2012 ロンドンオリンピック: 8月4日 【陸上】

●男子100m予選: スタジオの為末大の事前解説がわかりやすい。

  • 「ボルトは、もともとジャマイカ気質でいたずらっ子という感じだったのが、最近はちょっとまじめになってた。今大会ではのびのびやってほしい」
  • 「ボルト包囲網という形。ただ、ジャマイカ選手権ではブレークに負けたが、本人は大会前に、条件さえそろえば9秒4台も出せると言っており、直前の大会を欠場したことも含めて(公式には怪我によるものといっているが)、これは、五輪での記録を狙っているということでは」
  • 100mはボクシングでいうとヘビー級。そこに日本人が二人もいるのは非常にうれしい」

ガトリン速い。初めて見る。ゲイも良い。朝原さんいわく、「今期は伸びが良くなり、復活という感じ」とのこと。

江里口は予選敗退。しかし彼も日本のエースとしての自覚が強くなったのか、直後のインタビューに対するしっかりした受け答えが印象的。初めてのオリンピックの感想を聞かれ、「スタンドが満員なのがすごい」と答えていた。そうだよね、日本選手権どころか、世界陸上でさえそんなことはないもんね。「この中でラウンドを重ねて、戦っていきたい」

さて、この江里口は朝原がコーチしている直接の教え子でもあるんだけど、「スタートは良し、その後の加速も良し。ただコース両隣が同レベルの選手でずっと並んでいるのが走りにくく、つぶし合いになった」とレース直後に冷静な分析。良い先生だなと思う。

もうひとりの日本人、山縣の走りは初めて見た。慶応大の2年生。スタートラインで名前をコールされ、笑顔で挙手して答える姿がすごく自信にあふれていて、朝原さんも「いい顔してますね」と。そのとおりのナイスランを見せ、打倒ボルトの最右翼であるブレークに続いて堂々の2位で予選通過! すばらしい加速だった。マイペース朝原さん、レース途中、アナウンサーの実況にかぶせるように、すでに「あ、いいですね。これはいい。すばらしい」と絶賛。ブレークももちろん速かった。絶好調という感じ。

ほかの組では、アメリカのベイリーが9秒88の自己新。アサファ・パウエル(この人、大きな大会ごとに髪型が違うんだけど、今回はなんと顎に妙ちきりんなちょび髭をたくわえていた。こういうときに、織田さんがいてくれたらと思う…!)も1位通過。

そして4組にボルトが登場すると、スタジアムはとても予選と思えない熱気に包まれる。「(観客に)ただ勝つだけでは許されない、記録を望まれているという重圧はあるだろう」と朝原さんは慮る。肝心の走りについては、走り終わった直後、「あー、これは、まったくわかりませんね」。この、解説の立場を忘れ去ったかのような一言にアナウンサーがあわてて詳細を促すと、「スタートの反応がよかったので、2歩目、3歩目からすでに力を抜いている。なので、今回の彼の実力とか、調子とかというのはまったく測れない」とのこと。北京五輪やその翌年のベルリン世界陸上では、予選や準決勝、手を抜きながらもアホほど後続をぶっちぎってゴール、という展開が多かったボルト。ゆえに、しろうととしては、2位とほぼ差がなくゴールという今回のレースにちょっと首を傾げたのだけれど、それだけで判断はできないのだな、と解説を聞いて思う。

●女子100m準決勝: 1組、ジーター1着、ブラウン2着。いきなり有力者ふたり。戦前、「ふたりが牽制し合って走るんじゃないか」と予想した朝原さんだが、実際はジーターがちぎった。2組、フレーザープライス1位、アリソン・フェリックス2位、バプティステ3位。アリソンもしかしたら準決勝で消えるんじゃないかと危惧してたんでホッ。予選に続き、フレーザープライスの走りがすばらしいと朝原さん絶賛。3組、オガグバレ1位、マディソン2位。予選で力を見せた選手はやっぱり強い。

●女子100m決勝: ファイナリストの8人を見ると、やっぱり全員“美しき猛者”って感じ。スタートラインですでに盛り上がる。レースは、観戦しているとひと目でフレーザーだとわかったんだけど、本人にはわからなかったみたいで、ゴールしたあと不安げに掲示板を見つめ、勝者が自分であることを確認してから飛び上がり、転がって喜ぶ姿がとってもかわいかった。この人、別に美人ってわけじゃないし、若いのか老けてるのかも判然としない顔立ち(失礼)なんだけど、なんかすごくキュートなのだ。

朝原さんは彼女の走りを「剃刀のよう」だと言う。他選手と比較しても低い体勢のスタートから、ものすごく自然に上体を上げてきて加速すると。また、「前哨戦でも全勝というわけじゃなかったけど、ここ一番という大会にピーキングしてくる才能がある。勝負強い」と絶賛。

前年のテグで初の世界女王となったジーターは、オリンピックで戴冠とはいかなかったけど、納得の笑顔という感じの銀メダル。3着にキャンベル・ブラウンが来たのは正直びっくりするぐらいで、この人もう、かなりのベテランですよね? 相変わらずの強さ。

