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震災と芸能人 2

テレビ moonshine

これから私が特に書きたいのは、アイドルがいかに、震災以降の私たちを元気づけてきたかということだ。

企業や実業家は大きなカネやモノを動かせるし、それがそのままブランドアピールにもなる。スポーツ選手が子どもたちに夢や希望を与える存在であることを疑う人は少ない。アーティストは感性の人々だから、役者や芸人は「芸」をもっているから、サブカル畑はマイノリティだから、自分が理解できないからといって攻撃するのは大人げない、という認識が一般化しているように思う。

ポップカルチャーの中でも割を食うのは、やっぱりアイドルだ。大衆的な存在だけに、若さやかわいさ(かっこよさ)がウリなだけに、一段下に見られてるとこってあると思う。何もわかっていない子どもたちや現実逃避したい大人たちにキャーキャー言われる、きらびやかなだけの、「実」のない世界。ばかばかしい。そんな意見が、分別ある大人の中では普通に共有されてる。

私はアイドルの魅力を語ろうとしてみる。でも、私なんぞが駄文をひねりだすよりも、これを引いた方が絶対いいだろう。「ほぼ日」の1ページより。

私たちがもし、1分1秒たりとも現実以外に生きられなかったとしたら、窒息するかもしれません。
私たちは、すさんだり、腐ったりするとき、空想の力で、現実の外に飛び出すことができます。そこで安息を得たり、華やぎを見つけたり、活気を取り戻したりします。
(中略)
あなたがファンタジーを信じる限り、アイドルはきょうも、あなたのために、歌を稽古し、踊りをトレーニングし、浮き沈みが激しかったり、競争が激しかったりプレッシャーがきつかったり、寝る時間がなかったり、心ない人に傷つけられたりしても、へこたれないで、芸も、外見も、心も磨きます。
つらいとき、かなしいとき、親や友達でも、駆けつけるには時間がかかりますが、一瞬であなたのもとにきて、いやなことを忘れさせ、別世界につれさってくれます。
「アイドルはいつもあなたのことを想っています」
「つらいときあなたにまほうをかけます」
これは心であり、創造性です。
http://www.1101.com/essay/2013-02-06.html

引用は、一部です。アイドルが丸刈りになって世間が騒然としたときに書かれた文章らしいんだけど、「彼女(たち)がどうかというよりも、私たちがアイドルをどう見るかという切り口」のものは少なく、しかも、アイドルという存在が根本的に肯定されていて、ちょっと泣けた。そうだよね、大人だったら、若いアイドルを、カラッポだと責めたり、価値なしと無視したりするんじゃなくて、包みこむことだってできるはずなんだ、って視点が、初めて示された気がしたね。

や、私なんぞが包み込むなんて、滅相もないんだけどね。私は、どっちかというと、アイドルから、癒しとか、元気とか、もらってるがわだから。「癒される」ってコトバの乱発、安売りはどうかと思っていて、あんまり自分では使いたくないんだけど、「癒される」としか言いようのない感覚を、確かに感じることがある。

十代のころより、むしろ大人になって、しかも三十路すぎてから。具体的にいったら産後。劇的な変化に戸惑ったり、足元が不確かな気がしたりするマタニティブルーに加えて、(育児とは別の)深刻な心配事もあって、特にメンタルが弱いつもりじゃなかったのに、かつてないほど不安定な気持ちで過ごす日々だった。うつというほどじゃないけど、いつもは大好きでどんどん摂取したい本や音楽すら、受け付けないものがたくさんあったから、やっぱり沈んでたんだと思う。そのころ、週3でやってる嵐のバラエティー番組がどれだけ慰めてくれたことか(笑)。

それこそ、産後なんて、簡単に外に出られないし、バリバリ働いてる友だちを急に遠く感じたりするし、親や夫にネガティブな気持ちを相談するのもちょっと気が引けたりするし、かわいい子供が隣にいるのにこの不安はなんだろう、と自分を責めたりもして、孤独もあるのだ。アイドルさんたちのバラエティ番組は、もちろん、あとに残るようなものがあるわけじゃない。ただ、いつ見ても楽しそうで、笑ってて、気が利いてて、彼らは、今日も明日も来週も来月も、ずっと、きっとこうやってがんばって、輝いてるんだな、これからもチャンネルを合わせればそれが見られるんだな、そういう安定感が人にもたらす作用を思い知ったよ。

震災のあとにも、こんな感じでアイドルに癒されてきた人、励まされてきた人、たくさんいるだろうと思う。私みたいに、被災してないのに、震災のあと、アイドルをもっと好きになった人もいる(笑)。(つづく)