第4回AKB総選挙

去年のあっちゃんのように、ドキッとさせられるような言葉を聞けるんじゃないか、と期待して、選抜メンバーに入るという16位くらいから我慢して(笑)みなさんのスピーチを聞いてたんですけど、残念。今年はほとんど琴線に触れなかった(個人の感想です)。

ていうか、おばさん、3人分くらい聞いただけで胸焼け…。壊れた水道管みたいに涙をだーだー流しながら、練りこんできた言葉を語る皆さん。もちろん、それは心からの涙なんですよ。言葉には、彼女たちの魂がこもっているんですよ。神様にも母さんにも誓って、ガチなんですよ。

しかしねー、こんなにも自我が前面に押し出され続けるのを見るのは、フツーの(冴えない)大人であるところの私には、きっついわ。重いのよ(と、大河ドラマには、あれだけがっぷり四つで組み合っていながらこんなこというのもなんですが)。

この重さ、この必死さ、この涙と叫びと残酷さとがAKBの真骨頂で、熱心なファン以外、免疫がない大人は、こういうものはこういうものとして泰然と受け止めるか、チラ見してふーん、くらいで済ますのが賢明なんでしょうな。彼女らがどんなに一生懸命だからといって、それを「美しい。すばらしい」と手放しで賛辞することはできないし、「単純に面白いってことでいいじゃん」とも言えないもん。今回、テレビで中継したことで、なんか今までになく、このシステムの歪み、みたいなものを感じさせられたよ。ぐったり。

言葉に関して言えば、まず、長いんだよね。ファンにとっては短いくらいなのかもしれんけど。せめて、ひとり90秒くらいで語ってくれないかな。みんなそれぞれ「らしい」ことを言ってるんだろうけど、「感謝を、ユニークさを」って事前に一生懸命考えてきたのが透けて見えるようなのも、ちとつらい・・・。そんな努力を惜しまないところが彼女らの素晴らしさなんだろうけど、いかんせん、部外者の心臓を撃ち抜くような言葉は出てこない。「ああ、若くてがんばってる女の子が言いそうなことだな」っていう感じ。

やっぱり、「(2位になった去年から)1年間、こんなに皆さんが応援してくれているのに、どこかで孤独と闘いながら、毎日過ごしていました」「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください!」なんて、あれだけ泣きながらも言ってのけたあっちゃんには、けた外れの訴求力があったね。

それに、「ありがとう」「感謝でいっぱい」「こんなに応援してもらってる」「だからがんばらなくちゃ」「順位はさておきみなさんの愛がうれしい」。乱舞する言葉たちを聞いてると、正しくて前向きなのに、なんだか逆に不健全に聞こえてくるんだよね。

確かに、愛されることは大事、“ほかの誰でもない自分”という自尊心も大事、でも、同時に、「自分自身なんて取るに足らない存在」っていう意識も、人間にはある意味、必要ですよね? 国民的アイドルとはいっても、トップ10以下くらいになると、国民的知名度なんて微々たるものじゃないですか。そういう、「いつ普通の女の子に戻ってもおかしくない」多くの若い娘さんたちが、肥大した自意識に支配され、「ちっぽけな自分、そのすばらしさ」という感覚をまったく置き去りにして年を重ねていくことを思うと、なんとなく嫌な気がするんだよなあ。


気をとりなおして、まだ自分の順位が確定していないメンバーが、次々と順位が発表されるのを座って待ってるときの顔は、みんなすごくよかった。あれぞ、ガチの顔だった。2位の渡辺さんの名前が呼ばれた瞬間の大島さんはむしろ悲しいくらいの顔に見えた。今のAKBの1位という重みを知っていて、それに耐える覚悟はできているけど、でもやっぱり震えが止まらないわ、って感じの顔。でも、1位で名前を呼ばれたら、振り返ってすっきりとした笑顔で力強く両手を上げる。見応えのあるシークエンスだった。

そして栄えある1位のスピーチが今まさに始まった…ってところで、驚異の間の悪さで登壇する、あっちゃん with 花束。もちろんこれは、間もなくリミットとなる中継時間内に、是が非でもあっちゃんと優子の抱擁を映さなければならない局側の都合なんでしょう。で、優子さんのスピーチは途切れてしまいました。んもう、バカー! うまくやれよ、フジテレビ!

で、あとでネットを見ましたら、優子さん、「この景色がもう一度見たかった」と言ったとのこと。これはいいフレーズ。あの、1位で名前を呼ばれた瞬間の万感こもった顔と、ぴったり一致する言葉です。そして、「みんなを見てて、AKBに限界はないと思った」「今日の優子はキラキラしてる。オーラというのはこういうことなんだと教えてもらった」というあっちゃんの言葉も、今日の白眉です。さすがだな。この人がここ一番で言うことには、つねに抜群の臨場感があるんだよな。

あと、印象的だったのは、高橋みなみさん。AKB全体のキャプテンである彼女の性質が、AKBというシステムをがっちりと下支えし、それどころか強化さえし続けている…という秀逸な論をネットのどこかで読んだ。そのとおり、彼女のスピーチはまさにスポ根(死語ですか)。話してる内容っていうより、話し方、語り口が印象的だった。平忠盛ふうに言うと(笑)、「心の軸が定まっている」人のしゃべり方だった。

去年もこの選挙の記事、書いてたわ、私(笑) →去年の記事