『平清盛』 第18話「誕生、後白河帝」

帝の病気快癒のため、護摩壇を焚いて祈るシーン、なんか絵がすごくよかったです。画面が汚いとかなんとかいいますが、これほど目でも楽しませてくれる大河ってそうそうありますかね。

近衛帝はかわいそうでした。まだ童子髪を結っていたころに、高御座(たかみくら)って言うんですかね、玉座に座らされて、むにゃむにゃやってた子ですよね。あのシーンで何が印象的だったかって、あの子、目を閉じてたよね、あのとき?! 見えなくなる、ということをふまえての演出だったのかどうか、気になります。当時の日本で、死は誰にとってもすごく間近にあったものなんでしょうが、あのかわいい子が、病気がちで、それがもとで目も見えなくなって、17歳で亡くなるって、少ない描写だったけどほんとかわいそうでした。

そんなお気の毒な少年帝だったんですが、周囲はもちろん今後を見据えての政局争いです。「不謹慎ですぞ。まるで帝が今にもはかなくなるかのような言い方」なんて、余裕たっぷりに藤原忠長を制した信西、おめーがいちばん黒いから! 実際、顔もだんだん黒くなってきてるよね。まあそんな信西も、雅仁親王の前ではまったくペースが頼めません。

「ちょっと青墓に行ってくる」と、雅仁さん。青墓ってゆかしい地名だな、と思って見てたら、岐阜かよ! すげー長旅だな! 芸事が盛んらしい…ってパントマイム? ロボットダンス?! こういうところでいかにも古式ゆかしい芸を見せるんじゃなくて、思いきって前衛的に見せるのもこの大河らしいですね。雅仁や聖子が歌う「遊びをせんとや〜」も、アフレコ感がなくてgoodです。

…って、なにげに聖子が再登場してるし〜〜〜! いやー聖子。祇園女御時代にしろ、乙前にしろ、さすがのインパクト。大河ドラマには創作人物がつきもので、なんとかおいしく使おうとはするものの結局つじつまが合わなくなったりして尻つぼみなまま消えていく人が散見されるんですが(笑)、今回の祇園女御=乙前は、謎過ぎる人物ですから!という開き直りですね。なんで祇園女御が乙前になったのか、祇園から青墓に引っ込んでるのか、あそこで毎日ひとりディナーショーをやってるのか、年はいくつなのか、その辺は説明しないぞ、と。とにかく謎なんだ、なんでもありなんだ、だって聖子だもん、と。そして、ありえないことにこの大河では浮かない聖子。すばらしい!

この青墓シーンのすべてが、筋を説明すればナンダソレ状態なんだけど、異世界なイメージが前面に押し出されてたので、見ている分には面白かったのです。ここで雅仁が覚醒する、という説得感がありました。何より、初対面のおばちゃん=聖子に泣きついて膝枕してもらう雅仁を空撮した絵が美しすぎて。清冽な緑の林と、聖子の紅白のあでやかな裳裾と、若い男。絵が、美しすぎて(大事なことなので、もう1回言いました)。生臭い現実にまみれ政争に明け暮れる都と、不思議に美しく傷ついた中2魂を癒す青墓。鮮やかな対比でした。

一方、「帝のご容態、芳しからず」がさんざ繰り返されていた都では、ついに崩御された少年帝の跡目をめぐり、治天の君鳥羽法皇を中心にドス黒い欲望に満ちた高度な政争が……って、え? 「朕は、上皇(崇徳)に謝りたい。ふたりで手を取り合って政を行っていきたい!!!」って、鳥羽タン、めっちゃヒューマニズム支持者になってるじゃないですか〜〜〜。

この、“毎回ごくろうさまでございます”な力の入りようで鳥羽タンが滔々と演説したあと、それまで喧々諤々だった群臣たちが、その迫力にみんながシーンと静まり返るのに、「恐れ入ってございます」と明らかに口先だけで受けて、「甘いでしょ。今さら謝ったって許してもらえないでしょ。それどころか、上皇方に帝位を渡したら、天下大乱(←サダヲ、この言葉好きだよな)になりますよ!」と、例のシャキシャキしたセリフ回しで答える西行のくだりが、すごく面白かった。毛色の違いすぎる役者たちの競演。これぞ大河です。