みんな大好き麗しのアリソン・フェリックスは、200が専門だからむべなるかなといったところだけど、それにしても抜群に悪いスタートでレースを始めた(笑)。けれど後半、伸びる伸びる! あれよあれよというまに5位まできてびっくり。しかも自己新だったよー! 4位はアメリカの新星、マディソンで彼女も自己新。一時期ジャマイカに押されてる感があったけど、やっぱりアメリカも層が厚い。1位から5位まで全部ジャマイカとアメリカ。

●男子10000m決勝: 男子1万といえば、エチオピアの皇帝ケネニサ・ベケレなわけですよ。アテネ・北京と五輪を連覇し、2009年ベルリン陸上でも戴冠。それも、ただ勝っただけじゃなく笑っちゃうほどぶっちぎっての圧勝、完勝。小柄ながら、澄んだ目が印象的、非常にクレバーな風貌の皇帝であった。しかし、けがで2010年は休養、2011テグ世界陸上はというと、レース前半で棄権…。果たして今回はと思っていたら、負けました。4着。終始4−5番手という絶好の位置につけていたので、ラスト1周のゴングが鳴ったとき、期待したんだけどねぇぇ。

勝ったのは地元イギリスのファラー。確かにこの人は有力選手だが。で、2着にアメリカのラップ。いや〜、朝いちばん(5時15分スタートだった)から、びっくりの結果だった。なんせこのトラック長距離といえば、アフリカ勢の独壇場。英・米のワンツーフィニッシュを見ようとは。3着に、エチオピアのベケレはベケレでもタリク・ベケレ。ちなみに、去年の世陸で戴冠したエチオピアのジェイランは、今回出場もしていない。怪我かもしれないが、それがエチオピアの層の厚さと言われれば納得だ。

●男子走り幅跳び決勝: 盛り上がってた。それもそのはず、イギリスのラザフォードが優勝争い、そして優勝。しかも8m31の記録はぶっちぎり。地元選手って応援もすごいけど重圧もすごい中、立派だった〜。てか、この日、イギリスって18個(むろん陸上以外も合わせて)の金メダルを獲ったってほんとかい? 2位はオーストラリア、“私のイケメン”ワット。3着も有力のクレイと、終わってみれば順当な結果なのかな。

●女子七種競技決勝: こちらもイギリスのエニス選手が順当に優勝! 小柄な美人さんなのでとっても覚えやすくて世界で大人気です。ポイント制なので、それまでの種目ですでに大差がついていたら、最後の種目・800mの1着でない人が感無量のバンザイでゴールしたりして面白いんだけど、800が得意なエニス選手は、1着でゴールしてしまいました〜。ちぇっ、なんてね。エニス選手うれし泣きしてたわ〜。泣いても美人は美人。

●女子棒高跳び予選: この種目と言えばもちろんロシアの美しい女王イシンバエワ。しかしアテネ・北京を連覇し、世界記録更新28回という女子では未曽有の記録を打ち立ててきた彼女も、2009ベルリン、2011テグでは惨敗。20代の終わりから苦しむことも増えてきた。とはいえ30歳、ベテランとはいえこの種目ではまだまだいけるはず! ということで今回もなかなか跳ばない(低い距離はパス続きだから)美しいエレーナ姉さんのジャージ姿に萌え〜。

4m50、4m55を1回ずつでクリアというのは予選トップ通過。どちらもじゅうぶんに余裕のある跳躍だったんだけど、解説によると「4m50はいい跳躍。4m55は彼女の悪い時の跳躍だった」という。ただし、悪い跳躍が一概に悪いというわけではなく、それを決勝までに修正するきっかけになるという。跳躍では、同じ高さの記録に複数選手がいた場合、跳躍回数が少ないほうが順位が上になるのだけど、やはり回数をこなすことでつかめてくるものもあり、非常に難しい天秤だ。去年のテグ女王ムレルは予選落ち。

●男子400m準決勝: ベルギーの双子、ボルリー兄弟が難なく予選突破。こいつらまた一段と速くなったような。昨年テグで十代の新王者となったジェームズも超速い。おなじみのラショーン・メリット(アメリカ)は怪我?で途中棄権。

●女子400m準決勝: こちらも、アメリカのサンヤ・リチャーズ、ボツワナのモンショーといった有力選手が速いのなんの。サンヤもアリソンと同様、大きな大会のたびに麗しいお顔を見るのが楽しみな選手です。

●女子3000m障害予選: いつもはトラックの外側にせりだして作ってある水濠が、今大会、トラックの内側に作られています! えーっと、距離は3000mでまちがいないんですよね? スタートやゴールの位置がふだんと違うのかな? この種目の第一人者、ガルキナは伸びず、着順ではなくタイムで拾われた形での予選突破。ハードルと水濠とでリスクも高いこの種目、今回もポルトガルのクルズ選手が序盤の団子状態で転倒するアクシデントあり。この人、うまく避けて二次災害を防ぎ、しかも猛然と追い込んで来たんだけど、最後本当にあと一歩及ばず予選敗退。