『デート〜恋とはどんなものかしら〜』 第2話

ネットでよく見る「ちょw 腹筋崩壊するわwww」って状況にリアルでなりましたw 予告でチラッと見せられてはいたのに、フラッシュモブプロポーズの威力がすごすぎてww 国仲涼子の「巧くんのパート、超簡単にしといたから絶対覚えられる!」ってセリフ、騙しか! 最後の「バイッ、もり・おう・がいっ!」に至るまで最高! あのくだり、何テイクやったのかなあ。

てか、2話にしてこんな大ネタ繰り出してくる、このドラマの底知れなさよ。どんだけ笑かす気だ! 武者震いがするのう!!

案の定、「結婚相手に“寄生”しようとする女は社会的に許されるのに、なぜ男はダメなんだ」と巧がかましたわけですが、さすが古沢良太、それを「多様性」って言葉にきっちり落とし込んで説明してくれた。つまり、「多様性の尊重される世の中であるべきだ」とは現代社会に通底しているポリティカルコレクトネスのようでありながら、一方では「社会に貢献すべきだ、特に男は」って価値観はえんえんとまかりとおってる。特に良識派を自負する人たちほど、済ました顔でこういうダブスタを唱えるよね。

「また父が泣くから」「世の中には許せる女の人もいるだろうけど私は無理です」と言う依子を、視聴者(もちろん私も含めてですよ…)は当然として受け容れるのだけれど、それはすなわち「多様性」を弾き出すことでもある。「理解はできるけど自分は許容できない」「自分のあずかり知らぬところでやってくれ」。それが「世間様」ってもんで、多様性に寛容な世の中なんてかくも遠いものだ、と思わされる。自分が「世間様」のがわに立ってることも。

健康な成年男子たる巧が働くのは当然じゃないか、って考えのどこが悪いんだって話だけど、でも「そんな甘い考えで仕事ができるか! 仕事なめんな! by 巧」なので(これ、爆笑もんでしたよねw)、巧は働くことをすごく恐れているというか、彼には彼なりの「踏み出せない理由」があるんだよね。体が健康なのに休んでるのは怠慢なの? 心の病気と「怠けグセ」のボーダーは? もっともっとリッチで、配偶者に「寄生」なんてする必要もないぐらいの財産遺産を持ってたら、働かなくても「クズ」じゃないのか? 

てか、依子の収入目当てな巧もアレだけど、出会ってしょっぱな「健康な精子を持ってますか?」ってのも相当シビアな質問だよな。益田ミリのマンガに、結婚相談所的なので出会った男性とデートしたあと、「子ども産める体ですか?」って聞かれて激怒したみたいなエピソードがあったけど、女性の体について聞くのはタブーみたいな社会通念に比べ、あのセリフに突っ込んでた感想ってネットでもほとんど見なかったと思う。

・・・などなど、考え始めたらキリがない。この、何が正しくて何が正しくないんだかわからなくなるような、足元がぐらぐらしてくる感じが、古沢良太脚本の醍醐味ですよねえええ。

依子の「親を泣かせたくない」は、確かに普遍的な感情なんだけども、今回、どこか歪みみたいなものを感じもした。「お父さんは幼いんだから」と言いながらも、父親に30分に一度メールを送るって。しかも、全然楽しくないのにものすごい笑顔で、はしゃいだポーズをとって。これ、父に心配かけたくないとか、理系的にキッチリしてるからとか、そういう意味合いだけの行為かなあ。ちょっと、それ超えてないか?

幽霊母が「自分の間違いを認められないのがあなたの短所」と言ってたとおり、自分の「正しさ」を信じ固執するがゆえの描写でもあろうし、ならば、その性格と、いっぷう変わった「ファザコン気質」には何か関係あるのかな、とも思う。「その短所がなければ数学者としてもっと上にいけた」ってのも、すごく示唆的なセリフだし、何より和久井さんが謎すぎるもんね。マッチゲさんは、やたらと「妻との結婚生活の幸せ」を訴えるけど、ほんとなのかなあ。お母さんのほうでは全然違った目で見てたとか、ありそう。ま、両親の過去についてはきっとそのうちやるでしょう。

巧の母の風吹ジュンのほうも何かありそうで、国仲涼子がやたらと「おばさんがかわいそう」みたいに言ってるってことはむしろ逆で、あのお母さんの内心は(意識的にか無意識的にかわからないけど)、「息子を手放したくない / 息子への依存」ってのがあったりするのかな。寄生息子にうんざりしたような顔しつつ、なんだかんだいって、いかにもママの愛情たっぷり、って感じの食事とか出してるし、フラダンスしながらの「ニートのくせにデートですって、ちゃんちゃらおかしいわよね〜」もちょっと怖かったんだよな。

ま、でも、そーゆー人間の闇を描いても、後味の悪いイヤ〜な気持ちにさせないどころかカタルシスを与えてくれるのが古沢良太の脚本だ。

巧の良き協力者であり、人が良く、仲間思いで、地元で楽しくやってますー、な国仲兄妹の価値観も、マイルドヤンキー的なものとして、そのうち、ぶった斬られるんだろうなー。結婚は契約だと言う巧に送ったプロポーズ曲が広末の「ダイスキ!」っていう絶望的な理解力のなさ、センスの悪さw 面白かったけどさ。彼らが依子&巧にdisられたときの視聴者の反応も楽しみだ。

あと、地味に気になったのは、巧が遊園地を途中から楽しんでたこと。巧のほうが、割に、柔軟なとこあるのかもしれない。比べて、最後、依子が師匠カップルがケンカ別れするのを目撃してしまったときの表情は、デートの間じゅう、楽しくなさそうだった顔と一緒だったように思う。依子の深層心理には、心底楽しそうだった彼らへの羨望や、「努力してもあんなふうには楽しめない自分」への悲しみ、絶望、そして「でもそんな感情なんてまやかしだ」という自分の中での「正しさ」とがせめぎあってるのかもしれないな、と思う。

あんなにクズな巧が、依子の壁を壊して、王子さまみたいに輝く瞬間もきっとあるんだよね。巧が「オタク」じゃなくて、「アニメはついでで、映画や文学を愛する'70年代的文化趣味」って設定なのは、「今の時代、オタクならネットを通じた社交があるはずだから」とするツイートを読んでなるほど、と思ったが、今はキモくイタく言わせてるだけの文学・映画の名言を、きっと依子の胸にズドンと撃ち込むターンもあるはずだ。というか、それを希望。「物語の力、効用」「そこに描かれる真理」みたいなのも、やってくれそうだし、やってほしいなと思ってる。