読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

『花燃ゆ』 第1話 「人むすぶ妹」

大河ドラマ


だってアバンタイトル、「秀吉とナポレオンが戦ったらどっちが勝ったか?」って問いもバカっぽけりゃ、それに答える(というかマトモに答えになってる答えはなかった)面々もバカっぽいことこの上ない。長州クラスタでなくても、これが松下村塾かと泣けてくるレベル(笑)。や、幕末の志士といえど若者だからして能天気な日常があるのはわかる。しかし、それが一年間の大河ドラマを象徴すべきアバンタイトルでいいのか! 

まあ志士が主人公のドラマじゃないわけなんだけども、えーっと主人公・・・おにぎり作ってる! 幕末男子たちのためにやたら美味そうなおにぎり作って満面の笑顔で声をかけている!! おにぎりマネの大河!!

・・・って感じで最初の3分くらい絶望してました(笑)。まぁ公式ポスターのキャッチフレーズが「幕末男子の育て方」ですからね、驚くべき事態ではないのだが、嬉々としておにぎり作ってるマネージャーに自己投影できる女子は、いかにイケメンを揃えようとも大河なんか見ないんじゃないかと思うんですよね。じゃあ男子向けにこういうヒロインなのかというと、うーん・・・。まぁおじちゃんおばちゃん、おじいちゃんおばあちゃん向けなんですかね。うーん・・・。

一転、本編はさほどスイーツ強調のつくりではありませんでした。あ、その前に、オープニングテーマはとても良い感じでした。

脚本の大島里美さんの作品は初めてですが、とても真面目な人なんじゃないかと思いました。特に、初回のクライマックスである「何のために学問をするのか。それは仕事だからじゃなく立身出世のためでもなく、己を磨くためである」という吉田松陰の熱弁あたりに真面目さが強く表れていました。

松陰が自律的な学問に目覚め、心底から「知りたい」と渇望するに至る過程の描き方にも真摯なものを感じました。本から文字が零れ落ち、空から降ってくる演出もありだったんじゃないでしょうか?

歴史を舞台にした大河ドラマとはいえ、やはり現代に通底する何か、時代を超えた普遍的なものが折りこまれるもので、知性や教養が軽視されがちで、争点が明確化されていないといって投票にも行かないような他律的な人間が多い現代にあって、「学びへの意欲」「自分の頭で考えよう」という描写がドラマの中に盛り込まれたのは、とても自然だと思いました。このあたり、『八重の桜』の山本むつみも大変まじめに書いていた記憶があり、大河を書くような女性脚本家って基本的に真面目・・・あ、たぶちさんとかこまつさんとかいましたねw

ただし(しろうとの上から目線で書きますが)、真面目なそれこそ「至誠」な脚本であっても、人の心をぐっと引き込む魅力にはやや乏しかったかも。引力みたいなものはちょっと弱かったかも。

主人公の文ちゃんの子ども時代が、ものすごく引っ込み思案で、家族以外とは口もきけないという設定なんですね。その必要性が、「官兵衛」初回での「トイレが間に合わない属性」と同じくよくわかんない。

内気すぎる妹に向かって兄の寅次郎(松陰)は「おまえは本当は誰よりも人のことを良く見ている」「人のことを知りたい、人と出会いたいと誰より強く願っている」とべた褒めする説得力がまるでないんですよね。「あの吉田松陰だから、わかるのね! これが、“人材を見抜き、育てる”松陰のSPEC・・・・!」としか思えないんですけど、これでいいんでしょうか(笑) このあたり、いくら奥田瑛二に渾身のビンタをかまされたとはいえ、非常に主人公に甘い脚本で、『八重の桜』の子ども時代とは対照的でした。もちろん八重展開のほうが好みです。

甲陽軍鑑・・・と見せかけた禁書が巻き起こす騒動ってのは面白かったです。「禁書」というものがあったことすら初めて知る子どもとかもいたんじゃないでしょうか? で、吉田松陰が禁書を持っていたところで後世じゃ誰も驚きませんが(笑)、小田村伊之助も同じものを持っていたことで、歴史的に無名な彼のキャラクターがわかりやすく入ってきましたね。

明倫館のセキュリティ甘すぎとか、いくらなんでも禁書を藩校に持っていくかよとか、そういうツッコミは私は持ちませんでしたね。文が弟をお風呂に誘う場面がありましたが、杉家は貧しくとも風呂だけは毎日たてていた、と『世に棲む日々』にもあったので、考証の活用だったんでしょうか。九州の遊学を終えて家に戻ったのが夜であったのも、松陰が日記に書き記していることですね。むろん、素読中に虫の止まった頬を掻いた松陰を玉木文之進がはりとばした、とかも有名な逸話です(というか、逆にそれしかないかも笑)。

さて、心配された(私が勝手にしていただけです笑)伊勢谷友介吉田松陰ですが、初回を見る限り悪くなかったです。風呂嫌いを家族に揶揄されるほどの奇人が旅先にあっても律儀に月代を整えていたのだろうかという疑問はぬぐえませんでしたが、月代がなければ長崎で2,3人孕ませるぐらいのセクシュアリティが伊勢谷氏からダダ洩れるがゆえのキャラデザインなのだろうと納得することにします。

松陰というのは情熱の人であり狂気・珍奇の人でもあり、端正であり、また稚気もあり、もちろん至誠の人でもあるという、どうにでも描けるというかどうにも描きにくいというかそういう人じゃないかと思うんですけど、初回の伊勢谷友介は「軽み」と「情熱」の両方を表現してましたね。妹のために雨の庭に出てきて「気持ちええのう。風呂に入る手間が省けるぞ、っと」が、とても素敵だった一方、明倫館での雄弁にも気持ちが入っていました。人はうまくなるものですね。

大沢たかおの小田村伊之助。ふ、ふふふ、仁先生・・・。文のぶたれた頬を見て薬のひとつも塗ってやらないのに違和感ありすぎて(笑)。流石に顔は老けましたが、46才にして未だ青臭さを自然に醸し出すのは彼の「ニン」でしょうね。それにしても伊勢谷とたかおのマンツーはさすがに濃すぎるんで、早く高良くん出てきてください。

文の子役の山田萌々香ちゃん。すっごくかわいかったですね。NHKさすが!! もうちょっと見たいな、と思わせてやっぱり初回でお役御免なんですね。着つけがきっちりしてないのもかわいかった。

杉民治って、そりゃ悪い役じゃないですけども、原田泰造にとってはもはや役不足役不足=力量に比べて、役目が不相応に軽いこと from 大辞泉)なんじゃないでしょうか? それとも、「ファミリー大河」だからすっごく大きな役どころになるのかな?

かたせ梨乃演じる伊之助の義母や、内藤剛志演じる椋梨藤太が、ステロタイプな悪役っぽいのも不安材料。アバンタイトルを見てたら、入江九一やら前原一誠吉田稔麿品川弥二郎も出るみたいですが、彼らが空気にならないよう祈ります・・・

ともあれ、来週も見ますよー。