サクことば32 助詞3歳0か月まで〜「が」「を」「に」

「が」「に」「を」 いずれも2歳半前後に出現。「が → に → を」の順で出現だった気がする。

●2歳6か月の記録。

  • 「サクちゃんが する」 「パパが やって」 「こっちが いいと おもう」 「ママが ごしごし したね」 「どっちが いい?」
  • 「こっちに する」 「ここに すわって」 「あおに なった(信号)」
  • 「ほっぺを ごしごし してるの」 

ほとんどが、2語文、3語文。誤用はほとんどない、と書いている。


ところが、

●2歳8か月の記録。

  • 「あかっちが ブロック はこんでるよ」 (正しくは “を”)
  • 「“ピタゴラスイッチ”  みたよ」 (正しくは “を”)
  • 「ここ あおいの とおれる とこでしょ?」 (ここは青いブロックが通るところでしょ?の意。正しくは “は” あるいは “が” 、あるいは「ここって」)
  • 「ここ  はしる  とこでしょ?」(ここは走れるところでしょ?の意。正しくは “は” あるいは “が”。また、”はしるの” の “の” は過剰)
  • 「バス  いったでしょ?」(正しくは “で” )

誤用がたくさん出てくるようになった! しかも、やたらめったらな、ごちゃごちゃな、無秩序に感じられる誤用。

その中でも、今おもえば、

  • 「を」をうまく言えなくて、ほかの格助詞「を」や「に」で代用していたのかもしれない。「を」は、会話の中ではかなり省略されるものなので、習得ペースが一番遅かったのかも。
  • 「が」「を」「に」が曖昧だったのだろうが、そこで「の」を使うことはない! 2歳前半で、あんなにオールマイティーのように使っていた「の」なのに!


もちろん、正しい用法での発語の方が、割合としてはずっと多いのであるが。同じく2歳8か月の正用の記録。

  • 「きいろい でんしゃは あおっちが のってるよ」
  • 「きょう オレンジの くるまと いっしょ(の車) いっぱい あったねー」
  • 「パパと おなじ くるま どこ いっちゃった?」
  • 「サクちゃん じょうずに できたでしょ?」 
  • 「ママが 『はい、どーぞ』って くれたよね〜」
  • 「サクちゃんが つくった ハンバーグ」

より長く、複雑な構造の文を話すようになるころに誤用も増えた、ということ。


そのころのメモとして、

が、を、に、の間違いが一番多いようだ。正しく用いることももちろんある。これらは、会話の中では省略されることも多い助詞なので、マスターするのが難しいのかもしれない。

と書いている。また、

言いまちがった、と気づいたときには、自分で言い直すサクだが、助詞のまちがいは絶対に言い直さないので、間違えたことにもまだ気づいていないんだろうと思う。私も、それを意識的にいちいち正すということはしていない。

とも。



●2歳10か月

「が」「を」「に」について、2歳8か月ごろのような誤用が減っている、と記録している。ただし相変わらず、「を」は会話では省略できるパターンが多いからか、出現数が少ないと。


「で」や「から」も発語は見られるが、完全に習得しておらず、「スプーン 食べる」のように省略したり、「どこに あけるの?」(どこから開けるの?の意) のように別の助詞で代用することもある。正用と誤用が並行中。



●3歳0か月 ← イマココ

やっぱり「を」が難しいのかなって気がする。こないだも「ばーちゃん  むかえに いくの?」と言ってた。駅まで、ばーちゃん “を” 迎えに行っているときに。しかも、道中、何度も何度も何度も言ってた。

まちがいばかりではない。「え を かいてるんだよ」とか 「あかいひこうきをつくろうとおもってたの」とか。

繰り返し書いているが、「が」も「を」も、大人・子どもの差にかかわらず、くだけた会話では省略して話すことが多い。大人だって、そのあたり、いちいち意識して喋ってない。

例。
【が の省略】 → 「だるまさん ころんだ」 「あめ ふってきた」 「パパ ねんねしてる」
【を の省略】 → 「おかし もっていく」 「ホットケーキ つくる」 「おふとん かける」 


「が」と「を」って微妙だもんね。「君が好きだ / 君を好きだ」みたいに、どちらでも許容され、文脈によってはどちらもほぼ同じ意味になる場合もある。


ただし、前述の誤用だが、会話で「ばーちゃん 迎えに行く」と言うと、「ばーちゃん “を” 迎えに行く」という意味に限定される。
迎えに行くという動作をする動作主(迎えに行く、の主語)が ばーちゃん ならば、「ばーちゃん “が” 迎えに行く」と言わなければならない。主格にくっつく助詞「が」は省略できないということ。


つまり、助詞があるかないかで、意味が判別できる文もあるのだ。


ということをふまえると、やはりサクもふだんは「を」を省略して話すことが多いのに、わざわざ「ばーちゃん  むかえにいく」と発語したのは、結果的に助詞のチョイスは間違っているのであるが、なにかしら、「ここは じょしをつけとかないと! まぎらわしいけん!」的な、無意識下での、言語的直感があったのではなかろうか。

・・・などと、考えると面白い。


このあたり、詳しく解明すべく、設定を考えて質問して、子どもの発語をいろいろ引き出してみると、卒論のテーマぐらいにはなりそうなんですが(まぁとっくに誰かやってることかもしれませんが)、あらたまって質問すると、子どもって、まっっったく関係ないリアクションしたりして、なかなかうまくいかないのよね〜。



●「が」と「は」について。

似ている。小説の地の文なんかでは、「〜〜と、A子は言った」と、「〜〜と、A子が言った」という文の違いは、(文脈にもよるが)さほど気にならない。


しかし、「アキは来たよ」と「アキが来たよ」という文では、違いを感じるのが日本語話者の直感。普段の会話でも、無意識のうちにそういう違いをふまえて助詞を選んで発語しているはず。


とはいえ、そんなの、2歳や3歳の幼児が区別するのは難しそう。いかにも、間違いそう。


・・・と思いきや、「が」と「は」を間違えること、最初から今まで、皆無といってよかった。


「ごはんができました」 「またくるまがきたよ」 「あめがふってきたんだよ」 「しまじろうはどこ?」 「このしんかんせんはすごいね」 「ゆうくんはおらんかった」 


とっても自然。不思議なほどにまちがえない。