『それでも、生きてゆく』 第8話

もうねー毎週まいしゅう、とんでもないもんを見せられとりまして。

放送終了直後、TLの皆さんの打ちのめされっぷりの凄いこと。なんか一人で見る自信がなくなり、夜まで録画を温存し、ついに夫を巻き込んで見た。こんなこともあろうかと、以前からあらすじをちょいちょい語っておいたのが功を奏したぜ。夫は、「えー、メシがまずくなるんじゃないのー」とぶつくさ言いながらも、ものの5分で虜になっとった。

サトエリの負傷は、ドラマの中では周縁というか、フミヤが罪を繰り返したということをあらわすための、いわば記号なわけなんだが、あの幼い娘ちゃんと、父・小野武彦を見てたら、もう、感情移入しまくり(泣)。まー凡百の母親としては、小さい子を奪ったり、小さい子のお母さんを奪ったりするの見ると、無条件にたまんない気持ちになるわけだが。

小野武彦時任三郎に「娘を返してくれ!」と詰め寄るシーンは予告で流れたから、「アレが出るんだな」とわかってるわけですよ。ドラマや映画におけるこのようなシチュエーションでのお約束的なセリフでもあるし、それこそ、無意識のうちに記号として取り扱う心の準備をしてるわけですよ。しかし、そのセリフが出るまでが長い。「入院ならパジャマは、シャンプーは、」とどうでもいい心配でお茶を濁そうとしてみたり、瑛太兄弟や時任の分までものパンとお茶を買ってきたり、まだ現実が理解できるはずもない幼い孫娘を追い掛け回して遊んであげたりと、さんざんいろんな描写を繰り返して、それから、出る。

しのぶもしのぶだ! 今さら多少いい演技をされても、こっちはもう驚きゃしないよって感じで見てるのに、この人いったいどこまでいく気なんだね? いくら名優だからって、演出側もすごいよね。欲しがりすぎだよ〜! そして、それを受ける風間くんの演技にも瞠目した。これまで凶行に及んでいる最中のシーンはないし、つねに死んだ目だったので、ああいう表情や身体表現ができるってことがわかってうれしかった・・・なんか、あのシーンに対してすごく不謹慎な感想だけど・・・。

しのぶの、あの渾身の激白に対して、「そんなに落ちこまないで」っていうセリフがすごいよね。なんという断絶。

そしてラスト、「何もかも忘れて、ふたりきりで遠くに行ってしまいたい・・・」云々と瑛太が言うとき、画面に大写しになるのは、もうこれ以上はないってほど絶望的な顔をした満島ひかりなのだ。にっちもさっちもいかない状況でのひとときの逃避、情熱的な言霊による陶酔や、熱に浮かされたような抱擁すら、このドラマにはない。満島ひかりは瑛太のセリフに何の言葉も返さない。ただ、その目が、「そんなことできっこない」なのか、「そんなことして何になる」なのか、とにかく彼の言葉になんて少しも心動かされていないと雄弁に告げている。この人たちにどうやって救いを用意するわけ、坂元!?

あと、こんな状況でも、ラオウ他マンガの登場人物の年齢というウンチクを披露する田中圭とか、大竹しのぶの「みんな臭かったでしょうね」とか、婦人パジャマ売り場にもさっとした男三人とか、そういうシーンがちゃんとあるのがいいです。