『吉原御免状』 隆慶一郎
- 作者: 隆慶一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1989/09/28
- メディア: 文庫
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味わいのある老人、超絶いい女!な花魁、恐ろしい敵など、個性的な面々の中にあって、主人公が剣の腕は抜群だが山奥から江戸に上ってきたばかりの朴訥とした好青年であるところがまた良い。これだけ奇想天外なのに、中心にあるのはひとりの若者が「大人の男」になっていく王道の成長物語なのだ。吉原の夜の始まりを告げる「みせすががき」の三味線の音を、まるで本当に聞いたような気がする。主人公の誠一郎と同じく、物語の冒頭とラストでは、まったく違う心持ちで。
あとがきならぬ「後記」には、長い物語のあとでもう一度戦慄させられる。苦界=公界、つまり無縁の場であるという着想からここまでの物語を作るだなんて、作家の想像力、創造力に畏怖を抱くしかない。