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『真田丸』 第6話 「迷走」

大河ドラマ

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姉上がピンチです! 「琵琶湖のどこにあんな断崖絶壁が?」とTLで見かけてププッとなりましたが(笑)。一緒に人質になってたみんなも助けましょう、の結果、自分が追いつめられる松。もちろん、他の女子供たちのゆくえだって知れません。ここは戦国乱世です・・・。

何より、松らが潜む小屋を見つけたときに、明智兵が「いいもの見つけたぞ!」と叫んだのが「オオッ」でした。光秀って(信長とのコントラスト目的もあって)ジェントルマンな振舞いをし、軍の風紀も統制している描写だったりするものです。でも、「真田丸」の光秀(の配下)は、女子供と見るや「いい“もの”」と叫びます。戦となると乱暴や人身売買がつきもの。ここは戦国乱世です・・・。ただし時代が進んでいくと、このような描写にも変化が見られるかもしれません。

佐助が出てきて何かの術を使い、「しめた、助かった」と思わせといてこれだもんね、厳しいぜ。やはり先週の「押し通ります!」半蔵は優秀だったのだな。

武田家滅亡の際、夫は死んでいるだろうと思われていたときも松は食事をとらなかった。今回もそういうこと(あの状況なら茂誠も助かっていないと思っているから)だろーか?それだけ? 着物は見つかった→あられもない姿で救助されているということで、ここは戦国乱世であるからして、あの漁師(?)の小屋にたどりつく前に乱暴をされているとか、あるいはあの漁師は助けてくれたけど乱暴もしたとか、うーむ。考え過ぎ?

そして6話目にして大きな挫折を経験する信繁くんです。この落ち込みの表現がまたひとひねりというか、その辺の大河だったら信繁少年が「私のせいで姉上を死なせてしまったああああ!」とか泣きわめいたりするんですけどそういうことはないんですね。妻の死を純粋に嘆き悲しむ義兄に対して「生きてこそですよ!」と釘を刺したりする。

そして、(もともと武家の人間ではない)母以外の周囲の皆は「仕方がなかったのだ、忘れろ」で意見が一致。信繁は誰にも責められない。一緒にいた近習も「あれ以上、何ができたでしょう。あなたには父や兄を支える役目があるんだから、あれは早く割り切って」とハッキリ言ったりもする。この中の誰も、松が嫌いだったわけじゃない、むしろ仲の良い家族一族だったけれど、失われた命に拘泥しているひまはない。それが戦国乱世であり、信繁少年もそれはわかっている。では何で落ち込んでいるかというと、



6話目にして初めて、信繁の内面が深く描かれたわけですね。「兄より才があると思っていた」の一言の衝撃よ! でもそれは兄への優越感や、家督を継げないことへの不満につながるわけではない。「この才で兄を助け、真田を支える」という役割が信繁のアイデンティティになっていた。今、それを失いかけている。戦国だけどすごく普遍的な、若者の苦悩だわー。そして、



うーん、戦国だけどすごく普遍的な、若者の風景だわ! 「何も言わずに聞いてくれ」と言ったくせに、喋り終わったら「何か言ってもいいんですよ」な信繁は根本的に生きやすい性格ねw そして梅ちゃんの「真田の里に何かあったときは私を必ずお助け下さいませ」の一言のチョイスが絶妙でね~! くーっ!てなったわ。



だって、信繁の存在を肯定するには「帰ってきてくれてうれしかった」だけでいいわけでしょ。彼を慕っていることはそれだけで十分に伝わる。彼の能力を信頼し肯定するためならば、「真田の里をお守りください」でいいわけで。だけど「必ず私をお助け下さいませ」なのだ。身分が下だと強調されている梅が若様にそんなことを言うのは、本来、不遜だよね。それを言えるのは、信繁が自分を好きだとわかっていて、こう言ったら喜ぶってわかってるからだよね。

「助けてくれるわよね」「うん!」秘密めいたやりとり。梅ちゃん、なかなかのタマです。いっぽうできりちゃん。こういう機会に乗じて男にいい顔をすることができない性分ってのもあるし、好きな男がしょぼくれてる姿にもイラッとしてそう。気持ちのいい子。でも、そういう子は・・・損もするよねぇ・・・。そしてどちらの性分も全然よくわかってないお子ちゃま信繁。三谷さんは三角関係にもオリジナリティあるよねえ。

さて、三河で正信と阿茶局に至れり尽くせりで労わられている家康である。お灸にマッサージにお薬。内野さんの半裸が生々しくてよい!



