キリンジ弟、堀込泰行脱退

TLで知った。寝耳に水とはこのこと。叫んじまったよ。急いで公式コメントを見に行った。ショックだった。ショックの中身について考えてみると、まず、長いこと愛聴してる音楽が、「ふたりでいることを迷いながら」作られていたと知ったショック。大事なものに何か一点、しみが落ちて広がっていくような心持ち。これが高じると「裏切られた」とか「大好きなものを汚された」ような気分になるんだと思う。

次に、「兄弟なんだから、深刻な軋轢なんてありえない。他人同士で作ったバンドよりずっと安心」と無意識下で思っていた自分の迂闊さへの憤り。なんておめでたい奴なんだ、私。

「中で起こっていることが外から見えないのは当然だから、表沙汰になるまで気づかないのは道理」ってのは道理なんだけど、それは「だから外から見えないものがあるってことを、つねに肝に銘じておくべきなんだってば!」って理屈にもつながる。ちょうどこのころ、自分が「見た目ぴんぴんしてるけど、実は手術が必要な病気」という、わかりやすい「外から見えないもの」と向き合っていたので、なおさら、そう思った。自分だってこうなんだから、周りだって、そうなんだよな。

少し時間が経つと、あきらめのような気持ちに覆われた。すべからく、永遠に続くなんてないんだよな、この世に。そう思うと、兄弟それぞれから発信されたコメント・・・コメントというにはあまりに長い「文章」に対して新たな気持ちが湧いてきた。

いろんなバンドが解散とか脱退とかしてきたけど、本人からこんなにも明確な説明があることって、稀じゃなかろうか。これ以上、どんな憶測も意味がないほど具体的に、弟は説明している。兄は、弟に比べると短い文量ながらも、こちらもまた過不足ない説明をしている。

一点の曇りもない文章。「解散」でも「活動休止」でもない、「泰行脱退、兄がのれんを引き継いでいく」という形。「新作アルバムのツアー最終日を持って脱退」という、これまた明確な区切り。これだから「裏切られた」なんて気持ちにならずに済んだんだよな。すごい誠意と責任感だ。さすがはキリンジ、ものすごいけじめのつけ方をするもんだな、と、妙な誇らしささえ浮かんでくる。

それに、どちらもミュージシャンとしての能力はじゅうぶん。実績も十分だから、これからだって彼らから上質な音楽が届くのはほぼ間違いない。

でもさ、やっぱり。兄の曲を弟が歌うの、好きだったんだけどな。それが聞けなくなるんだな。今は、そんな淋しさが徐々に募ってきているところです。