心を寄せる

震災以来、誰に強いられたわけでなく動いている人がたくさんいて、電通*1のさとなおさんががやっているプロジェクトや、毎日、「今日のダーリン」を更新し続ける糸井さん(これは彼の影響力を考えると、かなり重い意味があると思う。)とかを見ると、ふさぎがちな気分も少し上向きになる。

いっぽうで、「結局、自分には自分の仕事しかできないんだから」とか、「過度な自粛はかえって良くない」といった論調をよく聞くし、もっともなことだと思う。実際、私も、何をしたかといえばわずかばかりの義援金だけ。そして、今も、衣食の足りた生活を家族としている。

正直いって、震災関係のニュースを正視することすらつらすぎて、なかなかできない。でも、これからの長い日々、被災地に心を寄せながら生活していきたい。“心を寄せる”。(この震災の前から、折にふれて、社会的・身体的に弱い立場にある人々に対して会見で)天皇、皇后両陛下がよく使う表現だ。

今朝、宮崎駿監督のインタビューを見た。日経新聞のサイトに詳しくあったので、引く。

今このときも埋葬もできないままがれきに埋もれているたくさんの人たちを抱えている国で、しかも今、原子力発電所の事故で国土の一部を失いつつある(可能性もある)国で、私たちはアニメーションを作っているという自覚を持っています。

誰のせいだとかあいつのせいだとか言う前に、敬虔(けいけん)な気持ちでその事態に向き合わなければならないと思います。今、何十万の人間が寒さに震え、飢えに震え、それから放射能の前線に立っているレスキューや自衛隊員や職員のことを思うと、その犠牲に対して感謝と……、誇らしく思います。文明論を軽々しく語る時ではない、敬虔で謙虚な気持ちでいなければならないと思いますが、この映画がこの時代に多くの人たちに何かの支えになってくれたらうれしいなと思っています。

私たちの島は、繰り返し繰り返し地震と火山と台風と津波に襲われてきた島です。それでも実はこの島は、非常に自然の豊かな恵まれた国だと思います。多くの困難や苦しみがあっても、もう一度、もっとより美しい島にしていく努力の甲斐のある土地だと思います。

この、時おり言葉につまりながらのインタビューには、「自分の仕事、いつもどおりの暮らし」を、彼がいかに真摯な気持ちで、また覚悟をもって行っていることかと、深く感じさせられた。

私はもうこの年ですから、この土地から一歩もひかないと決めています。今、僕は文明論的に高所からいろんなことは語りたくない。死者を悼むところにいたいと思います。

*1:4月から、"元"電通のさとなおさん、になるようだ