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『ど根性ガエル』 感想1 序盤みてます

夏休みでほとんどずっと子どもと一緒なので、書き物する時間があんまりありませーん! が、ドラマ見てます。録画でぼちぼち。今4話の花火回まで来ました。

TLの反応を見てると面白かった。制作発表では、「はっ? なんで今どきその題材?」と戸惑う人、多数。主演が松ケンで脚本が岡田さん、Pが河野さんと出ると一転、「これは見なきゃ」の嵐。そしてピョン吉の声を満島ひかりが担当すると発表されるや、「これはすごいことになりそう」「名作の予感」とザワザワ。ええ、私もそのTLに乗っかってた一人ですが。

初回を見て、唸ったよね。松ケンヒロシのビジュアル。あの青いズボンの色味と形と丈、最高だろ! 満島ひかりの声の生命感。初回のアバンタイトル、橋の上で3回「やなこった」と言うときのそれぞれ違うニュアンスにぞくっとした。言い回しももちろんだけど、声が魅力的なんだよね。生命感と同時に涙がたっぷり含まれているような声。

対する松ケンはこの人らしくきっちり江戸ッ子言葉をマスターしてて、巻き舌とか処々で声がひっくり返る感じとかすごい。それが合ってるのかどうかは当方九州人につきわかりかねますが、耳を傾けたくなるセリフ回しなのは確か。

この満島ピョン吉と、松ケンヒロシの掛け合いは、相手のセリフが終わらないうちに喋りはじめる、しかも「“あ”たりめえだろ」とか「“ナニ”言ってやがる」とか「“み”そこなったぜヒロシ」みたいに、1拍めをすこぶる強く言うことが多いので、ものすごく気ぜわしく、またうるさい(笑)。うるさくて見られない、と言う人も多いんじゃないでしょうか、このドラマ。

でも、そのうるささが包み隠しているものが、どえらく切なくて、切なさを越えてシリアスですらある。と感じる。

ヒロシ、ゴリライモ、五郎、母ちゃん、梅さん、町には変わらぬ面々がいて、そこに外から帰ってきたのが京子ちゃん。みんなそれぞれ大人になっている。ヒロシを除いて。ピョン吉もここに含まれるのかな?

「ど根性、ど根性」とピョン吉は変わらず言い、ヒロシは平時、それを否定している。「ど根性なんて今どき、ねぇよ」って。でも結局、ドラマの序盤(少なくとも3話まで)において、「いざ」というときの方法はど根性しか知らない。それを、周囲の人間や世の中によって否定されたりもする。

同じ脚本家、同じスタッフの『泣くな、はらちゃん』において、“異邦人”であり“子ども”であるはらちゃんが周囲に受け容れられ“神様”を変えていったのとは、ある意味対照的な構図。ヒロシはずっと同じ町に住んでいるんだけど彼が“子ども”で居続けていることは周囲からの評価を下げている。みんなピョン吉を愛してあたたかく見ているけれど、心の中では「ど根性だけじゃ、ちょっとね」って思ってる。

それは当然のことで、ど根性は川に落ちた子どもの帽子を拾ったりぬかるみに落ちそうなトラックを押しとどめたりはできるけど、京子ちゃんを振り向かせることはできない。1話ラスト、京子ちゃんがど根性でプロポーズしたヒロシをけちょんけちょんにdisるの、最高だった、前田敦子が。全般、前田敦子が輝いてる、このドラマ。ヒロイン力がすごい。

『まれ』風にいうなら「地道にコツコツ」それが大人の道なのだ。ヒロシにはそれがない。どうしてないのか、その理由は少しずつ明らかになっていて、優秀な営業マンだった時代に同僚の痛みに共震してしまったトラウマを母ちゃんが語り(2話)、「母ちゃんとピョン吉といつまでも暮らしていくこと、平穏無事に」という人生スタンスがヒロシ自身の口から語られる(3話)。持ち家があり母ちゃんのパート代でなんとか暮らしていける以上、地道にがんばるモチベーションが彼には何もないということ。

何かを得るために働くのが大人だというならば、得たいものがないから働かないヒロシは子どもなんだけど、でも考えちゃうよね。働いて豊かになるってモチベーションが誰にでも持てる時代じゃないし、(営業マン時代のヒロシのように)働くことですり減るものだってたくさんある。ヒロシはぜいたくをしてるわけじゃなく着たきりだし古い扇風機でしのいでて、それに甘んじてるならそれでいいじゃんって気もしてくる。この辺は、『泣くな、はらちゃん』の劇中で歌われた

「世界中の敵に降参さ 戦う意志はない」
「世界の中の小さな場所だけあればいい」

を思い出すところでもあります。『はらちゃん』にしても本作にしても、「多くを望まない人」の物語なんだよね。だけど、いつまでも小さな場所に安全にとどまっているわけにはいかない。ヒロシの言う「家族と平穏無事に」が、ささやかどころか永遠に叶えられるなんて不可能な願いであることは明白だ。

Xデーの予兆はすでに1話で剥がれかけるピョン吉に表れ、エンディング曲の焦燥感や、そのタイトルバック、ピョン吉のいないTシャツの映像にも表れている。1話で京子ちゃんの白Tがピョン吉のシルエットをうつしとったのも何か示唆的だった。

いつかくる別れのときにヒロシは大人にならざるを得ないのだろう。そのときど根性は発動するのか? 役に立つのか? そもそも、ど根性って何なんだ? 

てのが問われていく物語になるのでしょう。まだまだ言及できていないことがいろいろありますが、○話の感想って感じじゃなくて、書けるときに書けることをぼちぼち書いていきたいと思います。

それにしても、オープニングテーマ、傑作ですよね!! オールスターズでの歌唱、最終回ではこれだけで涙腺がゆるみそうな。