師走の三

●12月某日: 昼間はおっぱい断ちするぞ!と決めて、昼食途中のパイ要求を拒む。怒りや悲しみやショックや不可解や、ありとあらゆる負の感情で、そりゃもう全身で号泣のサク。じゃ、好きなものをあげるね、ってことで昼食メニューを変更するも、もう“パイ以外は何にもいらない”状態になっていて、胸元からおっぱいに手を入れよう入れようとしつつ泣き続ける。歌を歌ってみてもダメ。くすぐってみても体をよじって嫌がる。そうだよね、パイ命だもんねー。相当たってから、抱っこしてる私の体に体をぴたっとくっつけてちょっと落ち着いてきたもようのサクに、「だいじょうぶだいじょうぶ、ママ、サクのこと大好きだよ。悲しいならずっと抱っこしとくからね。サクちゃん、もう大きいから、おっぱいなくても、ごはんいっぱい食べたらいいんだよ」と言い聞かせると、悲しげな目でひっくひっくしゃくりあげたり、また思い出してウワーンウワーン泣き声を上げたり。私が差し出すごはんも、一口食べては泣き、また一口食べては泣き。すんごいかわいそうだけど、すんごいかわいくもあり。

やがて、おなかがみたされてきたころに、夕方のEテレの時間になったので、テレビをつけると、気分転換にもなったのか食い入るように見ている。夕食の準備をしたりして、ちゃぶ台をふと見てみると、残りのごはんのお皿もほぼ空になってた。テレビを見つつ自分で食べたらしい。テレビ時間が終わってもすっかり元気になって遊んでる。そして、抱きしめてみても、もうおっぱいを求めてこない。うわーん、サクー! なんてけなげな奴! すったもんだで食べたの夕方だったのに、夜ごはんもけっこうもりもり食べたし、やっぱりおっぱい断ち効果は大きい? 

夫に昼間の経緯を説明し、「でも、夜、寝るときと、夜中起きたときは、まだあげるんだー。ああ、寝かしつけが楽しみ。早くパイあげたいよー! サクー! ママはサクが大好きだぞー!」と叫んでいると、「母親ってやつは・・・」て感じでかなり苦笑いしていた。待ちに待った寝る時間、ごろんとさせると、そこはやっぱりいつものように胸元を探るサク。久しぶりに差し出されたパイをぱくりとくわえ、目はぱっちり見開いて私の顔をじーっと見ながら、息継ぎもしないでまさに一心不乱に貪るその姿に胸がいっぱい。もちろん夫は大事なパートナーだが、この気持ちを真の意味では理解できないだろうし(説明もできないもんな)、サクだって、こんなにママのおっぱいが好きだった気持ちは、最後は跡形もなく消えていく(消えていかないと困るが)。母親って切ないな、っていうか、人間ってやっぱり究極的には孤独だな、とか、パイを飲み続けるサクをなでなでしながら考えたのであった。