『軍師官兵衛』 第15話 「播磨分断」

今回もけっこう面白かった(本作比)。ベンガルよくやった! 先週は山中鹿介、今週はベンガルの別所重むね。。つねに秀吉と半兵衛。いよいよだね、村重! おっさんらが輝く大河は良い大河。でも、主役を置き去りはよくないよ…。

とりあえず、村重だ。石山本願寺との和睦交渉、1回目の、脚本(セリフ)演出のひどさよ…。田中哲司眞島秀和の対峙なんだから、もっとゾクゾクさせて! と思いつつ2回目に入る。1回目とまったく同じ構図。これが「わかりやすさ」という視聴者への優しさなのか? 

「やっぱり信長は信じられない。比叡山でも伊勢長島でも降伏した信者を虐殺した」というもっともな言い分のあとに続けて顕如が「あなたは本当に信長を信じられますか」と肚に力をこめて問い、それまで大音声で押しの一辺倒だった村重が絶句したときに、まあ、この絶句を際立たせるためのこれまでの演出だったんだろうな…と意図はわかった。それでも、そこに至るまでのやりとりの退屈さが苦痛なのは変わらない。

だしちゃんはこのドラマで数少ない若いきれいどころなので、映ったときはパッと華やかなんだけど、これまた謎キャラなんだよね。初登場で「私は賢い方が好きでございます」と言ってたのは(番宣や予告で何度も繰り返し流れた)、もちろん官兵衛に対する行動の布石なんだろうけど、じゃあそもそも何で村重と結婚したの?ていう。夫が村重で仲は良く、、右近(麗しの生田とーまくん)にほだされてキリスト教に入信し、賢い官兵衛が好き…って、今の描き方では破綻キャラでしかないww 

ともあれ、居城、妻の面前で取り乱す田中哲司の演技は流石だったが、その後の「秀吉の配下で播磨攻めに行け」って信長の沙汰は、身の破滅を想像していた者にとっては、むしろ「助がっだー」と胸を撫で下ろす類のものだったのではないか? 最近の村重さんを見てたら、「いっそ降格して楽になったほうがいいよ」って言いたくなるような感じだよね。

や、もともと「俺が天下を取ってやる」ぐらいの勢いで登場した村重だから、信長の腹心どころか猿づれの下につくのは屈辱でしかなく、やがて初期の大志を思い出し…って流れになるのかなとも思うけど、それなら、信長相手に不安神経症になるよりは、これまでもいちいち怒りに震えながら下知に従ってたぐらいのほうが良い気がするし…。なんか、ちょっとロジックがあふやふやだな、って感じがする。でもいよいよだな、ってとこまできて、ちょっと武者震いしちゃうぜ! 震え損で終わるかもしれんけど!ww

ちなみに今回の信長は、最初の謎茶会(濃姫の「歴史に残る茶会になるわね…」の説明セリフが空しい)でも、上座が真っ赤の大広間でも、割と口数少なくて良かったです。あんまり喋らせない方がいい、ってわかってくれたんでしょうか。演出。

さて、これをふまえての加古川評定。ベンガルが空気読まずにベラベラとしゃべり出し、あげくは芋を推しに推しまくるシークエンス、最高でした! 秀吉が「こいつ何言ってんだ」と佐吉(三成)に耳打ちして「はて、韓非子ですが…」と答えるのも良かった。秀吉は知識は乏しいけど名司令官。三成は兵法に明るいけど状況を読む力が弱い。頼りの半兵衛は発作。細やかだ。これも前川某先生が書いたの? 今作のこれまでで一番好きかも。

「信長は秀吉に“播磨切取次第”を許している。毛利につけば本領安堵だ!」とぶちまけられて失敗に終わる加古川評定。「信長なんて信じられない」という空気は本願寺との対峙でもみちみちていたので、ここでご破算になるのは説得力ありました。しかもそれが流言飛語ではなく真実ってのが、いい(前半、それをしたり顔で注進するおねにはげんなりだったが)。

てかさー、そんな感じで「戦国の評定」としてはけっこうおもしろく進んでた今回だったからさー、ほんと、左京之進が残念でしょうがない。それに相対する官兵衛もね。こいつらどうしてこんなにダメダメなの。

鶴太郎に「男の悋気は見苦しいのう。左京之進は器が小さい、小さい」と言わせてたことといい、作り手の意図としても、左京之進の官兵衛に対する敵意は「悋気する小人物」でファイナルアンサーなんだと思う。まあ、それでもいい。悋気が悪いとは言わない。モーツアルトに対するサリエリゴーギャンに対するゴッホ古今東西、劣等感や悋気から逃れえないのが人間というものだ。

それでも、左京之進はこの導入部における官兵衛のライバル、天敵的存在であり、妻の実兄でもある。ついに決別するときには、視聴者の胸がかきむしられなければならない。おバカな小人物にも五分の魂が必要なんだよ! なのに延々と、「ただ不快なだけのキャラ」できてるからねえ。それを説得しようとする官兵衛も説得力ないセリフ叫ぶだけだし。あげくの果てに、禁句「乱世を終わらせるために!」のお題目キターorz 「乱世…」の「ら」とか「太平の世…」の「た」を言い始めた瞬間、キャラの口にガムテープ貼り付けるアプリはないものか?

光とのきょうだいの絆がまったく感じられないのも、先週の力(りき)のときと同じである。中谷さん、毎週のように空虚な涙を流させられて気の毒だ。

「志方城に馬で乗りつけ、城門前で急停止させられた馬をなだめつつ面会を頼んで声を張り上げる。」とか、「足早に歩きながら城の軍備の様子に油断なく目を走らせる。」とかの岡田くんの演技、とても見ごたえある。だからこそ、「純粋まっすぐくん」を演じさせられているのが残念でならん。ただあのシーンでは、恵瓊の「信長、三年以内に高転び説」が出たのが面白かった。安国寺恵瓊は役者の雰囲気と出番の少なさで(笑)フィクサー感が保たれている。ところで「あんこくじえけい」が一発で正しく変換できるなんて、ATOK?もすばらしい時代になりましたね。