『平清盛』 第6話「西海の海賊王」

「金かけてまっせ!」という事前の宣伝にも余念の無かった今回。パイレーツ・オブ・カリビアンとかワンピースとか、そんな揶揄する人があっても作り手は屁とも思ってないでしょうね。彼らは最初からそこに照準をあてて作ってるわけですから。「突っ込んでくれていいんですよフフフ」という余裕の笑みが見えるようだ。

(追記: 最後まで書き終えてから視聴率を知った! 13.6とかでがくんと下がってる。ひゃあ。作り手のみなさんモチベーションだいじょーぶですか?!)

ざんばら髪で口を血に染め、まさに血を吐くように己の苦悩を吐露しながら戦う清盛! ってのを見て拒否反応を示しておられる大河ドラマ通の方もいらっしゃって。いわく、「1年もやるドラマのこの段階で恥部をみずからべらべら喋るなんて! 安っぽい! 美学がない!」と。

でもね、うーん。武士道という概念もまだ存在しないこの時代、そういう「沈黙の美」じゃなくてもいいんじゃないかしら? むしろ、貴族なら男だって「袖を濡らす」歌とか平気で詠んでる頃だし、平家物語でだって平氏にしろ源氏にしろ、男たちは表立って泣いたり嘆いたり、相当してるよね。

同時に、この“「泣き喚きながら戦う」フォーマットを突っ込みつつ受け容れる”とか“敵が味方になるのは冒険活劇の基本だと思う”素地が、我々にはできているんだなーというのも感じるわけ。ガンダムというかエヴァというか。や、私はその両方ともを見たことがないんですよ。でも、それらに代表されるような少年漫画やアニメの様式が、こういうのを見ると思い浮かぶんですよ、現代人として。

つまり、少なくとも清盛の少年期において、少年漫画やアニメの様式を確信犯的に持ち込んでいるのが今年の作り手であって、それを「面白い」「新しい」と感じる人がいる一方で、「馴染めない」「好きじゃない」「許せない」「画面が汚い」wwという人がいるのは当然なんだよね。

私は全然いいと思ってる。あ、「全然」を肯定の意味で使うのは誤用じゃないぞ!っと。

王道、格調高いもの、中高年向け(ex.ジェームズ三木とか壽賀子とか)、少女マンガ、劇画調、世話物、伝芸寄り、ジャニーズ寄り、民放風、謎大河(ex.武蔵w)。今までだって、あまたの作風で届けられてきたのが大河ドラマじゃないですか。私たち大河ファンはその中のどれが好きか、っていうのを選ぶだけ。

だから、「好きじゃない」って感想は全然ありだと思うのよ。でも、「これは大河じゃない!」って言われるとちょっとね。表現の方法を「こうあるべき」って規定しようとしたら、大河ドラマは幅も自由もない窮屈なものになっちゃうよ。

そう、大河ドラマには未来がないといけない。であれば、思いきって若めの人のほうを向いて作った大河があってもいい。それに、今年の終盤もこの調子が続いているのか、そのころどんな作風になってるのかは、まだ全然わからないしね。

確かに、(戦争描写はおいといて)『坂の上の雲』みたいな正統派な大河を見たいなとも思うし、でもそういうのを作ってもあんまり数字ってとれないんだろうな、淘汰されていくのかな、と思うと淋しさはあるけども。

私が大河ドラマに求めるものは、登場人物が隅から隅まで生き生きしてて、人間関係が重層的で、老若男女、善も悪も光も闇も何でもかんでもぶっこんで、簡単に白黒つかなくて、長いスパンの中で伏線があったり因果を感じたり、などです。ほら、天地(ryとか江(ry…って略になってないw)とか、やたら人間が記号的で、起こることの解釈が一年とおしていちいち幼稚だったじゃないですかー。

そこへいくと今年はもう全然いいですよ。清盛は幼稚だけど「今はわざと幼稚に描いている」んだもん。パパ盛とか叔父正とかはちゃんと大人だもん。清盛のコンプレックスだって、あれだけグレるに足るもんだと思うよ。血族っていう価値観が支配するところで生きてるんだもん。学校とかSNSとかの逃げ場はないんだもん。もちろんパパ盛は棟梁たるにふさわしい器だけど、家来たちだって基本的に血を崇めて集まっているわけで。

兎丸が朧月の息子だと知って、「おまえのせいだーーーー!」と激キレし出す清盛でよかった。ここで「お前の父ちゃんを殺したのは俺の父ちゃん…」みたくショボンとする、なよなよしたパターンじゃなくて。

んで、先週、あっちもこっちも内部分裂しかけてた平氏一門は、結果的には清盛が暴走したことによって一致団結して敵を仕留めたように見えなくもなくて、そこで、かつてパパ盛が言った「清盛は平氏になくてはならない者だ」のセリフがまた脳裏に蘇ってくるんだけど、あの一言に、

  • 白河法皇から譲り受けた形の子で、むげにできないから
  • 「王家の犬で終わらない」というパパ盛の心の軸を作った存在だから
  • 「なくてはならない者」宣言をみんな覚えていて、清盛を忌み嫌う叔父盛でさえ、大事な棟梁の言葉ゆえ尊重しちゃう
  • 平氏の命運がかかった海賊討伐の成功に、結果的に清盛は「なくてはならない者」だった

という、様々な理由、意味が付与され続けていることに気づく。

しかも、だからといって、「清盛すごい! 運命の子!」みたいな持ち上げ方は、ドラマ中では全然しない。「海賊王になる!」なんてワンピースのセリフをパクッた兎丸のせりふをパクるという二重のパクり行為を、意気揚々として笑っている、頭の弱そうな、薄汚い御曹司を見て、「何、あれ」とドン引きするヒロインを引きにもってきて終わる。

あ、源平の御曹司の妻を同じ回に登場させる、ってやり方もニクい! 「最悪の出会い」的なのもいかにもマンガなんだけど、それぞれどうやってデレていくのか、見ものだ。去年は、恋愛脳大河だったくせにツン→デレ移行も最悪だったからな!

ラスト近くの松山ケンイチの笑顔が新垣結衣ちゃんのお兄ちゃんって感じに見えた。似てるよね?

高階通憲が己の志を語るのを聞いて、今は視聴者を和ませている「誰でもよい」「なんでもよい」の口癖の行き着く先を想像し、興奮。いいぞ、藤本有紀