座ると埃が立つ忠勝w きっと今後も何度か、「非常時に意気投合してじゃれ合う家康と忠勝」の場面は描かれると思うw 次はおにぎりとは別の小道具が使われると予想w 三谷さんはそういうアイデアがとても豊富ゆえ。



信長が生きているかもしれないと思えば「明智を今から倒しに行く!」なのに、死んだと確信すれば「家来じゃないし」だもんね(笑)。

この、大いなる器を持ちながらあくまで小心で保身第一の家康が、いかにして天下人になっていくのか。家柄や領国の大きさに差はあれ、真田も徳川もとにかくローカルで現状維持を至上命題に掲げているのは今は同じなんだよね。徳川はどんどん巨大になってゆくのだから何だか淋しいけど、まあこの大河なら変な真田ageも徳川sageもなく面白くライバル関係を描くだろう。

にしても、忠勝「そういうのは好みません」 正信、肩もみもみしながら「殿は好いておられる」の図は面白かった。やたらオッサンたちをイチャイチャさせる徳川家である(笑)。






かたや、真田家の親子関係の緊迫感である。物見やぐらでの昌幸と信繁のシーンの美しさ。真田の里と信濃への愛を語り、父の子に生まれたことを誇りに思う、そのまっすぐな言葉を受けて、「良き息子じゃ」と父は三度言う。落ち込んでいた信繁は梅の言葉で救われ、「わしは疫病神か」と嘆いていた昌幸は、信繁の言葉に瞠目する。その影に、ここんとこずっと固い表情で父と相対してばかりの信幸がいる。この、つながりと奥行きね!

信繁と昌幸の親子関係は第一話からほとんど変わっていない一方で、信幸の父に対する思いはどんどん変化している。父は自分の意見をことごとく取り入れず、自分には父の策謀好きはどうしても理解できない。かといって、父の策があたっているわけではない。思索の過程はめちゃくちゃで、けっこう思いつきだったり、朝令暮改だったり。そして織田も滝川もダメだった。

信繁にとって昌幸は今も偉大な父で、尊敬の念に一片のくもりもないけど、信幸はそうじゃなくなってる。父の言うこと為すことを懐疑的な目で見ている。かといって、信幸のほうが気の毒かといえばそうと言い切れないような気もするのだ。

信幸は父に疑問を持ち、己で考えることでどんどん成長しているように見え、それはある種とても健全な成長にも思える。昌幸のほうも、自分の迷いや煩悶を躊躇なく信幸に見せている。信幸を嫡男としてきちんと遇していて、取り上げこそしないが意見を聞き、信幸を自分の型に嵌めようとはしていない。信幸が「まっすぐであれと父上に教えられた」と言い、昌幸が小さく苦笑いする場面は短くも妙に心に残った。昌幸と信幸は父と子(嫡男)であり、かつ男と男の関係にもなり始めてる感じ。とにかく見ごたえがある。




上杉に続いて、北条に使者として赴く信尹。大大名と渡り合う落ち着いた気迫がすばらしい。「上野を攻めるな」と頼みながらも、「紙の上での約定(明智が滅びるまでは不可侵)さえ守れば、攻めないわけないですよね? ここで攻めなかったら腑抜けですよね?」という反語にも見えて、何とも言えない会見。高嶋政伸の氏政は、貫禄の中に多少のゲスを混ぜた絶妙な造形。細田よしひこの氏直、ここにもまた偉大な父を持つ息子が。となると、家康の跡取りである秀忠の不在ががぜん気になってきますね。わっと沸くような良いキャスティングくるだろうなー!