『てっぱん』第7週『ひらけ!あかずの間』まで

なんのかんの言うて、『ゲゲゲ』のころと遜色ないテンションで楽しんでいる自分がいるのだよ。私のお気に入りは安田成美のお母ちゃんと浜勝の社長、趙除ナ和さん。救命病棟の一番新しいシリーズに出てたよね。今回はブラバンに夢中のトボけた若旦那って感じで、憎めないキャラなのであります。

開始当初もっとも心配だった元気すぎる主人公のあかりちゃんにも、すっかり馴染んだ。ていうか好きです、今や応援してます。でも、この子単体だったら、やっぱり厳しいもんがあるとは思うんだけどね。

このドラマ、ファンタジーではあるんだよ。村上鉄工所の村上家も、浜勝や田中荘の面々も、伝さんも、遠藤憲一柳沢慎吾尾美としのりの仲良し3人組も、そしてあかりのキャラクターも。だから「見てらんない」って人もいると思うけど、私にはギリギリのところで踏みとどまっているように思える。そのバランスをとっているのは、間違いなく富司純子のベッチャー初音ばあちゃん。

“主人公の孫娘とその祖母が反発しあいながらだんだん近づいていく”なんて設定、かつてだったら、初音はものすごく偏屈か意地悪に設定されてて、視聴者はあかりに肩入れしながら見るもんだと思う。でも、平成22年の今や違うんだな。

劇中でこそ、意地悪いじわる言われているものの、実際の初音は、折り目正しく暮らす、ごくごくまっとうな人物。言うこともいたって筋が通って含蓄のあるものだし、たまに見せる頑なさにも、長い人生のうちにできてしまう如何ともしがたいものを感じる。対して、あかりちゃんはとってもいい子なんだけど、まだまだ世間知らずのお嬢ちゃん。朝ドラの視聴者層である奥さん方は、どっちかというと初音はんに感情移入してるはず。

「夜になったら寝るもんや。いやでも朝がくる。」このそっけないせりふに込められた万感。

初音という人物に富司純子が与えている圧倒的なリアリティといったらどうでしょう。このドラマは彼女をキャスティングできた時点である程度の成功が約束されたといっていい! 若き日に絶世の美女としてもてはやされた彼女、今でもCMなんかで見たらとてもきれいなんだけど、『フラガール』といいこのドラマといい、こういう“少しも外見を美しく見せない役”をすごい存在感でやってくれるのがうれしい。

いま流行り(?)のフードコーディネーターなんかもちゃんとつけつつ、初音さんの料理(ニッポンの和食)風景も随時、映しながらもうるさくない程度に留めるところとか、NHKやるな、と感心する。

そして、あかりちゃんといい感じになっていくであろうエキデン君こと滝沢薫を演じる長田成哉くん。まったくといっていいほど無名の存在だと思うけど、これがまた、シュッとした子でなかなかいいんですわ。こういう子をちゃーんと掘り出してくるあたり、ほんと、NHKやるな! やってくれるよな!