『デート~恋とはどんなものかしら~2015夏 秘湯』

やっぱこのドラマ最高かww スペシャルとなるとかなりレベルダウンしてしまうドラマもある中で、古沢良太はさすがに才を見せてくれる!

「ある日のデート冒頭から始まって月日を遡る」という連続ドラマ時のフォーマットを忠実になぞるが、冒頭デートの相手は互いに違うという問題提起。元気に島崎藤村を暗唱する巧ww そこから花火大会の人ごみへ。エキストラすげー動員してるな! 空元気(というより決死の覚悟 笑 )で向かう2人だが、あえなくダウン。しかし実際に花火が上がると目を輝かせ(依子は炎色反応だのストロンチウムだのに感動しているわけだがw)、そろって「たーまやー!」である。つかんできます!

依子と巧の半同棲。食事のメニューから風呂やお茶の時間までぴっちり決まっているスケジュール。依子と暮らすことの困難さに視聴者もおののくしかない。21時からでは早すぎるので(by巧)23時からに定められた性交渉(笑)の時間のやりとりがおっかしく作ってあるあたりで笑い飛ばせるものの・・・。

曜日を間違えたメニューを食べながら激しく貧乏ゆすりをして「ものすごく金曜日みたいな気がする・・・」と苛立つ依子の姿と、小さくなる巧の姿。ドラマとして誇張してあるとはいえ、こういうふうに融通の利かない暮らしって結構あるのだろうなとも思った(それがいわゆる自閉症スペクトラム的なものであれ、単なる亭主関白や、自分で決めた型に囚われているだけのものであれ)。

それにしても、官能的な音楽について「昔はそうだったけどあるコメディアンの登場以来、コントでしか使われなくなりました」のくだりは面白かったですよね(笑)。あそこ、杏のお色気(になってない)演技もよかったけど、妙におっさんくさいハセヒロも良かったですw しっかし、東出くんほどではないにせよ、杏とハセヒロにあのベッドは狭そうだ。

巧がストーリー中の戦いの様子を再現していたフィギュアを、背の順に並べ替えてすべて直立させてたのもめっちゃウケたww しかし巧にとっては笑い事ではないわけで、この無理な「半同棲」は来るべくして破たんを迎えます。「半」同棲だから当然50%だろう、というのも依子にふさわしい小ネタで古沢さん流石だが、「週末のお泊り程度じゃ結婚の予行演習にならない」ってのは確かに正しい理屈ではあります。

虚構の世界に逃げ込むクセが自堕落にさせている、と主張する依子に向かって

「虚構の何が悪いんだよ! 虚構の世界っていうのはな、現実の不完全さを埋め合わせ、社会のバランスを保つためにあるような・・・」


って、依子の暴挙により最後まで言えなかったけど良いセリフだった。君にはわからないだろうけど、普通は君みたいにきっちり暮らせない。ぼーっとしたり、サボったりするものなんだ。と、もっともな主張をしたあとの「ましてや僕は高等遊民だぞ!」が笑えるww開き直るなwww ゴミ箱の中身をポイポイ、洗濯かごの中身をポイポイ投げ、しまいには調味料やお茶筒もぐちゃぐちゃにしながら激昂して大量のセリフをこなす長谷川博己の演技がすばらしかった。ここまで興奮し激怒して部屋をぐちゃぐちゃにしたようで、割れ物は一切出さなかった巧ってエライ。

依子が実家の父に相談すると「そんなの普通だよ~そうやって価値観をすりあわせていくのが一緒に暮らすってことだよ」と、こともなげな返事。うーん、そういうレベル問題じゃないような気もするが、そういわれると、そういうことかもしれないって思う(笑)。

 

依子「原節子オードリー・ヘプバーン峰竜太メーテルを足して4で割ったような・・・」 父「なんかひとり変なの混じってたぞ」最高w

策謀を巡らし巧を罠にかける依子。公安がえなり!えなりかずきが公安! なんという斜め上のキャスティング!! 『民王』の「に↑った君」以上だ!! どんなコスプレも格好よく決めてしまう杏と、危なげないセリフ回しでもどうしようもなく格好のつかないえなり、めちゃくちゃシュールなシーンだった。

竹久夢二美人画から抜け出たような役に芦名星ちゃんはぴったりだったかもしれないが、このドラマには珍しくおかしみもかわいらしさも醸さない役だったのがやや残念というか、本人にもかわいそうだった。てか、着物のきこなし、ちょっとぎこちなくなかった? 

