サクことば39 3歳すぎ 論理的にしゃべる

一部の副助詞や接続助詞には、習得までに面白いプロセスが見られた。まず、「意味なんておかまいなしに語尾につけてみるブーム」がやってくるのだ。

  • 「ぼくが のるから」
  • 「おふろ はいるだけ」
  • 「サクちゃん たべないだし」
  • 「ちょっと おおきいけど」

など。2歳6か月ごろから始まった発語だが、いずれの場合も、本来の意味である「限定」とか「順接」とか「付加」みたいな文脈での使用ではない。すべて、「〜〜〜だもん」みたいなニュアンスで使っている(まあ、大人も、そういうニュアンスで使うことはありますよね)。

しかも、これらの発語は同時に複数の語尾が見られることはなく、まるでブームが来ては去るように、ひとつずつ出現しては消えていった。今は「〜〜から」ブームで、そればっかり言ってる。しばらく経つと、「〜〜だけ」と言うようになり、「〜〜から」は消える、といったふうに。今は、やたらめったらひとつの語尾をつけるブーム自体が去っている。またそのうち、何かのブームが来ないとも限らないけど。

「接続」など、物事と物事とを結びつけるような発語は、3歳になる前後から見られるようになった。最初は3歳になる前に「〜〜〜したらダメだよ」という言い回しを定型で覚えたらしく、言うようになった。

「どうして?」と聞かれたことに、「だって、〜〜〜」と理由を答えられるようになったのも3歳前後で、そのあとだと思う。普段の会話でも、順接や仮定がスムーズに出るようになった。

  • 「ちょっと じゃまだから さきに いくね」
  • 「ぎゅうにゅう なくなったから ついでください」
  • 「おかたづけしないから おこられた」
  • 「はしったら あぶないでしょ」
  • 「これが なくなったら これ のむよ。まずは これ」
  • 「ごはん たべたら なに するの?」
  • 「おふろ はいってから あそんでも いい?」

論理的な思考、といえばおおげさだが、物事の相関関係みたいなものの捉え方が成長してきてるのを感じる。

でも、「何らかの概念を理解する」のと、「言葉で言える」のとでは、どっちが先なんだろう? どういう関係があるんだろう?とあらためて思うね。まだ言葉を話せない赤ちゃんだって、電池でレールの上を動いてる電車の進路を別のおもちゃでふさいで喜ぶ、とか、するやん。そこをふさいだら、動いてたものが止まる、っていう論理はわかってるんだよね。それは、お母さんが見えなくなったら泣く、みたいな本能的な反応とは違う、知性の動きだよね。

かといって、たとえば「お風呂に入ったら遊んでもいい?=やるべきことを先にやったら好きなことをするのが許される」みたいな発想は、赤ちゃんにはもちろん、1歳や、2歳なりたてでも、まだ、ないだろう。自我が芽生えて自分のやりたいことがあるのに、親に阻止される理由がいちいちわからなくて、イヤイヤ魔人になるんだと思うし。

先述したように、意味も分からず語尾につけて言ってみる、みたいなことも子どもはするから、必ずしも「理解する=発語する」の順番ってわけでもない。言語発達においてこういった分野の研究はどれくらいあるのかな。認知言語学とか、心理言語学とかの範疇で探したほうがいいんだろうか。

ところで、「理由」「順番」「仮定」「並列」はよく出現しているけど、「逆接」はまだほとんど出てきていない気がする。