ベテランアイドルは昔の歌で輝く

ということでフジ27時間テレビではデビュー27周年のSMAP27曲のノンストップライブを敢行し、すばらしい好評を博した(私に笑)わけですが、我が家では日テレ『THE MUSIC DAY 音楽のちから』(2014.7.12 幕張メッセ)の録画がヘビロテされておりまして。うちではもともと私がアイドルに多大な好感を持っており(笑)、つられて、ポップカルチャー好みの夫が追随し、そうなると子どもが影響されるのももっともなことで、息子(4才なりたて)が「あらしがみたい! あらし! エイトレンジャー!」と毎日のように上映を要求。ビデオテープだったら絶対すり切れてます。

そこでは、関ジャニ∞がデビュー10周年、嵐が15周年、TOKIOが20周年ってことで、それぞれ記念ライブをやったんですよ。そのほか、V6とKAT-TUN、NEWS、Hey! Say! JUMPも交じって、7グループ総勢50何人かとかで、シャッフルメドレーもやったんです。グループ関係なく入り乱れて、「WAになって踊ろう」やったり、「AMBITIOUS JAPAN」やったり。

で、すごく感じたのは、「昔の歌、すごく盛り上がるなー」ってこと。ま、それ自体、珍しいことではない。CDの売り上げが低迷して久しい音楽業界、B'zにしたってドリカムやミスチルにしたって、こういった音楽特番で会場全体が盛り上がるのは概して昔の歌でしょう。でも、彼らはロックバンドです。アーティストです。その源流にストーンズとかビートルズとかがある以上、楽曲も、精神も、そこまで陳腐化はしないわけで。

対して、ジャニーズの人たちはアイドルなんです。しかも、10年選手、20年選手、SMAPにいたっては四半世紀以上の大ベテラン。彼らの昔の歌っていうのは、ほんとにベタベタのアイドルソングなんですよ。確かに万人が親しみやすいポップさ・キャッチーさを備えているとはいえ、10代の男の子たちだから許されるような甘ったるい歌詞とメロディーの曲を、30とか35とか40とか過ぎたおっさんたちが歌ってるんですよ。

でも、なんか盛り上がる。「胸熱」とはこれだな、って感すらある。

いや、おっさんが歌うからいいんだよな、とオバサンになった私は思う。たとえば長瀬なんてさ、デビュー当時の紅顔の美少年はどこへやら、シャッフルメドレーの中に入ってたら、「ん?ジャニーズの中にひとり、石原軍団がいる?」って感じやん、その風貌で「君が熱い恋をするなら 世界でボクしかいない」なーんて歌うわけよ。

ジャニーズっていろんなドラマや映画に出て、コンサートやバラエティやって、それだけじゃなく、たとえばハンディキャップのある人たちや被災地と関わるような社会的仕事も多くて、TOKIOの場合はもはや軽トラとか重機とか素潜りとかのほうが似合うような仕事ぶりでも、それでもステージに立ったら「LOVE YOU ONLY」なんだよ、ってこと。

甘くてきれいなだけだったラブソング・応援ソングに、別の意味が付与されてるんだよね。いろんな経験をして、きれいごとだけじゃない大人になって、それでも「“あまちゃん”だったころのことだって否定しないよ」って。「今でもこのメッセージを歌えるよ」って。もう、詞のフレーズが、薄っぺらくないの。彼らの存在自体が骨太くなってるから、かつてよりもずっと力強くて、希望のある歌に聞こえる。

「懐かしさ」っていうのとは、またちょっと違うんだよな。たとえばプリプリがいま出てきて「ダイヤモンド」歌ったり、trfが「EZ DO DANCE」をやったりするのとは違う。10周年、15周年、20周年、四半世紀、ずーっと「現役」の人たちだから。ずーっとアイドルだから、「テレビつけたら普通に出てる」ってぐらいの露出度で、ずーっときてるから。

彼らが昔の歌をやってるの見て込みあげてくるのは、やっぱり並走感というか、戦友感というか、「昔から今までをずっと共有してる」って気持ちなんだろうな。だから、なんか、うれしいし、励まされるような気になるんだと思う。こういう(迷惑な)思いを何万も何十万も仮託されてる存在なんだよね、彼らは。

SMAPのノンストップライブのラストだって、結局は「Can't Stop Loving」で締められるわけよね。まあ、他の曲を選ぶと、ひどく恣意的な感じがするから、デビュー曲におさまっちゃうのかもしれんけど、27曲目までずーっと見てたら、「ベイビー、ベイビー」ってとこで、全力で「イェス!」って拳突き上げたくなっちゃった。「♪素敵な夢を見させておくれ」「♪キラキラ光る素顔がほしい」 こんなに大物に(おっさんに)なっても、まだ、そう希求する歌を歌ってくれる、すばらしいアイドルたち。