『壇蜜日記』 壇蜜
- 作者: 壇蜜
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/10/10
- メディア: 文庫
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2013年秋から2014年夏までの日記で、非常に最近の、フレッシュな内容。雑誌連載とかってどうしても書籍化するまでにタイムラグがあって内容がタイムリーじゃなくなりがちなのに、不思議だなとおもったら文庫書下ろしらしい。文春さん、粋なことしますね。365日、ほとんど毎日書かれているのもステキ。
季節ごとに章タイトルがついていて、
- ますますひと肌が恋しくなるではないかどうしてくれる
- 夕方は暇さえあれば猫を抱き相撲を眺めている
- 行けることのない温泉旅チラシを眺めて今日が終わる
- するのもされるのも同じくらい好きなことが多すぎる
これだけでも何か心惹かれるものを感じる読書好きは多いんじゃないだろーか。
私がパラパラ立ち読みしていいなと思ったのはこれ。
2013/12/2
昔の日本のリーダーと面会をする。私も彼も某量産型ブランドのシンプルで安い服を愛用していることで話が沸く。彼は私に対して、華美な印象がないからという理由で対談を承諾してくれたそうだ。地味な装いで生きることに自信を持たせてくれたこの一言を私は忘れないだろう。別れ際に作業中にまとうツナギを欲していることがわかった。しかしながら世が世ならお殿様の彼にツナギをプレゼントしてよいものかという点でも悩む。
これも好き。なんか、昔、友だちのたなかま氏が書いてた三行日記を思い出した。
2014/6/6
雨音で始まり雨音で終わる一日を過ごす。窓を開けて網戸にしたままでいると、雨の匂いが部屋に広がる。原稿も書いた。課題の本も半分読み終え、有意義に過ごしたつもり。(中略)欲しいマンガをネットでさがし、屋内にいながら雨の影響で湿った猫を撫でまわし、ダラダラと一日を過ごす。こういう日に目立ったことをするとアイツは雨女だってなるから、息をひそめてじっとする。
プライベートの見せ方と隠し方のバランスが絶妙なのは編集者か事務所スタッフあたりが凄腕なのかもしれない。自嘲気味、卑屈まじりのスタンスで書かれているのも、芸能人としての自身のキャラクターを踏まえた書きぶり、という部分もあるのかもしれない(でも、基本的にそういう人なんだろうなとも思う。文章って、どんなにつくろっても“その人自身”が出るとこあると思う。失礼だけど壇蜜さんのためにすごく上手な(上手に演技した文章が書ける)ゴーストライターとか用意されないだろうと思うので、本人が書いてるはず)。
それにしても、そもそもの文章や文章を書くための感性に文学の素養みたいなものを感じる。。。というと大げさかもしれないけど、「日記文学」といった雰囲気は確実にある。読んでいてとても面白かった。
それで思ったのは、テレビは、彼女のこういう魅力を、半分も映し出してないんじゃないだろーか?ということ。そういう需要がないからだとか、彼女自身(事務所の力とかも含めて)のアピールがうまくないからとか、そーゆーのもあるかもしれないけど、とにかくもったいないような気がする。ま、そもそも私が彼女が出てるテレビ番組をそれほど見てないだけなのかもしれないけど。最近、九州のローカル旅番組みたいなので2週連続見ると、人畜無害の大人の女性って感じでした 。感じはよかったけど、それはそれでもったいない。