モスクワ世界陸上8日め: 男子マラソンほか!

●男子マラソン
中本健太郎ーーーー! 2012ロンドン6位、2013モスクワ5位。結果だけを見れば同じぐらいだけど、内容は全然違う! 粘って、粘って、粘ってとしているうちにポロポロ落ちてくる人を拾って、さらに勇気をもらって上へ…だったロンドン(もちろんあのレースもすばらしかったけど)。今回は、終始先頭集団! 強気! それでいて、無理をしている感じがまったくない! 涼しい顔、軽い動き。頼もしさすらあって。

当然のごとくケニア勢やエチオピア勢が占める先頭集団は、持ちタイム的には日本代表と2-3分違う人が殆どなんだろうけど、「ものすごく怖いのはこの中のふたりか3人ってとこだろう」と思える感じが、最近はある。層が厚い分、かわるがわるいろんな人が出てきて代表になっては、経験の薄いまま消えてくところがアフリカ勢の弱点といえば弱点。彼らは「メダルだめだな」とか思ったりして心が折れたら、がくんとペースダウンしたり、棄権したりするとこあるから。マッチョな精神論みたいなのに走りたくはないけど、やっぱりマラソンって完走することが次につながる部分あるんだよねきっと。

それにしても彼らは、なぜ帽子をかぶらんのでしょうね? ていうか、前の方ではほぼ日本選手しかかぶってなくて、おかげで非常に見つけやすかった(笑)。まあ帽子は慣れるまでは邪魔っけに感じますよね。彼らが帽子の日除け効果に気づくとき、また世界の壁は高くなる…(笑) だって汗のかき方とか、明らかに違ったもん、中本と、周りのアフリカ選手たち。

と、終始、中本を絶賛しながら見てたレースだったんだけど、彼と同じく、2012ロンドン金、2013モスクワ金、と結果だけを見れば同じでも、キプロティッチの今回の横綱相撲! ロンドンでは、ケニアのキルイとキプサングが完全に互いを相手と思って消耗していった間から、するする〜っと抜け出て獲った金メダルに見えたけど、今回は堂々たる世界のリーダーの走りだった。スパートも見事で、ほれぼれ。中本は4位と3秒差でね〜惜しかった。一時期に比べるとかなり復活しつつあるのを感じる男子マラソンだけど、メダルはやっぱり、まだ遠いのかな。

その男子マラソンの底上げの原動力になったのが、Qちゃんもいってたけど、川内であることには異論の余地がないよね。彼が出てきたことで世間やマスコミが注目し、実業団の選手も「川内にだけは負けたくない」と奮起した。選考レースの別大マラソンで、中本とあんなにデッドヒートを繰り広げたあげく、40キロで渾身のスパートをかけて優勝した川内が18位だったのは寂しい。彼もこの1,2年で、市民ランナーという食いつきやすい話題の人じゃなくて、真の強さを感じるランナーになっていたのに…。やはりコーチやスタッフの助けなく、ひとりでピーキングするのって難しいのかなあ。前田が17位、藤原正和が14位。まあ、持ちタイムを考えると順当というところになるのかな。彼らもこの大きなレースで最後まで足が死ななかったのだ。そう、堀端がかなり序盤に姿を消して、心配してたら15キロぐらいで棄権したらしいのだ。故障か。彼は見た目の大きさにそぐわない大器、またこの冬から活躍してほしい!

そうそう、6位と7位が共にブラジルの選手で、なんと、ふたりでつないだ手を天高くあげながらゴールしたんだよね。すごく珍しい光景だったし、ブラジルの選手ってマラソンこんなに強かったっけ?と、にわかに気になって、IAAFのサイトでチェック。そうそう、ロンドン五輪で、中本が抜けそうで抜けなかった5位のドス・サントスは名前からしていかにもブラジル人だった…あとのふたりも8位と13位。強いんだな! これ、リオ五輪、かなり盛り上がるんじゃねーの?!


●男子200m決勝
はい、織田さんが100mのときから繰り返し言ってた「200でボルトが世界記録出す」は、いつもの「出る出る詐欺」に終わりましたww でも、面白いレースでしたね、準決勝であれほど良い走りを見せていたイギリスのジェミリ君は、ボルトの横で、ガッチガチに固くなってしまって走ってるように見えました、5位。同じく若いジョボドワナ君は6位。対照的に、予選や準決勝では「ちょっとどーなの?」と見えたウィアー(ジャ)やミッチェル(米)が、決勝ではきっちりとベストを尽くして銀と銅。ウィアーはここで自己新を出してくるんだからすごい。でもリオ五輪までには、若い力は確実に伸びてくるよね。

