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『花燃ゆ』 第27話 「妻のたたかい」

大河ドラマ

 

何はともあれ、東出昌大さん、おつかれさまでした。

ご自分でも何を演じているのかよくわからなくなったのではないかと推測しますが・・・あるいは、今の東出さんにはこのような等身大の久坂(と名乗る人物)が精いっぱいかもしれないけれども、でもやはり、きちんとした脚本で久坂玄瑞という大いなる才覚をもった若者の短い一生を演じてほしかったです。それでクサされるなら役者も本望というか、納得がいくでしょうが、こんな本で評価されるなんてあんまりだ。

嘆願かなわずと知れたとき、膝崩れ落ちがっくりと手をつく朋輩の中で、久坂一人が綺麗に端座しているので視聴者には「あ、これくるな」とわかるのですが、そのとおり「腹を切る」と言う久坂がすっきりと明るい顔をしていたのが、今日一番よかったです。東出くん、公言しているとおり、いかにも司馬遼太郎の読者だなって感じがしました(^^) 司馬の小説では、男子が悲壮な覚悟を決めたとき、ああいう風情になることがよくあります(笑)。

そこから先は(まあそこから前もですがw)いつもの「はなもゆクオリティ」で、

寺島忠三郎が突如として久坂への愛を語り出したり(本当に、正真正銘、「突如」としか言いようがない。伏線回収にばかり汲々とするドラマもいただけないが、平気な顔して行き当たりばったりを繰り返すドラマは本当に救いようがない…)。

山本覚馬が鷹司邸の壁に大砲打ち込んで壊しにかかってるというのに(from 『八重の桜』)、入江と品川に遺髪を渡すなど悠長なくだりがあって、髻を落とした後も何やらだいぶ間があってから、久坂と寺島は相刺して果てたのでした。うーむ。寺島、何者だったんだ・・・・。寅兄と共に黒船に乗り込んだ金子くん以上の使い捨て・・・。

 

耐えられずに『八重の桜』の蛤御門の回を見直しましたら・・・久坂めちゃめちゃかっこいいじゃん!! 

そうよ。いくら自分は進発を止めたかったとはいえ、ことここに至って刀を抜いたら獅子奮迅で働くのが武士ってもんですよ! 銃弾砲弾も飛び交う中、果敢に斬り合い、大声で仲間を鼓舞し、もう無理という直前まで戦って、頸動脈を切って死んでいった。闘死という言葉がぴったりの、勇ましく潔い最期だった。しかもちゃんと桂さんとの別れまでやってる。この別れがまた、いいんだ、及川光博の泣きそうな「久坂!!」と、それを退ける須賀貴匡の凛々しい久坂・・・。

ということで、基本、ツッコミどころしかない大河なので、やりだすとキリがないんですが、一応ここはつっこんでおきますね。


  長 州 大 河 の 蛤 御 門 で   な ぜ 桂 さ ん 出 な か っ た ?!


八重の蛤御門の回、もちろん当時もすごく引きこまれていたけれど、今、見直すとなんと面白いのかと。不十分な情報の中で戦闘に入る不安や、それでも誰もが死力を尽くして戦う姿。そして御所に発砲されて怯えまくる貴族たちの中、帝&容保の至高の愛ですよ!!(違)

 

容保  「臣容保、誓ってお上を守護し奉ります」
孝明帝 「和睦などは思いもよらぬことや。禁裏に発砲する賊徒、退けて、御所を守護せよ!」

 

ああ、これぞ大河!な、格調高いセリフ・・・

 その裏で、ちゃんと、会津の山本家の、藩主への忠誠心など「建前」と覚馬の身を案じる「本音」の様子を両方描き、あまつさえ八重ちゃんと尚之助のラブロマンスまで進行している!! 同じ45分でこれができるんだぞ!!

 


久坂の死が知らされたあと(これがまた、タイムラグを感じさせない情報伝達。Twitterでは「LINE大河」の呼び声も高いはなもゆである)は、基本的に不快なシーンしかありませんでした。

「なぜ、夫は死ななければならなかったのか。私にはどうしてもわからない。どうしても知りたい。そのために、奥座敷に勤める。下働きでも何でもやって、のしあがって、お殿様の前で聞く。」


  意 味 が 分 か ら な い 。


主人公の思考回路がこんなにも謎でいいのか? いいのですか??


はなもゆの世界には検察庁が存在して久坂家を家宅捜索してる~~!!とか、孟子を訓読する久米次郎くんはけなげだけど全然感動できないとか、椋梨邸に乗り込んだ文に対する美鶴(敵役ポジション)の「あなたが来るところではありません」が正論すぎるとか、文ちゃんの超理論に対して杉家の大人が誰一人ツッコまないとか、もう本当に謎だらけ、承服しかねるところだらけなんですけども。

夫の訃報を聞いたときの反応といい、椋梨家での発言といい、そして奥女中になる発言といい、主人公に対してイライラしかないんだよな。「夫が死んでものすごいショックで、錯乱してて、愛していたからこその反応で」・・・っていうふうな目線で見られないの、まるで。

散々、志・志と登場人物たちに連呼させておきながら、ここで「あなたさまのせいですか? 夫があんなめにあったのは」だもんね。兄と夫に対する冒涜も甚だしいセリフだよ。彼らは自分の志を持って生き、その志に殉じて死んでいったのでは? 

その志ってもんが何なのかは、見ててもサッパリわからんけど、とりあえず彼らは「自分の生を生き、自分の死を迎えた」のだと視聴者は理解して(しようとして)ここまできてるわけですよ。誰のせいとか、誰かが悪いとか、そういうんじゃないの全然。お殿様に何を教えてもらうつもりか、何を問いただすつもりか知らんけど、あまりにピントがずれすぎてるの。そんなものを、ここからの主人公の行動原理に据えられても、まったくもってついていけない。

「久米次郎、あなたに対しては、私たち夫婦は勝手をしましたね」そんな一言で精算されねーぞ、ゴルァ!! 

文ちゃん、感じ悪すぎ。感じ悪く見えてることに作り手は気づいていないらしいことに絶望する。

このドラマは歴史がほとんどすべてト書きです

来島又兵衛の台頭で、長州軍は進撃することになりました。
来島は禁門に向かって発砲ました。
そして会津の鉄砲に撃たれて死にました。
久坂は別ルートから鷹司邸を目指しました。
久坂は鷹司に嘆願しました。
退けられました。
あきらめました。
自刃しました」。

すべてが一行ずつのト書きで説明されるだけで、時折、時代感覚の全くない情緒的な会話や述懐で感動シーンを作ろうとしています。

かろうじて創作しようとしている主人公まわりの話は、あまりに拙く、拙いだけでなく視聴者の神経を逆なでしてばかり。来週の予告を見ても嫌悪感しか覚えず、うーん高杉まわりの話だけ追っていくかのう・・・。

とにかく、東出さんにはお疲れ様でした。井上真央さん、あと半年もあるなんて罰ゲームにもほどがある。

★追記: 要潤入江九一は最後の最後で申し訳程度に時間を割いて華々しく散っていったように見せかけた(剣道大好き東出さんより殺陣が長かった)けど、のこのこ歩いて門まで出て「?! 敵がいる?!」って顔をしてる入江と品川のバカっぽさといったらなかった。このドラマの知性の程度を象徴してるようなアホ場面だった。まあ入江さんは土壇場で未来にタイムワープしたはずだから悲しむ必要はないですね。

久坂の死を知って「俺は、狂うぞ」と野山獄で誓う高杉に「もうちょっと早く狂わんかい!」と突っ込みたくなってしまう困ったドラマ・・・・。