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ソチ五輪・女子フィギュア 浅田真央 その1

ご多分に漏れず、私も浅田真央のFSの演技で泣いた一人である。彼女の五輪がどんなだったのか、今現在はほとんど説明の必要もないだろうけど、自分の観戦記録として。

SPが終わったあとは呆然だった。試合が終わったのが4時半、布団に入ったのが5時半、寝ついて起きるまで1時間半。夫を送り出してから、子どもを起こさず30分ほどふて寝。起きてからはそれなりに日常を過ごす(しかない)んだけど、心の一部はずっと暗かった。情報番組なんかが、ややもすれば「3Aさえ決まれば金」のような論調になりがちであっても、金メダルどころか、メダルを獲ることだってそう簡単な話じゃないのはフィギュアファンなら始めからわかっていたことだ。それでも、ああいう崩れ方をするとは微塵も思ってなかった。団体戦のように、3Aがアンダーローテーション扱いの上、転倒してたとしても64点。そのあたりが「予想しうる最悪の事態」だと思ってた。

もう一度最初からやったらあそこまで悪いことはないはず、でも(滑走順や国民の期待度に差異はあれど)みんなそれぞれに緊張や不安をも抱えて臨んだ試合なのだ。なんで彼女だけがあそこまで、本来の実力と違いすぎる演技になってしまったのか…。本人の胸中を思うとたまらない気がした。アホみたいだけど、「真央ちゃん、今何してるんだろう、どんな気持ちでいるだろうか」という思いが、試合が終わってからの20時間ぐらい、何度も何度も浮かんだよね。


正直、もう棄権しちゃってもおかしくないと思った。ショートが悪かったからってフリーを棄権するなんて選手を、この競技で見たことはない(怪我でもない限り)けど、もう、リンクに立つことができないんじゃいかと思えるぐらいの、あまりの事態だと思った。ネットを見ると朝の公式練習の画像が流れてきた。晴れの舞台の衣装をまとった顔色にまったく生気がないと感じるのは、すっぴんのせいじゃないはず…。

それでもやっぱり、日本時間の1時15分、起きてチャンネルを合わせるんである。6分間練習では、周囲にいわゆる「金メダル候補」の姿のないことに現実をまた痛感させられた。まさか第2グループで滑るなんて…。表情は硬く見えたけど、メイクアップした顔は綺麗で、それだけでちょっと感動。世界中の前であんな失敗をしても、翌日のリンクにこうして立つんだ、フィギュア選手って。

どんな結果だろうと彼女を貶めることになるもんか、と叫びたいような気持ちと、こんなにも頑張ってきた(直接知るわけじゃないけどそういう気持ちである)のが報われるため、少しでもいい演技をしてほしいと祈る気持ちとで頭パンパンのまま、始まった演技を固唾をのんで見つめる。3Aが決まったときは、「っっっしゃ!!!」。続く3F-3Loをまわって降りた、と見たときに、すでに涙腺がゆるむ。3Lzはしろうと目で見てもやはり安定のエッジエラーなんだけど、とにかく回って降りてる。ここまでで「とりあえずこれでいい、これで何とか形はついた」という思いが頭をかすめたんだけど、中盤のスローパートに入ったときに小さく微笑むのを見て軽く鳥肌。こ、これは…。

ほかの選手の演技でもそうなんだけど、高難度のジャンプが必ず含まれる最初から2つ、3つ目ぐらいまではこっちもガチガチに緊張して見て、そのいずれもが成功した場合は、「これでとりあえず大きな得点源を確保だ」と安心するような気持ちと、「こ、これはもしかしたらノーミスいけるかも」という期待とで、もうわけわかんないほどぐるぐるしながら後半を見ることになる。

今回もそうだった。スローパート、やや慎重さが感じられた前半よりも伸びやかに見えるスケート。後半、最初のジャンプは注目の2A-3T、うーんびみょう!でも着氷はきれい! 3S、「これは綺麗に決まりました」と解説の八木沼さんが強調してホッ。3F-2Lo-2Loの3連続、危なげない! そして最後の3Lo、真央らしい綺麗な3Lo、降りた瞬間、彼女には珍しい「どや!」っぽい手のポーズと表情に、涙腺決壊、鳥肌ゾゾー、私の胸のマグマ噴出! きたきたきた、これ、きたよーっ! クライマックスに向かう曲調に合わせたビールマンスピン、ちょっと苦しそう、がんばれがんばれ! そのリンクサイドに佐藤信夫とザンナさんの両コーチ! ステップー! よい表情! 気魄あふれる肉体がめくるめく動きで氷上を横断していく。やばい、これやばい。端まで達するとコレオシークエンス! 速い、速い、これまでの浅田真央史上でも最高級の疾走感、だからスパイラルもいつもより長い! 完璧に決まったポジション、目にもとまらぬスピード。笑みをたたえた表情も合わせて、ほとんど狂気に近いほどのスパイラルは、曲に合わせたありえない急ブレーキで唐突に終わり、ラストポーズ、ためこまれた情熱が天に向かって噴きあがる…って、真央ちゃんが泣いた! 一緒に涙ブワーなりながら、思わず、わけわからん声が出たよね。

まったく、なんという幕切れ! 今季初めて認定されたトリプルアクセル。プライベートベストスコアをマーク、つまり彼女史上最高の演技。142.71点だけれど、体感では150点くらいに思えた(2013ワールドでのキムヨナ147点、今季全日本での鈴木明子144点と比較)。

その深夜2時前の興奮は当然、明くる夜までずーっと続いたのだけれど、今、この件で心の底から「すっげー!!!」と思い、「どーなってるの?!」と疑問渦巻き想像したところを、以下に記す。凡人の想像力では及びもつかないのだけれど、想像する。(つづく)