2012世界フィギュア@ニース・男子

男子FS、すごい試合だった! 

羽生選手の演技がものすごくて、いつにもまして荒ぶるロミオを演じる彼は、観客の目なんて何ひとつ気にかけていないかのように自分(ロミオ)の世界に入り込んでいるのだが、それを見つめる会場の熱狂。ちょっと異常なくらいだった。途中、勢いあまって両膝と両手をついて転倒してしまうシーンすらドラマティックで、さらに大きな拍手が彼を包み、さらに悲壮感を増した彼(ロミオ)は直後にトリプルアクセルトリプルトウループのコンビネーションジャンプを決める。鳥肌が立ちっぱなしで、最後のステップの入り口の咆哮でゾワッ、くるりと振り向いて膝をつく振付でゾワッ、最後のロミオ死んじゃった〜〜〜の決めポーズでゾワッ、直後に人差指を立てた右手を高く突き上げて宙をにらむ三白眼にゾワゾワッ、もうっ気持ち悪い、だけど気持ちいい! ってな変なところにまで連れて行かれちまった。

やんややんやのスタンディングオベーション、憑依が解けたかのように破顔する18歳の少年、そしてこらえきれずティッシュをどばっと引き出して涙を拭う阿部奈々美コーチにもらい泣き。

うーん、彼はこれからいったいどうなってしまうのか。ロミオ(SPもそうだが)は間違いなく男女通じて今季5本の指に入る名プログラムだったと思うのだが、若さ青さがかもしだす魂の叫びのような荒々しさが、このプログラム、今の彼の大きな魅力になっている。てらいなく己のすべてをさらけだせるような表現者たりえることと、もちろん高い技術で、これからも彼が活躍し続けるのはほとんど必然だ。でも、3年後、いや2年後でさえ、彼がどういうプログラムでどんな演技をしているのか想像がつかない。それぐらい、まだまだこれから成長するスケーターだと思う。すでに世界選手権でメダルを獲ったのに!

もちろん、このまま毎年勝ち続けることができるほど、世界は甘くないと思う。それでもこの唯一無二の人がどういう方向で大人になっていくのか…ううう、おそろしいほどの才能と個性である。

で、その熱狂の後に出てきたサミュエル・コンテスティが、これまた自己ベストなパフォーマンスをして会場大盛り上がり。彼の笑顔での演技は見ている人を幸せにする。イタリア代表だけどフランス生まれなんだそうで、事情は全然わからないんだけど、すべての選手がいろいろな来し方、思いを抱えてこの場所に立っているんだなあと思う。

ほかにも、総合で4位に入ったブライアン・ジュベールと5位のフローラン・アモディオのふたりのフランス代表、6位のミハル・ブレジナなど、地元ヨーロッパ勢の健闘に当然会場は大きな声援を送っていました。アモディオのFS、何度見ても笑える。あの曲の構成は何。彼がブラジル系だってことはわかってるけど、荘厳な調べに乗って滑っているのに見入っていたら、いきなりサンバで踊り狂うんだもん。しかもそれが2ループ。唐突過ぎておかしい。しかし、そこも含めて愛すべきスケーターなんでしょうね。デニス・テンの当たりの柔らかい演技や、ケヴィン・レイノルズの、その在処を説明するのが難しい魅力も印象的でした。

で、欧州勢だけじゃなく、羽生君もそうだし、次の高橋選手の演技でも凄く盛り上がるところに、ニースの観客のフィギュアスケート愛を感じた。ま、日本人の観客もたいがい多かったけどね。ついでにリンクのスポンサー広告にも日本企業の多いことでした。好演技続出のプレッシャーで、自分も金メダルが手に届く位置につけていて…という状態であの演技ができる高橋大輔はやっぱりブラボー。表現力、演技構成という点では折り紙つきの彼だが、技術点でもチャンにほとんど見劣りしない(ちなみに羽生君は今回、技術点チャンより上だった!)ってところが頼もしい。男子シングルの華ですな、彼は。振付のカメレンゴ先生もニースまで来てたが、あの人、ほんっと大輔大好きだな。ステップが始まるときの盛り上がりっぷりに和んだ。

んで、チャンはやっぱり優勝なんですよ。今大会、SPでもFSでも爆発的、とまではいかなかった彼だけど、あの確立されたスケーティング技術が一朝一夕で衰えることはないもん。FSでのあの美しい4回転×2。4-3なんて、あの位置からあとのトリプルトウループ飛んで、なぜ壁に激突しない?! 上体が斜めになっても足が氷に吸いついている、つるーつるーとした滑り、あれが、一番の高評価、ISUの目指すスケートなわけです。いや〜、爆ぜるロミオやむんむん色気の高橋のあとでのアランフェス協奏曲…会場は静まり返ったね。や、これはイヤミではなく、まさしく王者の滑り、気品と貫録を感じたであります。あの衣装も含めて彼が王者(笑)。しかし今回、後続はチャンにけっこう肉薄したよね。

小塚選手はひたすら残念だった。全日本(何度繰り返してみたことか!)でのキレキレなSP、雰囲気たっぷりのナウシカ(ナウヒコ)を、ぜひワールドで見たかった。スケートはもちろん、被災地への応援についてもものすごく意欲的に過ごした彼の1年の締めくくりがこれだと思うと、勝負の世界は本当に残酷。でもきっと彼は前を向く! ちなみに去年のもうひとりのメダリスト、ガチンスキーはなんと18位。しかし彼もまたきっと…って、ロシアは来年1枠ですってオーマイ! プル様が帰ってきたらどーなるの?!

最後に、表彰式でのゆづるさんのかわいさはなんですか! んもうあの子はーーー!