『信長協奏曲』 9話−11話(最終話)まで見ました

役者・小栗旬を堪能できた全11話でした、ありがとう!

織田信長。やっぱり日本人の中で特別な「キャラ」だから、誰でもできるもんじゃない。信長が主役となればなおさら。かっこいいとか人気があるとか演技が巧いとかだけじゃなくて、求めたくなるのは「カリスマ」であるよ! しかも今回のドラマの信長は、平成の冴えない高校生・サブローが、だんだん彼なりの「信長」になっていくもの。なにげに光秀(しかも実は本物の信長)との二役でもある。こうして文字だけ読んでると、あらためてワケわかんない、しっちゃかめっちゃかの設定だ。それなのに、まぎれもないカリスマ性を発揮した小栗旬! 小栗旬と同じ時代を生きている幸せ!!

焼き尽くされる比叡山を見つめる、まるで人間味のない表情。リュックサックを背負って城の廊下を歩いていく淋しい後ろ姿。秀吉の正体を報告する半兵衛と対峙する青ざめた顔。「YOUは何しにニッポンへ?」とか「やられたらやり返す・・・」とか数々の安いパクりセリフの確かさ(笑)。サブロー演技の、芯から力の抜けた感じ、「“軽い演技をやってやろう感”のなさ」。友を介錯するときの凄絶さ。

光秀(本物の信長)役も含め、さまざまな演技がその一瞬一瞬でピタッピタッとハマる快感がある。信長役ならではのエキセントリック色がありつつ、平成のカジュアル風味を加えた独特な衣装の着こなしも素晴らしいし、乗馬も巧いし。帰蝶とのやりとりはかわいいし。もう言うことないです! 小栗さんが小栗さんであるならばそれでいいです!!(壊)

最終回のあと、「映画で完結とかふざけんな!」ってのが大方の意見ですしそこに賛同する気持ちも多々あるんですけど、でも小栗旬のサブロー信長がまた見られるんならひょこひょこ映画館まで出向いちゃいそうだし、それ以前にまずもって、この全11話の小栗さんが本当に素敵だったからともかく満足してます。めろめろ。

ふざけたり、おバカだったりが基本形で、かつ、後半は落ち込んだり苦悩したりする姿も多かったけど、「これが信長かよ〜?!」て感じじゃなく、「このドラマはこういう信長なんだな」と常に納得ずくで見られたんだよな。平成っ子の信長が、やがて自ら陣頭に立つようになり、天下をとる意志を固め、大事にしていた家臣を戦死させたあと、静かに献杯を捧げるようになる。成長の過程も自然だった。原作がしっかりしてるんだろうし、ドラマ化にあたってかなり改変した脚本も良かったと思う。

助演陣。柴咲コウ、良かった。着つけもメイクもなんだかなー(年齢設定上しょうがないんだろうけど、33才になっている柴咲さんにはちょっと厳しいと思った、大人な扮装&メイクをさせれば今でもすばらしく美しい方なのに・・・)だし、演技は「いつもの」で、しかも特別うまいとも思わないんだけど、帰蝶はなんだか魅力的だった。これは、表面的には険があるけど、賢くて心優しく、かつ、かわいげがある・・・っていう役を、柴咲さんがこれまでどんだけ演じてきたか、というキャリアなんだろうか? それとも、やっぱり、そっち方面の役にずば抜けた適性があるってことかな?

向井さん、がんばってました。プレ最終回、蔵の中みたいなとこで、光秀が本物の信長で、今の信長はサブローで・・・という真実を知って衝撃を受けるところでは、体を傾け目を左右にキョロキョロ泳がせるという久々のテンプレ演技で苦笑しましたが、その他、後半は割に違和感が少なくなってきて軽く残念なほどでした(笑)。声も滑舌も悪くないし、なんとなくの雰囲気はある人だから、落ち着いたシーンはこなすんだよね。やっぱり「動」の演技は難しいんだな。

高橋一生浅井長政。よかった!! 理想と現実のはざまで揺れる武将、兄と夫との戦いに心を痛める幼な妻に次々に子どもを産ませるそこはかとないエロさもあり、信長への思慕もどこか芳しいものがあり、クールで理知的な役が多いけど、こういうウェットな役も合うんだなー流石だなーと思いました。最終回はめっちゃ見せ場だったね。

濱田岳の家康。高橋一生と同じく、軍師官兵衛よりずっと短いドラマでずっと出番も少なかったけど、ずっとちゃんと使われてたと思います。てか、この2人をほぼほぼ無駄遣いしたことを思うと、いまだに昨年大河に腹が立ってだな・・・! ともあれ、見たいですよね、この家康がどうやってたぬきじじぃになっていくのか。

前田犬千代(利家)の藤ヶ谷くん。ドラマで見たのは初めて。表情は乏しいんだけど、セリフ回しが意外にしっかりしてたので、キャスティングの意味がわかりました。8話だったか9話だったか、評定ですごくまじめな意見を言うとき、とても上手でびっくりした。

山田孝之。彼のおそろしさをひしひしと思い知ったドラマでもあった・・・。眼が死んでる信長(光秀)と目が死んでる秀吉が2人してそろったときのイヤな感じ無限大!! これさー、本能寺で信長が死んだあとも、この秀吉でじゅうぶんドラマやっていけるじゃんね、わけもわからず秀吉に滅ぼされる勝家、秀吉の正体を知ったことが原因で戦死に追い込まれる恒興、その秀吉とたぶらかし合う淀、信長に対するエロ本の恩義を胸に秀吉に面従腹背する家康・・・やってくれ。

で、原作もまだ続いてるらしいんだけど。映画でやるだろう本能寺について、「炎に包まれたところで、どーかこーかして本物の信長と入れ替わって、サブローは現代に帰るんだろう」と人間が素直にできているうちの夫は予想してましたけど、どうなんスかね。私は、先にサブローと光秀が入れ替わって、信長に戻った光秀(ダークサイド)が、本能寺で討たれるんじゃないかと思うんですけど。で、どーかこーかして本能寺の前後でホワイト化しつつある秀吉に戦国の未来を託して、つまり山崎で秀吉に討たれる狂言で、サブローは平成に帰る(帰蝶を連れて)、と。どうですかね。んで、後年、もう1回タイムスリップしてきた光秀=天海僧正がサブローって設定で最後のスペシャルな、これは地上波で頼む。

なんにしても、「みんなが笑って暮らせる世の中を作りたい」「人をだましたり殺したりしちゃダメ! そんなんで天下とっても全然うれしくない」なんてセリフが繰り返される戦国ドラマで嬉々として楽しませていただきました。2014年は、小栗さん・及川さんと2人の「いい信長」が見られた良い年でした。本作といい『信長のシェフ』といい、民放が工夫した戦国エンタメを繰り出してきてる中、大河ドラマのほうが相変わらずなのは悲しいことですよ。。。