『最高の離婚』 第1話

結婚しないっつードラマのあとに、さあ離婚すんべ!!てドラマが始まったよー、あーあーあー、と落胆/失笑しているみなさん、だいじょうぶです! 前クールの、結婚しないことを軽々しく弄ぶようなドラマとは違って、今回は、“ご経験者”(←劇中で瑛太さんが使っていた語彙w)に対する敬意を欠いていません! こちらも雰囲気的には明るくライトですが、根本的な違いは大きいです!

脚本・坂元裕二×演出・宮本理江子。「それでも、生きてゆく」組。大人も見られるドラマとして超期待してたのはまちがってなかった。坂元さんの脚本が、ふるっててねー。フックの多いこと多いこと。ひっかかりまくり。

光生(瑛太)夫婦の成り立ち(笑 結婚への経緯や結婚生活の実相)は赤裸々に見せておいて、もう一方の真木よう子綾野剛の夫婦についてはまだ幕をかけている。前半から中盤にかけて瑛太の心情を一方的に語らせ、唐突な離婚届の提出後、最後にオノマチに同じ手法で心中を語らせる。

それぞれのキャラ設定。几帳面で動植物が好きで人間は苦手な光生。大ざっぱでデリカシーのなさげな、でも光生の家族みんなと気が合っている結夏(オノマチ)。なんだか煮え切らない顔で夫を語る真木よう子。だから真木とは仮面夫婦なのかと思いきや、真木にも若い女の子に対してとまったく同じテンションで好意をあらわにする綾野…。

洗面所の水滴をいちいちふき取ったり、出しっぱなしの玄関の靴をしまったり、開けっ放しのドアを(以下略)。ちまちました瑛太の姿は「うわっ こういうちっちぇー男とは付き合いたくない」と思わせるに充分でしたが、考えてみれば、同じようなイライラを旦那さんに対して抱え続けながら一生やってく奥さんって、いくらでもいそうだから、そこいら辺の折り合いを、彼らがどうつけていくのか。で、「女は好きになったら許す。男は好きになったら許せないところを探し出す(だっけ?)」と光生の祖母がが言い、「そんなん、圧倒的不利じゃないですか、わが軍は!」とオノマチが言ったやりとりは、どんな結末に収れんしていくのか。楽しみです。

そして何といっても驚かされたのが、ドラマ中で割と激しい地震(震度4、と言っていた)が起きたこと。のみならず、瑛太夫婦が、震災をきっかけに結婚したという設定。大勢の帰宅難民たちが甲州街道を歩いて帰るシーンまで作りました。多くの都市圏の人々にとっては経験であり日常であり、つまりリアリティなんだけど、あれをまだ正視したくない、受け止められない人もいるだろうよね。

まあ想像されうる視聴者層とはあまりかぶらないだろうとか、いろんな現実的なところのケアができるという確信あってなのかもしれないけど、とにかく「これでいこう」と決めて実行できたのがすごい。ちょうど、『放送禁止歌』という本を読んだばかりだったので、なおさらそう思った。クレームリスクってやっぱりないわけじゃないからね。まして、王家だなんだで、「平清盛」があれほど(ろくに見ていない人までもが口にするほど)叩かれた時代です。

これはあれかな、「リーガル・ハイ」の9話とかも実績になっていたりするのかな。とにかく、実態のない“暗黙の了解の”規制コードを口実に、やたらめったら放送禁止(自己規制)にしてたころよりも、現代のフジのドラマ班?おえらいさん?たちは、気骨をもって番組を作っているといえる。

ともかく、震災がきっかけで結婚した瑛太夫婦は、地震をきっかけに今、離婚したわけだけど、この作品の中でもう地震が起きないとは思えないし、地震エピソードはこれからも大事に使われていくと思うので、初回をチラッと見て「不謹慎だ」「軽々しい」なんて眉をひそめた人にも、ぜひ最後まで見てほしいですね。…と言いつつ、最近のドラマって、最初から「ついてこれる人だけついてきてたらいいよ」ってスタンスで作ってるものも多い気がするんだよな。「それでも、生きてゆく」だってそうだったし。「リーガル・ハイ」のすばらしい不遜さも、「ゴーイングマイホーム」のマイペースさにもそれを感じた。意外と、視聴率に振り回されないで作ってるのかな。最近のフジは。

そしてなんといっても、瑛太だよね! ホント何やってもうまいな! オノマチ、真木、綾野と、旬の人である共演陣は、うまくても単体ではやや硬いところがあるところ、伸縮自在(違)の瑛太がひっぱっていくので安心して見てられるって感じ。桑っちょのテーマソングに合わせて4人が踊るエンディング映像もクセになりますな!