『江』終わりました

オモロくないと思うんだったら見なきゃいいじゃん。それは至極まっとうで健全な意見なんだけれども、自分の場合、大河ドラマに関しては、けっこうな違和感やそれを通り越したがっかり感があろうとも、相当がんばって見ています。

1年という長いスパンだからこそ、ストーリー展開にしろ人物描写にしろ歴史の取り扱いにしろ壮大かつ繊細なものが見られるし、○年前は◇▲さんがやってたあの英雄を今度は◎×さんが演じる、とか、▽◆さんは、こんな大役をつとめるようになったのか〜、みたいな、重層的な楽しみ方をするのも好きです。年輪を増やせば増やすほど面白いから、多少我慢して見るってのもある。いわば先々までも楽しむための投資活動ですね。要するに大河ドラマは、私にとってのブランドなんでしょう。

しかしながら(However)、『江』の視聴を完遂する事はできませんでした。大阪の陣が終わり、宮沢りえさんがオーラスを迎えたあとのラスト3回は見ませんでした。それまでの10ヶ月超の頑張り(もはや修行レベル)を思うと、非常に忸怩たるものを感じもするが、もー無理。匙を投げました。そういえば、『天地人』のときも、小栗旬が演じる石田三成の千秋楽をもって脱落したな・・・。

たった3回でお江ちゃんの後半生がスッカスカに描かれるのかと思うと、こらもう、文句しか出てこんだろうと。んで、放送後、ブログ等で詳しい内容を見るだけで、怒りのブログが3,000字くらい書けそうなくらい、しょーもない!しょーもない!しょーもない! あーもう、3回言うたった。

この大河の最大の収穫は言うまでもなく宮沢りえの淀で、このカスドラマは彼女の圧倒的に情感豊かな演技によって大河の態を成していたのだと思います。このカスドラマから、大河ドラマ史に残るであろう登場人物が輩出されたのは奇跡的なこと。私にとっての“淀トップ3”も塗り替えられました(1位宮沢りえ、2位松たか子、3位樋口可南子)。彼女、将来は大竹しのぶ級の大女優になってもおかしくないんじゃなかろーか。もちろん、今後とも、5年に1ぺんくらいは大河ドラマにも出演いただきたいもんです。

次点は水川あさみ。2007年の『風林火山』でヒサをやっていたころからは考えられない成長ぶり。完全にうれしい誤算でした。まず、姿の美しさ、特に尼僧姿の清冽なフェロモンには目がくらむ思いがしました。それから、彼女は時代劇向きの声ではないと思っていたし、少女時代の演技では先が思いやられる・・・と頭を抱えていたんですが、それは1年間を計算しての演技プランだったのか、関ヶ原(大津城の戦い)あたりから、大人びた演技も堂に入ってずいぶん見応えがありました*1。いや〜こんなに扮装が映える人は、また絶対出てもらわないかんです。大河女優・水川あさみの誕生にばんざい!

まあ、やっぱり脚本ですよね。そうそうたる顔ぶれの役者をそろえ、衣裳も美術も撮影にもお金をかけて、これだけの規模でやる大河ドラマの脚本がアレっていうのは、あまりに哀しいことです。もちろん、長いドラマを書くのは大変で、過去の大河ドラマでも“非の打ち所がない”という評価を得られた脚本は、実際数少ない。私が贔屓にしている『風林火山』だって欠点はいろいろありました。しかしねー、「拙いけれど愛すべき」ってレベルじゃないもん。

主役の上野樹里ちゃんは迷いながら演技をしているように見えたし、『ゲゲゲ』で作った私の向井理貯金は『江』で使い果たしてしまいました。屈折しているけど心の底は純真な理想に燃えているイケメン秀忠・・・底の浅いあて書きに反吐が出るぜ! 次クールの主演ドラマで取り戻したいもんだがかなり不安。上野さんは、やはりメタメタ脚本だった天地人のあと即座に『悪人』で実力を示した妻夫木くんにならうことができますように! 江で評価されるにはあまりに惜しい女優さんです。

そんなこんなで、さしもの大河の猛者(←私のことだ)も挫けまくった今作でしたとさ。ちなみに年末の総集編は早朝7時20分からだそうです。NHK自身もすでに暗黒歴史扱いじゃないか!

*1:最後3回では、またお江ちゃんのツッコミ役でめためたな演技をさせられていたようですが