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『花燃ゆ』 第8話「熱血先生、誕生」

サブタイトルは惨憺たるものですがね。ここ数週さんざんクサしといた分際であっさり手のひら返しますが、今回ことのほか楽しんじゃいました。これまでで一番好きだった! 軽佻浮薄と言わば言ってくれ!

何が良かったかって、寅次郎と久坂の文通ですよ。ツン寅とキレ瑞の炎上スレッドw 
一連の往復書簡すべてを知っているわけではないですが、おそらく原文からの引用でない部分はなかったと思われ、つまりほとんど史実のやりとりなのです。史実の面白いエピソードをそのままやれば普通に面白くなるっていう好例だったと思います。

文面はものすごい口語に訳されて、東出くんがものすごい演技をしてましたが(笑)、存外面白い演出だったと思いますよ。手紙が読み上げられているバックの映像で、寅次郎は眉をきりりと上げたいかめしい顔で端座していたり、かと思えば軒先におりて美しい日を浴びたり笑顔で饅頭(だっけ?)をモグモグしてたり。こういうことをへーきのへーざでやっちゃう純粋なKYさって松陰の特徴ですよね。お返事がくるとワクテカして、好奇心のコップから水があふれんばかりになっていく過程も手に取るようにわかって面白かった。

一方の玄瑞はひたすら怒りまくって筆跡も墨痕も乱れまくり(あの文面のビジュアルも史実に則っているのかしら?)。顔まで墨でグジャグジャになるってのはコミカライズしすぎかもしれませんけどテンポが良かったと思います。読書しつつのいぎたないうたた寝で朝を迎えて、「お手紙ですよ」の声に目を覚ましてよだれを拭うっていう演出も細かくてよいw 玄瑞、まだとても若いんですね。

要するに2人ともとっても魅力的だと思ったんです。キャラが魅力的っていいなあ、としみじみしましたよ。このドラマを見ていて、そういう気持ちになることが一向にありませんでしたからね。

よどみない口跡で相手を怒らせ、それを面白がるだけでなく芯から感心している伊勢谷友介の演技は生き生きしていたし、ひたすら怒りまくっている東出くんのみずみずしい演技からは目が離せません(笑)。

東出くんの演技については酷評が多いですが、個人的には、東出くんのラディッシュは向井さんのそれとずいぶんベクトルが違うように感じます。東出くんの場合、演技の不器用さが、演じている人物の不器用さにそのまま投影されているように感じられるんですね。

東出くんってとても生々しい存在感があると思うんです。もちろん、キャスティングやアテ書きが功を奏している部分もあるのでしょうが。俳優としてはどちらかというと悪声だし、セリフ回しもまだまだ若い彼が「よく使われる」のは、単にフレッシュで旬の人気があるからだけでなく、その生々しい存在感が作り手にも視聴者にも好まれているのではないかと。

「嘘の顔・嘘のセリフがないな」って感じるんですよね、なんか。怒ってるのも、悔しそうなのも、最後の「あのおみくじな、大吉やったぞ」の表情とかすごく良かった。なんとも言えない顔でした。あと、かつてお兄さんに褒められたときの心からうれしそうな「はい!」ね。あの子犬っぷり、くー。あ、ひとりで詩吟してたシーンは必要あったのか謎です。本人、がんばったっぽいけどw

・・・ま、「ごちそうさん」の悠太郎で半年間の免疫がついて、かつ彼の「ボンクラ属性」を愛せているからこそ、こうもあたたかい気持ちで見守れるのかもしれませんがね。チラ見してた夫なんかは「しんどいな、これは・・・」と苦笑してましたw 確かに、今の状態を一言で言えば「フレッシュ」になるのかもしれなくて、それだけではやっていけない時期も来るんでしょうが・・・。

ともかく、本の虫で、志篤いけど直情径行の気があって短気で・・・って、確かに久坂だな。ドラマ開始以前、キャスティングを聴いたときは、旬の芸能人が大河にキャスティングされるのを好んでいる基本姿勢をもってしても「おいおいおいいくらなんでもそりゃねーわ、ヒロインの夫になるからって人気者を配せばいいってわけじゃないんだぞ、久坂だぞ久坂」と思ったものですが、私この久坂に今や興味津々です。

もちろん不満もいろいろあって、まず文ちゃんの要らなさ加減がハンパない。ほんと何度も言いますが松陰→高杉の「世に棲む日日」主人公リレーでよかったじゃん、長州の成功譚ふうにしたいなら最後ちょこちょこっと木戸とか伊藤とかやりゃいいんだからさ。文ちゃんが塾の発起人みたいになってる状況はなんなんだ、奥田瑛二の無駄遣いひどい。しかも創作でも文ちゃんが魅力的ならいいけど、1話の極度の引っ込み思案設定の必要性に首をかしげるキャラ変っぷりだし、「医者坊主」で煽るとか安直でサイテーだ。

で、文ちゃんに引っ張られて出てこざるを得ない伊之助のいらなさもハンパない。子どもを膝に乗せてるとはいえ文と伊之助の2人のシーンは何となく不快でもある。後年の二人の関係を見越してこういう設定・描写にしてるのはわかるが、今現在、気持ち悪い。しかし妻の寿も思慮の浅い女としてばかり描かれて魅力に欠ける。あの奥様会の短絡的な描写にも虫唾が走るし。何より、伊之助の存在意義になるはずの長州藩の表舞台、藩内政治のもようがまったく面白くないのが致命的!! 

若村麻由美の存在感だけは屹立しているが。椋梨藤太が出世してるのも姐さんの腕なんだろうなーという凄まじい説得力がある(笑)

細かい演出には見るべきものはちょこちょこあって、前回、父・百合之助が家の中で機織り(違うね、何かな?)みたいな内職してる様子も「おっ」と思ったけど、今回は「軽卒」を強調されていた吉田稔麿が傘張りの内職をしていたほか、川の両岸に縄をかけて桶のようなものを引っかけ、その中に荷を入れて運搬している様子が興味深かった。

来週は高杉だね! 今週も良かったし、めっちゃ楽しみ。東出と高良は完全にミスマッチに見えて、意外に相性がいい気がする! ええ、しょせんミーハーですよ!!