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『社会の抜け道』を読んで愚考するのこと(3)

世の中 moonshine

今って、自分で選ばなければいけないことがすごく多いと思う。食材、学校、銀行、保険、病院、教育方針…。選択肢が増えるって、自由度が上がるわけじゃないんだよね。本文中では「選ぶことを強制されている」と書いてあった。選んだあとでいわれる「自己責任」って言葉が、この社会の厳しさを物語ってますよね。

そんな世の中になっていても、いや、そんな世の中だからこそかもしれない、私たちは相変わらず、わかりやすいもの、アピール力のあるものに飛びつきがちだし、自分の意見に頑迷で、自分の判断を補強してくれる情報集めに熱心だったりする。簡単な二項対立にもっていくことも良くある。そのほうが論戦を展開しやすいからだ。男/女。都市/地方。権力/市民。保守/非保守。原発維持/反対。独身/既婚。ワーキングウーマン/専業主婦。リア充/非リア充。モテ/非モテ

この本では、こんなことも書いてある。「自由とは選択肢が多いこととはまったく違うし、そもそも、用意された選択肢が十分なのかどうか検討しなければならない」。そのとおり。そのとおりなんだけど、今ある選択肢だけでもオロオロしてるのに、そのうえ〜?!と悲鳴をあげたくなる。難しすぎる、負担が大きすぎる、ひらきなおって適当に決めて酒でも飲んで寝よう、てなる。

だけど、ここにこそ、本質があるんだよな、とも思う。希望も、ここにあるのです。続く文章の「抜け」感!

「議論を二項対立にもっていくと絶対に答えは出ない。けれど問題についての情報をたくさん仕入れて知識を増やしていくと、二項対立は消えていく。その対立で隠されていた真の論点が見えてくる」。

「だから、新聞やテレビなどのマスメディアはそのための情報提供をしなければいけないはずなのに、彼らのほうでも二項対立にもっていく論調が実に多いね」と対談は続いていく。そうなんだよね〜。朝イチですら、時々、「職業婦人(死語だがw)vs専業主婦」みたいな特集やってるもんなあ。そういうときは、かまえて見ないようにしてるけど。

二項対立の消滅を自身で経験してきた人は多いんじゃなかろうか。「自分の子どもをもってみると、親の気持ちがわかるなあ」とかだって、そのひとつだよね。子どもvs親、上司vs部下、営業vs経理、独身vs主婦…一方の立場でしかなかったころは対立構造として捉えていたものが、もう一方の立場にも立って、両方についての知識や経験が増えたことによって、自分の中でもはや対立構造ではなくなるというパターン。

ま、もう一方の立場に立つことで、かつての立場で抱いていた思いをスッパリ忘れてもう一方の側につき、結果的に延々と対立構造を維持していくパターンもあると思いますけどねw 

私が経験してきた二項対立。政治的スタンス…っていうほど政治的主張の成熟した人間ではまったくないんだけど、なんとなく両方見てきたなって思いがある。私が通った公立小学校(福岡、1980年代後半)は、たまたまかもしれないが、割に左巻きの強い教育がなされていた。10歳前後の子どもに対して、日本兵が大陸でどんなに残虐なことをしたか、という主題での平和授業が普通に行われていたのだ。子どもなので素直に受け止めてgkbrしてたけど、けっこうなもんだったと思う。小学1-2年のころ、空襲とか原爆とか「私たち」が味わった悲劇を教えるのね。そして3年生になったら「でも私たちがそうされるのには理由があって…」*1

その後、私が10代後半のころに、「新しい歴史教科書をつくる会」の活動が盛んになった。そこでは「自虐史観」という言葉が盛んに叫ばれていた。すでにそのころ大河ドラマetcの洗礼を受けて歴オタとしての足元を固めていた(笑)私にとって、興味深い現象だった。井沢元彦「逆説の日本史」の刊行が始まったころでもあり、「歴史の評価は覆されうる」ことが新鮮に感じられていた。スポーツの世界大会で自国の選手を応援するように、自国を恥じるより愛情をもちたいという気もちは自然なもので、その手の本は割といくつも読んだと思う。「きけ、わだつみの声」を読んだのも同時期だ。そりゃ、幼いころに植えつけられた「日本兵=悪の化身」という単純イメージを打ち砕かれるってもんである。

やがて「つくる会」にも内部のイザコザがあったりして迷走を始める一方、私は年を重ね、歴オタ/社会人として地道にレベル上げにいそしみ・・・気づいたらささやかな右傾化時代に別れを告げていたのである。何か明確なきっかけがあったわけではない。いつのまにかそうなってた。右か左、自分は、どちらかに傾くことないな、って。

時間をかけて、いつのまにか…というのがポイントなんだろうなと思う。いろんな経験をして、本を読んで、いろんな考えに触れたり、自分でも、考えるともなく考えたりして、そうなった、ということ。(つづく)

*1:創氏改名はもちろん、強制労働で最初に自分の墓穴を掘らせて…とか抵抗したリーダー格の首を切って晒して…とかまで、公立小学校の授業でやってたんだよ!