サダヲ西行にしてみたら、こんな評定、屁でもないのです。最強の女・得子は愛息の死で臥せっているし、最大のライバルたる悪左府を表情の場から締め出すことに成功しています。「服喪中=聖なる御所には入らないでください」という理由づけの理にかなってることに満足して去っていく悪左府さん。ここも脚本がうまくて唸ってしまいました。規則・道理こそすべてという己の理念にがんじがらめになって破滅していく、と。そして、「妻の服喪」が理由で暗転していく、という運命の皮肉! 「妻もいたんかい!」という全国の視聴者のツッコミが私の耳にもコダマしていましたよ。おお…奥様も家盛さんも、成仏して…

で、もともと罪の意識に苛まれていた鳥羽タンを焚きつけて鳥羽−崇徳間の和平工作に乗り出していたのが、我らが清盛です。この、「みんなで仲良くしようよ〜」ってノリが、いかにも学芸会の主人公じみててちょっとイヤなんですが、まあそこは少年漫画のヒーローですからね。それに、清盛自身、孤独感には人一倍敏感ですから。

しかも、エア矢で打ち抜かれた一件もあり、基本的にピュアな鳥羽タンは清盛の説得にあっさり応じるのですが、ダーク西行(や、最強時の得子さんや、妻が死なずに評定出席ができた場合の悪左府さん)には、そんなもんは通じない、というのもいいですね。なるほど、法皇にも上皇にも頼りにされる清盛だけど(それで雅仁タンがおかんむりでしたwww)、まだ最高会議に出られる身分ではない。そこが、現在の清盛の限界なのです。悪左府さんじゃないけど、理にかなってます。

清盛といえばアンチヒーロー、という先入観を裏切って、このドラマでは、清盛を一番ヒューマニストに描くというわけですね。主人公ですから、当然っちゃ当然です。でも、もののけの血も確実に入っている、と。そこが、どう影響していくのか。

最高会議といえば、良識歯、じゃなくて派だった家成さんが亡くなってしまいましたぁぁぁ。良識歯、じゃなくて派の佐藤二朗がものすごく新鮮で、出るたびにいい味出してましたよね〜。宗子さんへのプラトニックな思いを一度にじませつつも、彼女を困らせることはなかったオトナな家成さん。元服の加冠役で言った清盛への嫌みも「野良犬の遠吠えに今や朝廷みずから耳を傾けるようになった」とキッチリと回収。回収、命です!この大河は。

話はもどって、そんな最高会議のころに対面した清盛と雅仁。「遊びをせんとや〜」と口ずさむ雅仁に「なんですか、その歌は?!」とうろたえる清盛が激しく違和感でしたが(こちとら耳タコだっつーのに、おまえ、知らんかったとや?!というwww)、アラサーにしてやっと覚醒した中2キャラふたり*1が相まみえるという良いシーンでした。同じライバルでも、義朝とのシーンはどこまでも悪ガキ同士のノリなのに、雅仁とのシーンはいつもすごい緊張感なんですよね。ライバルっつーより、宿敵感が出てます。

そうしてついに、高御座につく雅仁親王=後白河帝!!コーフンでした。あ、そのあとの崇徳院の転がりようもすごかったです。ついでに、お付きの教長=矢島健一まで目を剥いて転がってたもんねwww「皇太弟」騒ぎのときもすごかったけど、この人、これからまだまだ受難があろうに、どこまでエスカレートしていっちゃうんでしょうか…?

後白河帝の誕生の経緯は、本当に高度で複雑な政争の結果だと思うんですけど、鳥羽タンの謝罪宣言と、雅仁の不思議の青墓ランドを交えて、非常にメリハリある、わくわくさせる作りになってたと思います。人間ガンダムこと源為朝も出てきてました! 次回も楽しみ…って、イヤーッ。鳥羽タンがぁぁぁ!

*1:ある意味、清盛以上に中2丸出しだった雅仁にちゃっかり子どもがいることに、最高会議で驚愕した視聴者も多いはずだww