で、直後、がんばったお兄ちゃんの口から魂が出ていく寸前・・・w ごろんと横倒しになっちゃうのは脚本の指示かな?現場での演出? いずれにしても、こういう思いきった緩急が面白いですよね。三谷さんなら平然と書くと思う。「時代劇なのに・・・」とかいうツッコミは、こういうとこにはふさわしくないのです。笑顔で「引き続き、おきばりください」と言う信繁のお気楽さなw これも、忠勝を制したあの気魄があってこそ生きるのよね。

雑魚に思わぬ強気を見せられたちょっとびっくりする徳川主従に、阿茶局がナイスアシスト。ここでおばば様登場かー!



あれだけ「強気」だった3人組が、おばば様を見た瞬間、一気に相好を崩しちゃう。「はいよー」と登場して、信幸の言には「んあ?」と聞こえないふり。それを「いつものおばば様だー!」と喜ぶ信幸に泣けるw ここでおばば様を交渉の手札にせず、返しちゃう家康が良い。「だから沼田をよろしくね」。表面上は従属関係なのだから、強硬ではなく懐柔する作戦である。



それにしても、この海ガ淵の城が「上田平」の上に立つ、かの上田城なのね。まさか徳川に立ててもらった城だったとはw 人足も資材も徳川もちで普請させてる横で、ゆうゆうと碁を打つ真田安房守主従の絵がw 平八郎呼んできて激怒させたいところであるww

沼田城代の大叔父上は、明け渡しを拒否。



正確には、「血の気が多いにもほどがある」でしたねw ほんにほんに、と突然、『あさが来た』の“かの”さんが登場しそうなコメントですw しかしこれ、思ったんですけどね、昌幸が再び平身低頭すれば、大叔父上の対応も違ったのでは? 昌幸は、相手が信幸なら矢沢頼綱が断るとわかったうえで、わざと差し向けたのでは? なーんて邪推しちゃうくらいには、10話までで昌幸への懐疑心は育ちきっています(笑)。あるいは、どうせ自分が行っても断られるだろうから、信幸に行かせたのかもしれないけど・・・。

いずれにしても、頼綱の拒否は織り込み済みだったと思われる。今回、大叔父上はコントロール外、と。死なれない程度なら、暴れられてもしゃあない、ぐらい思ってたかも。しっかし血の気の多い大叔父上、戦国の老武者っぷりがいいですね。「ここを死に場所と心得よおおおっ!」って、大河にはこういう人が何人かいてほしいもんです。「年甲斐もなく浅慮過ぎ」と口では言いながらも父に助太刀したくてたまらない三十郎も良い。



劣勢になった碁盤をしれーっとワヤにする昌幸w これとて立派な策です!(笑)「上杉に行け。怒ってるだろうなー。あとは自分で考えろ」。息子へのこんな指示に「昌幸ならしゃーない」「あいつならやる」と笑うTL。当の息子も、リア充真っ盛りなので張り切っています。

・・・ってか、景勝さん、信繁を意気に感じすぎちゃって泣いてるし!Σ(゚д゚lll)。「逆に興味がわいてきた」「お屋形様」の間髪入れぬ素早さと鋭さに、この人たちこのやりとり何百回も繰り返してるな…な感が出ててスゲー良いです。景勝さま尊い。直江がんばれ、超がんばれ。

もうねー、ほんと、この主従にここまで萌えるなんて、自分でも想像してなかったの。三谷さんオタ方面の押さえっぷりもすごい。でも、信繁の案に乗る・・・というか、「真田を敵に回したくはない」上杉の内情もちゃんと説明してくれたのが良かったですね。上杉、北条、徳川に挟まれる信濃、その中で沼田や岩櫃を擁する真田領…という地図を、くどいほど何度も出して説明するのも良い趣向だと思います。

そしてそこで説明に終わらず、景勝さんが「また騙されるなら、儂の器がそれだけということよ」までちゃんと言ってくれるから、また次の萌えにつながります(爆) あーもう、信繁、てっとり早く上杉に人質に行ってくんないかなってちょっと思うくらいですw




「芝居だ」「芝居おねがいしますね」「ふん、猿芝居だな」「お芝居ですよね」な、やりとりながらも、あの緊張感。矢をつがえ、鉄砲をかまえ、貝を鳴らし太鼓を打ち、負けじと貝を鳴らし太鼓を打ち、すぐそこまで近づき、一礼して去る。何ひとつ干戈を交えずして、鳴りだす壮大なテーマ音楽! うおおお沸き立つ演出じゃあ!! 

