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『最高の離婚Special 2014』

ドラマ

始まってすぐに「やっぱ、劇伴がいいドラマだな〜」と思った。冒頭のキャンプシーン、いきなり長回し。瑛太、火まで起こしてがんばるがんばる。

宴会やカラオケなどサービスシーンばっちり。歯医者での光生のひとり語りや身体の痛み(ガッツさん由来の尿管結石ww)」、家の中での夫婦の修羅場も、カシオペア号を使っての大人数での修羅場も、このドラマのツボをちゃーんと押さえて作られてある。食堂車で席順を弄りながら展開するシーンは坂元脚本の真骨頂だった。ただ正直、スペシャルで見るにはちょっとしんどいドラマかなと思いもした。どうしても、数度の修羅場や長台詞シーンが詰め込まれることになるし、かといってあれ以上おちゃらけたシーンが増えても散漫になるし。

とはいえもちろん、あの4人にまた会えてとっても嬉しかった。窪田くん出なかったのは淋しかったけどしょーがないよね(泣)。で、かわりに岡田義徳がIN。あれっ2,3週間前に兄妹やってたよねこの二人…? 岡田くん両作品ともすごく良かったー。切なかった。「足尾」では老親を、今回は幼子を、ひとりで抱える役だったね。

光生・結夏夫婦が子どものことで危機を迎えるのは予想通り。どちらの言い分も等しく一理あって、等しく危ういというか現代人の病理を含んでるのが流石だと思った。

31才の結夏が子どもに対して切実な思いをもつのはごく自然な話で、広く共感されるだろう。結婚(する合意を結んでる)相手の子を欲しがっているのだし、倫理的にも何ら問題ない。「足が速いとか木登りができるとか、子どものころにしか取り柄のなかったつまらない自分だけど、お母さんには向いてると思う。お母さんになって子どもに愛情を注ぎたい」。ささやかで微笑ましい願い。でも、「誇れる自分」「夢中な何か」のない女が、育児に充実感や自己実現を見出そうとする姿にも見える。

一方、光生は「引きこもり、二次元の恋人、国の借金、ブラック企業」なんて大げさな述懐、瑛太の盤石の演技も相まって大笑いなんだけどやっぱりそれだけじゃない引っかかりがあって、光生は子どもが嫌いとか親になる責任を背負うのがイヤとかいうのもあるけれど、自分自身が生きづらさを感じてきたこの世に、自分によく似るだろう子どもを送り出すこと自体がかわいそうで、つらいんじゃないかとも思った。かんぽ生命?の新しいCMで能年ちゃんが「この世は悪くない」と高らかに謳うけど、自然にそう思えない人間もいるのだ。

「イケアで家具を買って広い部屋に引っ越し夫婦ふたりで雑誌に載っているような」生活も、「みんなと同じように子どもをもって愛情をもって育てることに追われる忙しい」生活も、どちらも同じくらい安直で、でも決してバカにできない願いなのだ。子どもなんて、昔はこの日本でも、「親になる覚悟」なんてするまでもなく、ぽこぽこできてぽこぽこ産んで適当に(もちろん殆どの親は愛情を注いで)育てていた。生物として、本来的にはそれがごく自然な姿なんだろう。「産みたくない」と言う女より「産みたい」と言う女の方がエラい、もっと言えば、産まない(産めない)女より2人も3人も産む女の方がエラい、という見方だって根強い。

実際に子どもを育てている夫婦や、光生たちの親の世代は、「産んでしまえば何とかなる」「あれこれ考えなくても、子どもができたら自然に親になっていくもの」なんて言うだろう。もうひとつのカップル、諒と灯里がうまくいったのも、結局は「子はかすがい」を地でいっているともいえる。灯里が「諒が好き」と素直になれたのも、諒が家庭に帰る選択を「自分で」できたのも、子どもの存在によるところはきっと大きい。この子も「さあ、作ろう」ではなく「できてしまっていた」子なのだ。けど、そこをエイッと飛び越えられない人間もいる、という世の中になっている事実は厳然とある。

光生も結夏も同じく自己評価が低い大人なんだけど、子どもに関しては真逆のスタンスから動けない。この断絶の前にふたりは別れるしかない。それが「断絶がある以上、できてしまってからでは遅いのだから、せめてもの幸せだったあらかじめの決断」なのか、「できてしまえば何とかなるのに(あるいは、望んでもできない場合だってあるのに)、不幸せな、決断の先取り」なのかは、判断できない。結夏の去った部屋で光生がそれなりに元気に暮らしているのは、手紙にあったように「結夏の存在、ふたりでの確かな生活をそこここに感じながら」だからなのか、あるいは結局「現実ではなく思い出、心の中の虚像と寄り添っているから」なのかも、結局はわからない。

けれど光生は手紙を書く。坂元先生お得意の手紙芸。例によって、村上春樹かっていうぐらい異様にうまい手紙(笑)。その手紙は、なんと投函された(これまでは、今作でも他作でも、投函されない=相手に届かない手紙ばかりだった)。何が幸せで何が不幸なのか、そこは決めつけず、結論を出さず、けれどコミュニケーションは続く、続けたいと思う気持ちがあって、行動する。光生&結夏カップルが好きな視聴者としてはほろ苦かったけど、「ただのおまけ」じゃないスペシャルだったなーと満足してる。なんか・・・もしやもう1回続編もあるかも?!