旅先に司馬遼太郎の『街道をゆく』って、私も持って行ってしまうタイプです(笑)

貧血女と “めくるめって”(この言語感覚もすばらしい!)るらしい巧によく研いだ包丁を突き付ける依子。「国家公務員はどうなる、いやお父さんはどうなる区役所にいられなくなるぞ、君にそんなことができるわけない」 慌てふためきながらまくしたてるハセヒロはもちろんうまいが、駆けつけてきて包丁を取り上げ箒を手渡し「これで存分におやりなさい」なんて非日常にもほどがあるセリフを違和感なく言える中島裕翔くんもなんかすごいと思った。杏ちゃんホントに温泉に飛び込んだんでしょうかw

秘湯を目指して夜の行軍を敢行する2人。

「心はどうだったんですか」と、かつて「愚かな質問」と自分が言いきった問いを発する依子。なんだかんだでいい雰囲気になって、「月が綺麗ですね」って言った瞬間に「その手があったか!!!」と身悶えた。なんという、巧にぴったりな愛情表現! だから漱石ゆかりの修善寺なのか、だから「“こころ”が欲しい」の連呼なのか、てかスーパームーンの日だったからこのセリフなのか?! もう、どこまで意図的かわかんないけど、神がかっている!! 

しかも、月が見えない夜空を見上げて「つまり、月が綺麗なんです」なんです。言葉を文字通りにしか受け取れない依子に向かって、解説をしたうえでの、「月が、とっても、綺麗です」なんです。うおおおおおおお(悶絶)。このハセヒロがまたいいんだわ、そっと押し倒すとこまで完ぺきな演技なんだわ、「昔から馬小屋で干し草の上で初体験って結構燃えるんです」ってセリフはサイテーだったけどな!!(笑) これ「萌える」んじゃなくて「燃える」の変換でいいと思うww

そんなこんなで今回はキスもなかったし押し倒してもなお笑えるシーンだったんだけど、「あなたの心が隅々まで欲しいです」「僕の心なんかで良ければあげますよ。隅々まであげます。そのかわり、あなたの心も隅々まで欲しいです」のやりとりが、どうにもこうにもエロティックでなあ・・・すごくいいと思いました。いや、セリフだけじゃなくて、やっぱりハセヒロが芝居でエロスをにじませてるんだよね。すごくいいと思います(鼻血)。愚かなことを言い合う2人。楽園を追放されたアダムとイブ。恋をしている2人。

そこへ無邪気に闖入してくる依子父! 「依子のことだからひたすらまっすぐ進んでるんじゃないかと思って」ナイス読み! マッチゲさんと和久井映見の夫婦喧嘩とその顛末も凄く良かった。依子ママは巧と違ってケンカになったら皿でも何でもじゃんじゃん割ります(笑)。

 

依子の逆プロポーズ、マーチングバンドからの手旗信号。これがまた、コスプレといい、四角四面でデジタルっぽい動きといい、杏と依子に最高にマッチしててだな・・・(ほれぼれ)。そしてまさかの、フラッシュモブの時のダンスで手で作ったハート(心!)を差し出し「喜んで!」と巧ヽ(' ∇' )ノ  

 

依子の留保のない爽やかな笑顔。あー、杏ちゃんの腰の位置がどう見てもおかしい(笑)。

そしてこれにて一件落着かと思いきや、再び結婚契約書の条文を練り始める依子。「甲は乙をいかなるときも・・・」云々とパーセンテージまで思案しながら「さあ、これは大変なことになってきましたよ! ・・・しかし何事も努力です」のくだりまでの依子の一連の芝居がイイ! 依子って本当に杏のハマり役だと思う。杏ちゃんには難しいなって役もいろいろあると思うけど、依子にこれほどハマる女優も他に思いつかない。

ちょっと不自然だなというか違和感を覚えたところもあった。半同棲生活で「奴隷になった気分だよ」「ここは監獄だ!」とさえ言い切った巧が、契約をひとつも破ってなかったって王子様すぎないか? 実際、今回前半の依子は色気はもちろんかわいらしさもほとんど皆無だったし、独善的に見えた。でも、「“君が決めたルール”をひとつも破ってないんだよ」ってのがおかしいのかな。依子が主導したとはいえ、2人で話し合って決めたんだしね。てか、あの「監獄のような」暮らしを強いられるとしても揺らがないくらいに、巧の依子への思いは強いってことなんだろうな。くーっ(悶絶)。

しかし「心」「お互いへの思いやり」が大事だと言いながら、またも契約書を作るオチは見事。秘湯は「依子の湯」なのかー。結局まだ巧も浸かっていない、依子の湯。ああ、この、そこはかとないエロスよ(笑)。建築中の超高層ビルがラストカットだったのは、結婚までの壁の高さを表しているのかな? 

でも次の続編では、結婚後の2人が見たいな。「なんだか几帳面になり勤勉に家事をする巧、家の中でだらだらし始める依子」みたいな倒錯を見てみたい。まさかあの掘立小屋で処女懐胎、なんて続編じゃないでしょうね(笑)。