『平清盛』 第13話「祇園闘乱事件」

前回ラスト、頼朝のナレーションにもあったとおりこれは実在の事件であり、どのように描くか楽しみにしていたんですが、うん、面白かったです。でも、あれれ?と首をひねったところもあり。

あ、アバン前の「今日のみどころ」が、単なる背景解説っぽくなってた。試行錯誤の末、おさまるべきところにおさまった、って感じ。いいぞいいぞ。自然になりました。

本編ですが、まずね〜、結局、清盛がなぜ神輿に矢を「わざと」射かけたのかよくわからない。ちなみに、作中で何度も使われていたけど、「わざと」って語彙がこの時代世界とミスマッチな気がしていちいち気になった。「故意に」と言い換えるのもちょっと違う気がする…「意図して」か、あるいは「己が意で」じゃダメだったか。まあ小さな問題だけど。

発端となった郎党と祇園社の神人との小競り合いを、兎丸うんぬんの創作エピソードにしたのは面白いと思った。んで、忠盛が下手人を検非違使に引き渡したのは史実(とされている)だよね。清盛は彼らに「すぐに助ける」と言った。

その「助ける」ための手段が、神輿に弓、だったというのか? 忠盛が言うところの“あてにもならぬ迷信”なんてまったく信じない、という精神を清盛がもっていることはわかるが、当時の一般常識からいって、それをしたら火に油を注ぐどころか、平氏の存続にまでかかわる問題に発展するのは容易に想像できること、この時点でそれがわからないほどのおバカ清タンではないはずだ。

御神輿ワッショイして我意を通そうとする手合いにムカついていたのか、なんらかの戦略、勝算があってやったのか、鳥羽院平氏をかばってくれるという確信があったのか、うーん、どれも違う感じ。見た感じは、単なる衝動、っていう雰囲気だったけど、そういうことでいいのかしら。だったら、「オバカさんだけど結果オーライを導き出す強い運を持った子」ってことになるけど、それでいいのかしら?

忠盛さんの反応もイマイチよくわかんない。平氏の棟梁として、みんなの手前ブン殴ってはおいたけど、蟄居の場での「わしはこの日を待っておった、おまえがろくでもない迷信に立ち向かう日を」って、そこまで言う〜? 

そら確かに舞子さん譲りの迷信レス精神を見せられたのはうれしかったと思うよ、それはよくわかる。明子タンが死んだときに取り乱しまくる清タンに「もののけ白河院の血」を見てしまった忠盛としては、舞子似の部分にホッとしまくるところだよ。白河院陰陽師の言うことを信じて舞子を追い詰めた人だったからね。

しかし、状況的にはほんとに流罪になっちゃうかもしれないところだよ〜? 一門が路頭に迷っちゃうよ〜? どいつもこいつも、戦略や勝算や確信があるんだかないんだか、その辺がわかりにくい見せ方で、もやっとしちゃいました。

そして極めつけは鳥羽院! さんざん悩んで迷って、本人に聞いてみて、それで「わしを射てみよ」ってm9(^Д^)プギャー  どういう飛躍だ。そしてそのリアクションの良さ! 

や、もう、面白すぎて。ここまでされては、口をあんぐり開けて「参りました」というしかありません。いろいろ書いてきましたが、まとめると、今回、話の説得力はちょっと弱いと思ったんですが、しっかり楽しんだでやんす。強引。だけど面白い。

獄の前で「すぐに助ける」と言う清盛はかっこよく、神輿に弓を射かける所作も(鳥羽院にエア射する所作も)かっこよく、蟄居する清盛に着替えもなんもなく双六だけを差し入れる時子ちゃんは面白く、それに怒りつつも、ヒマさのあまり、しょうがなくそれで遊ぶ親子(そして勝ちまくる清盛)も良かった。あ、最後、清タンが時子にかけるせりふは、「心配をかけて悪かった」は省いて、「よくこらえてくれた」だけにしてもらったほうが好みだった、ワタクシ的には。しかし、あのシーンで涙を浮かべている時子タンの美しかったこと〜! 

叔父さん忠正のエピソードも、フラグだと思いつつホロリと来るわ。あの人、全然意地悪じゃないんだよね。むしろ人情派。心底すまなかったと思って時子に謝りに来て(でも、清盛嫌いなのは本心のくせに、そこはどう取り繕うつもりだったのか?)、清盛の幼子たちと遊んであげて、「血のつながりなんてそんなもん」なんてことも、本心で言っちゃう。どうしても清盛を受け容れられないのも、でもその妻子までは憎みきれない人の良さや、兄・義姉・甥っ子大好きな情の深さも、すべてひとりの人間の偽りない性質…ってのを演じてめちゃくちゃリアルな豊原功補です。

院御所まわりもおもしろかった。評議の場、上座の鳥羽院は議長的で、流罪推奨派(藤原忠実、頼長)と忠盛親子擁護派(藤原忠通、家成、そして信西」が左右にわかれている。それぞれの言い分にそれぞれのスタンスがはっきり見えて、短いながらも見応えのあるシーンだった。今後の布石でもあるよね。

しかし、信西っていつのまに、あの最高評議会に列席できるほどエラくなったのか? 自分の意見が容れられなくてクサクサして出家したんじゃなかったのか? その時点で、頼長とは決裂していた…というか、頼長は、信西の見識には一定の評価をしていたものの、身分が違いすぎるってことで、ハナから信西なんてアウトオブ眼中じゃなかったのか? 「出家したけど俗世でがんばります」と宣言する信西、それは出家するときから織り込み済みの戦略? なんか、出家ってふつうは俗世を捨てることだと思うんだけど、出家したことでむしろ政治参加へのメリットを得たような信西の口ぶりもちょっと謎で、この辺、もうちょっとうまく説明してほしかった。

鳥羽院のメイクがだいぶ変わってる。マイケル・ジャクソン的じゃなくなった=人間的になった。たま子タンといまわのきわに心通じ合って、かれもまた人間化したということか。でも白河院のことはまだ怖いのね。そのことを打ち明けられた得子さんが何らかのアドバイスをした…かどうかは、来週以降に明かされるのかしら? 

あ、鬼若の青木崇高。予想どおり、すげーいい味出してた。めっちゃ強そうだけどめっちゃおつむ弱そうで。でも、この物語における弁慶って、役柄的にどれくらいの重さがあるのかしら? 青木さんは大事に使ってほしいのよ…。来週は早くも常磐御前登場みたいね。どんどん、つぎこんできますなあ。つーか来週の予告…頼長…! 家盛、逃げて〜〜〜!

視聴率が低迷しようが、自分の視聴意欲にはまったく影響ないんだが、良くも悪くもマスコミに報じられる機会の多い大河ドラマであるから、作品の中にその影響が出てくるのがすごく心配。今回、忠盛や鳥羽院が、やたらストレートに清盛を持ち上げるセリフを吐いたのも、もしかして、わかりやすくするために脚本に手を入れてるんじゃなかろうか…と穿った見方をしてしまう。そんなことしなくても、私から見たら松ケンは十分かっこいいのに〜!