『ゲゲゲの女房』/ 向井理くん

NHK朝の連続テレビ小説、10年ぶりくらいに見てます。初回からではなく、主人公の布美枝(松下奈緒)としげる(向井理)が結婚式を挙げた夜のシーンから。なんという下世話なタイミングでしょうね! 朝のNHKだけあって、超さわやかでしたが。

その後、ゴールデンウィークの新聞だったか、ちょっとしたドラマ評が載っていた。いわく、初回視聴率は歴代最低を記録してしまった(ここ数年、作品を追うごとに最低を更新し続けている)ものの、布美枝の本役、つまり松下奈緒が登場したころから上昇に転じ、しげると結婚してからはさらに好調らしい。

朝の連ドラは“女性の自立ストーリー”みたいなテーマが多く、必然的に職業をもった主人公が多いのだが、いいかげんネタ切れというのもあるのか、どうも風変わりな職業、無理な展開も多かった。今回の主人公、布美枝は、十数年ぶりの専業主婦である。朝の連ドラの視聴者層は専業主婦が多いので、自力で動くわけではなく、夫の人生に左右される布美枝に共感が集まっているのではないか・・・・と、そういう大意だった(ように記憶。実家で見たので現物が手元にないの)。

わからんでもない。というのも、私はまさに、にわか専業主婦だからである。戦後のお見合いで出会い、互いのことを良く知らないまま結婚し上京して、古く狭い家で始まる新婚生活。知り合いはおらず、テレビはおろかラジオもなく、小さなちゃぶ台に二人で向かい合って食事する、言葉少なでぎこちない新婚夫婦の姿は、現代に生きる私にはなんとも新鮮で初々しく映り、でもなんとか夫に寄り添おうとする布美枝のけなげさ、一歩ずつ歩み寄り家族になっていくふたりに胸はきゅんとときめくのでした。

これまで決して女優としていい印象をもったことのない松下奈緒は、急に演技力がアップしたわけでもなく、いかにも「朝ドラ」的な、わかりやすさに徹した、学芸会みたいな芝居をしているんだけど、朝ドラってそういうものだという前提で見ているのでそう気にならない。

オープニングテーマでも鬼太郎ねずみ男猫娘などが登場するように、水木しげる漫画絡みのあれこれを織り込んだサクセスストーリーであることも想像がつくので、ある意味、安心して見られるというのもある。

しかしなんといっても、このドラマの魅力は布美枝の夫、しげるだ。劇中のしげるさんが既に40歳近いという事実には目をつぶらざるを得ないが、飄々とした言動、漫画への情熱、ふと垣間見せる布美枝への優しさ、、、つかみどころのない感じに乙女(誰のこと?)ごころは翻弄されっぱなしなのです。

NHKのドラマって、こういう、永遠の乙女(というコードネームのおばちゃん)たちには堪えられない男性キャラクターをたまに生み出して、成功するよね。古くは『あぐり』の野村萬斉といい、最近では『篤姫』の堺雅人といい。今回の向井くんも、その系譜に連なるのではなかろうか。

そして、私にとって、しげるのとらえどころのないイメージは、そのまま、演じる向井理くんに通じている。10クールかそこら、民放の連ドラに連続出演したとかいうだけあって、これまでいろんなドラマでちょこちょこ見かけていた。しかし小栗旬=硬派、瑛太=ユニセックス、みたいな、俳優としての固定イメージ(あくまで私にとって、ね)が、彼にはまったくない。主演作品が少ないからというのもあるだろうけど、よく見る顔なのに、よくわかんないのだ。それは今のところ、とってもいいふうに作用しているように思える。向井くんのこともっと見たい、知りたいという気持ちの盛り上がる毎日だ。

そう、毎日。だって朝の連ドラは月〜土まで週6日の放送で、しげる=向井くんが出ない日はないし、日曜日には『新参者』に出演中。こちらではまた、しげるのことなんかまったく念頭にないような(あったら困るけど笑)演技を見せてくれています。
エンドロール、クレジットが溝端淳平くんと連名で出るのがお気に入り。若手役者として、同じようなキャリアと期待度、演技力、人気でありながら、どんなドラマでもフレッシュなイメージの溝端くんに対し、カメレオンのような向井くん。。。と、そのカラーは対照的に思えるので、まさに『競演』て感じがしていいなと思う。