『大奥』 8巻

大奥 8 (ジェッツコミックス)

大奥 8 (ジェッツコミックス)

なんかいつもより高い・・・?て思ったら、いつもよりかなり分厚い印象でびっくりしました。12月には9巻も出るんですよね。よしながさん、おつかれさまッス!(最敬礼)

第一巻で物語の幕を開け、剛毅果断な若き女将軍として読者を虜にした吉宗。そこから一気に遡った物語が、女将軍たちを一代ずつ描き、再び吉宗の治世まで戻ってきて、「没日録」によって男女逆転の日本ができあがるまでのすべてを彼女が知ったのが前の七巻である。それによって何かが大きく動くかと思いきや、この巻ではその吉宗も老いて死を迎えた。相場や百姓一揆などの問題を残して去ったのも史実のとおりなんだけど、読み終わって、はぁー、と大きく息をつく。前巻ラストに福姫=家重が衝撃的な登場を果たした段階で、物語がそう簡単に終わらないことは予想されたのだが、はぁー。まだまだ続くんですね。

もちろんこれまでに、家光も、綱吉も死んでいたわけなんだけど、吉宗も、とは。でも、この物語の「歴史に対する個人の無力さに例外を認めない」ところが好きなんだよな。

家重のいじらしさ、哀れさに胸が詰まる一方で、苛々もする。思えば家光も綱吉もそうだった。ひとりの人間の中に同居するさまざまな面、年齢とともに変わるところ変わらないところ・・・よしながふみは女将軍たちを通じて、そういうものを絶妙に描いている。

今回の家重が、母の前で漢詩をそらんじてみせ、それを受けて「次の将軍はそなたじゃ」と涙を流す吉宗・・・あの場面は今巻の白眉。そして、温和な顔をしながら、柳沢吉保、間部詮房と同様、いやそれ以上に、主のためならエンヤコラ〜で手を汚しまくっていた加納久通の死を前にした告白の場面もだね。このとき、縁側に並んで座るふたりが言葉少なで、蝉の声や蜻蛉の姿が静けさを際ださせているのとか、登場した平賀源内の旅姿とか、そういう絵、コマ割を見るにつけ、この人、時代劇が好き(ですごく研究して意識的に描いてる)なんだろうな〜と思う。

登場した田沼意次は、忠義者ではあっても、これまでの「主スキスキ」側用人とはちょっと違うタイプでまた面白い。なんか毎回書いてるようだけど、12代の家斉の子供50人をどういうからくりで描くのか、そして傑物の天しょう院(男)と絶世の美女かつ切れ者かつ欠陥人間だろう慶喜の姿が、楽しみ。