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澤瀉屋クワド会見 〜香川照之編

9月27日、段四郎亀治郎香川照之&長男の政明くんというまさかのクワド会見! 釣り針太すぎ! あげく猿之助まで登場って、なんですかその念の入ったサプライズーーー! はい、ここ数日、完全に踊らされてました。

そういえば確かに数年前から、歌舞伎に対する思い、ことに長男には澤瀉屋一門の直系男子として生きてほしいとの思いがあることを公言していた香川照之だけど、まさか己も「中車」を襲名するとは! 一部で見受けられた「香川照之46歳、歌舞伎に初挑戦」なんてニュースの見出しが違和感ありまくりなぐらい、歌舞伎って、あだやおろそかに挑戦できるもんじゃないですから!

東大文学部出身でフランス語がペラペラであるとか、無名のころからボクシング雑誌の連載をもっており、読んでる人は、彼のあまりの文才、また拳闘マニアックぶりに、専属ライターに違いないと思いこんでいたとか、才人としての逸話がいろいろある。もちろん、国内屈指の実力派俳優としても知られている。個人的には、映画賞の授賞式などで見られるクレバー且つユーモアあふれる堂々たるスピーチにも注目してきた。

その彼をして、あれだけ緊張させ、低姿勢にさしむるんだからなあ。襲名のニュースそれ自体にももちろん驚いたが、あの会見はなかなか衝撃的であった。

もちろん、ポーズって部分もあるのかなぁなんて疑ってもみる。頭脳派であり、存分な演技力をもった彼が、「自分がどう見られるか?」と考えないはずがないもんね。で、歌舞伎界、芸能界、親族そして世間一般という全方位について熟慮の末に彼が見せた姿があれなんだよ。そう思うと、かえって震撼とする。

「はっきりいって本当に素人です」 「何もできません」 「本当にご迷惑をかけることになると思います」 「全歌舞伎役者さん達に対して本当に僕を助けて下さい。ご迷惑をかけます」 「ダメなら足を洗います」 「本当に今後ともご迷惑をおかけします」

あらためて羅列してみるとすごい。同時に「映像の世界では20年やってきましたが」とも言ってるんだけど、謙虚を通り越して卑屈なまでに執拗に許しを乞う姿のほうが断然印象的。われわれ一般の人間にとっちゃ、「や、なんも今から、そこまで謝らんでも」って感じだが、これが歌舞伎界の異様さなんだろうなあ〜。

現・団十郎にしろ誰にしろ、有力な後ろ盾なく歌舞伎の世界でやっていくには凄まじい苦労があったというから、息子のためなら何だってする、と思ってるんだろう。

政明くんという妙齢の男子の存在はもちろん、猿之助の体調のこととか、新・歌舞伎座のオープンを見据えた松竹の商業戦略とか、いろんなめぐり合わせがあっての今回の実現なんだろうけど、「この船に乗らなければ」と何度も繰り返した香川照之の並々ならぬ決意にはやはり打たれてしまうし、期待もしてしまう。

そして、「浜さん、ありがとう、恩讐の彼方に、ありがとう」とカメラの前で言った猿之助もさすが大役者といったところなのかもしれないけど、なんかもう、菊池寛もびっくりっていうか、あまりにドラマチック。「お〜い、誰か近松を呼んできてコイツら題材に浄瑠璃を書かせろ〜〜〜!」と言いたくなるような話じゃないか。聞いたところによると、70代も半ばになっている浜木綿子は、翌日、メディアの電話インタビューに答えて、この件について、サバサバハキハキと語ってたそうな。この人も相当な賢人のようだ。