無事に戻る弟に、信幸が目に見えて大きな息をつくのもとてもよかった。いくら芝居だと打ち合わせといても、それこそ前回の終わりのように、上杉と北条がちゃっかり手を結んでたりしたら、あるいは誰かがうっかり誤射してしまったりしたら、均衡は崩れる。ここは戦国で、武器を持って向かい合っているのだから、奔流を止められなくなる。そういう緊張感。

てか、大泉洋が甲冑に身を包み兜をつけると、絵姿のようじゃないですか。昔の絵にこういう人いるよ絶対!

去る真田勢の背中に勝鬨を浴びせる上杉軍。様式美を見せてもらいましたねー。噂の威力で沼田から去る北条勢が幕営をたたむ描写も面白かった。陣幕を外し、鉄砲を筵で包んで、机も片づけて。

昌幸パパの碁盤の上での戦いは、「妙手」で決着。途中どんなコスい手を使っても(笑)、勝負を投げず勝つ。ひどい男です(笑)。

で、意気揚々と真田に帰る信繁くん。上杉から去る時の、刀を受け取って廊下を歩く時の得意顔(古御門入ってる)といい、こういうとこ、若さもあれど基本的にお調子者キャラですね。




そう、まさかの、大河の主人公の初婚がデキ婚! これは私の記憶では、今ちょっと思い出せませんね。三谷さんの、意思ある作劇だと思います。2人は間違いなく幸せそうじゃないですか。梅ちゃんの輝く笑顔! 梅ちゃんは腹黒いというよりしたたかというより、強くて逞しい造型だと思ってます。

聖女じゃないから、きりがあやこや言ったらイラッともする。でも相手にはしない。そこらへん、「源次郎さまが好きなのは私なのよ」とちゃんとわかってる賢い子なんだけど、でも梅と信繁やきりには世間的には大きな「身分の差」があり、兄と2人きりで暮らしていて、兄が戦争に出てる間は一人きりなんだ…ていう、頼りない身の上な描写もきちんとされてきてる。そのうえで、梅は自分の恋心を大切にあたため素直に表現して、源次郎といい仲になったんだよね。私はどちらかというときりちゃんに肩入れしてるんだけど、あの「その言葉をお待ち申しておりました」は、梅を卑屈にさせない、意思ある女として描くセリフで感動したよ。

一方のきりちゃんはというと(笑)。




あれ、あながち的外れな発言じゃないというか、無礼は無礼なんだけど、「女にできることは何か、みんなで考えていきましょう」は結局、「次は誰が人質に行く?行かせる?」に他ならないわけですよね。「私はそう思いますね」って、きりちゃんおかしい(笑)。そのままでいてほしい(笑)。



「妻になってくれ」っていう幸せの絶頂から流れる、不穏な劇伴ですよ。「誰も死なせることない」策を考えて成功させたんだぞと、そこが信繁の得意満面のポイントなんですよね。春日信達のときとは違うんだぞ、と。なるべく人を死なせないことを主眼にした策士になれたのは梅のおかげなんだぞ、だから「おまえは、なくてはならない人だ」で、一緒に生きていくんだぞと。

そんな喜びや自信は儚くも崩れ去るんだろうな、と予感させるに十分な、幸せなシーン+不穏な劇伴+予告でしたよね。「真田・・・そろそろ死んでいただきましょう」そろそろ、ですもんね。今日の序盤、「真田には思わぬ毒が」と言った正信は、いずれ遠からず真田を葬ることを考えていたんだろう。徳川四天王の一人がついに牙を剥く!! そしてその罠に嵌められる(片棒かつがされる?)のは・・・室賀! 室賀で今日の幕引き。そう、今日の冒頭はこの男で始まったのだった。ああ、美しい構図だこと。正信の手にかかって切り抜けられる室賀とは思えないが、せめて「ダマレコワッパ」が彼への最高の餞となることを祈ります。