そしてボルト、記録は19秒66。コーナー回ったところでもう先頭に立ってて、直線の最後は流しているように見えた。猛然と追い込んでくるウィアーとは対照的。張本さんあたりが見たら確実に喝を入れそうだけど、再度VTRを見た織田さんが「きっと今日のボルトにはこれが精いっぱいだったんでしょう」と言い、中井さんも「(走ったあとの今の様子が)なんかすごく疲れて見えるんですよね、汗もすごいし」と同調していたとおり、きっとそうなんだろうなーと。思い出してみれば、ロンドン五輪の200決勝もこういうゴールだったんだよね。そのときすごく不思議に思って、長々とログ残してるの覚えてる。そうそう、これこれ→ http://d.hatena.ne.jp/emitemit/20120810#1344593951

織田さんの、「長いこと(競技生活を)続ける選手じゃないと思うんですよね。次の五輪までだとしたら、世界記録を出せる機会はもう限られてる」って相変わらず俗なコメントなんだけど、その身もふたもない俗さにグっときちゃうことって多くって、ほんとそうだよなーと。

●女子走り高跳び決勝
そう、私にとって走り高跳びの女王といえば、クロアチアの美女ブランカ・ブラシッチであり、テグで彼女を破り、彼女の姿のないロンドンでもまた堂々の跳躍を見せたロシアのチチェロワが新女王だったのだが、チチェロワ敗れたり! 時代は次々に移り変わっていくのね。しかも、さらなる新時代の女王かと目されていたアメリカのバレットも破って金メダルを獲ったのは、チチェロワと同じロシアのシェコリナだったよ!! 競技中も豊かな表情、パフォーマンスを見せるバレットと対照的に「氷の女王」なんていわれてるシェコリナ。そら、ロンドンも銅だったんだから思い描かなかったこともなかろうけど、それでも思いがけない金メダルだったのか、信じられないような表情をしてた。満員のロシアのお客さんも、大本命だと思ってたチチェロワが敗れて落胆してたら、シェコリナが金メダル獲って祝福する前にびっくりしてる様子だった。

あとで調べたら、ブラシッチは2012年にアキレス腱の手術をして、ロンドン五輪を欠場したらしい。今季は復活し、ダイヤモンドリーグで優勝もしたけど、痛みが出てきてモスクワを欠場。次のキャリアを見据えての欠場だったんだね! チチェロワだってまだまだ実力では随一といっていいはず。次回大会を待つ! あ、そーだ、チチェロワといえば、棒高跳びをスタンドで見ててね、イシンバエワが優勝すると、立ち上がって大きな国旗を背に掲げてる姿が映ってたんだけど、髪をおろして、私服で、化粧をして艶然と微笑んだら、すげーゴージャスな美女だった! いつも競技の時はほとんど無表情で化粧っ気も薄くて、2009ベルリンあたりでは「学級委員長」てイメージだったんだけどとんでもなかったですごめんなさい! 


●男子やり投げ決勝
とにかくあっちもこっちも決勝で放送時間が足りないもんだから、予選で唾つけた新イケメン、スウェーデンのアムブ君が全然映らなかった〜〜〜ぶーぶー。次回大会、メダルに絡んでくることを切に願う! 試合自体、はしょりはしょり、とぎれとぎれでの放送になったんだけど、ずいぶん盛り上がったはず。後半、ケニアのイエゴがPBを3mも更新してメダル圏内に飛び込んできたあと、ロシアのタラビンが今季世界ランク1位の意地で抜き返すあたり、白眉でしたね。てか、タラビンの奥さんアバクモワってマジか! こいつらの夫婦げんかに槍だけは持たせてはならない。って遠くに投げる競技だけどw 金メダルは前評判も高かったチェコのベゼリー。良く見るとこの人も相当のイケメンじゃないですか? ていうか好みだわ、すごく好みの顔だわ。精悍〜! 2007大阪の王者であるベテラン、ピトカマキが復活の銀! この競技、イケメン王者のトルキルドセンは7位でした。イケメン王者はイケメンなだけじゃなくて、2008北京五輪や2009ベルリンでの王者でもある、ってか、そっちがメイン。テグでも2位だった。これからもまだまだやり投げ界をひっぱっていってほしいものです。


●女子100mH決勝
アメリカの新鋭、ローリンズが優勝! 見事な完勝だった。てか、ピアソンが今にも記録を出しそうな雰囲気で報道してたけど、彼女はケガ明けだったんだな。それでも銀メダルだったんだからやっぱりすごいし、決勝ではSBを出しているから、彼女もまだまだこれからなんだな。 


●女子4×400mリレー
すげー盛り上がったな! アメリカとロシアのデッドヒート! 最後はロシアのアンカー、クリポシャプカが400銅の実力をもって制したが、アメリカのアンカー、マッコロリーも最後の最後まで追いすがった。ロシアWL(今季世界最高)、アメリカSBでの決着!まあ、考えてはしまいますけどね。アメリカにアリソンが加わっていたらどうだっただろうかと…。右太もも筋肉の一部断裂とのことで、これは肉離れなんかとは桁違いの故障、今季どころか来季の復活もどうかわからない、という報道を目にして涙。