天神今むかし

●5月9日(日)
天神へ。夫にもらったマタニティマッサージのギフト券がまだあったので。顔と手、足をやってくれる。女の人の繊細な指先が、つつつ・・・と壊れものをあつかうかのように頬をそっと撫で、ツボのところをグッと押す。このリズム、緩急が快楽なんだよなーと思いながら意識は遠のいていく。

どんな用事のときだろうと、天神に行けば必ず立ち寄っていた丸善福岡ビル店。6月19日で閉店になる。ネットと新聞の報道で知ってはいたけど、いざ店頭で貼り紙を見てあらためてショック! これで、天神に行く理由が3割くらいなくなったといえよう。ま、ちょうど出産の時期なので、どうせ行くことはなかっただろうけど・・・。

一時期、「第3次天神書店戦争」などと言われていたが、古参のりーぶる天神、紀伊国屋、そして丸善と次々に撤退し、結局、大型店では最後に参入したジュンク堂のみが残るわけだ。このジュンク堂が一人勝ちすることは、私が勤めていた会社にとっては大変喜ばしいことなのだが、丸善・・・あの、いかにも「本好きの人が集まってくる」静かな感じが大好きだったのに〜〜〜。

一方で、天神コアのアイスクリーム屋さん、クリームランドがいまだ健在であることに気づき、びっくりする。私が小学生のときからあったよな。てことは、すでに20年以上。この異様に強い競争力は何。

このマンションには回覧板があるらしく、越してきて初めて回ってきた。中を見て、ここの校区を知る。このあたりの校区割が不思議なことになっているのは聞いていたが、この家も、やっぱり最寄の小学校の校区じゃないんだ。

しょーこちゃんから連絡あり。妊娠初期には特に何が起こるかわからないから、こちらから連絡するのはためらわれていたので、うれしい。お腹の赤ちゃんも順調らしく、なおうれしい。夜ごはんは、焼き鮭、具沢山のみそ汁、ほうれん草のゴマ和え。夫、体調不良につき、日曜日なのに珍しく私が作った夕食であった。

●5月10日(月)
夫、37.6度の発熱により会社を休む。私と夫は体調不良に対する態度がまるきり違っていて、私は「もうほんと、これ以上は、ちょっとも無理っす」というところまで粘るたちだが、夫はごく初期に休んで治してしまおうとするタイプ。日本人て前者のほうが多い気がするが、たぶん正しいのは後者だろう。

夫の場合、ひとつには、今は薬も飲んでいない程度だけれど、持病に腎炎をもっていて、この病気は熱が続くことがとても良くないのでこじらせないように注意しているというのもあるのだが、たいして重篤な症状でもないうちに仕事を休んだり、やたらと安静にしているのを見るのは、私のような「無理を美徳と思っている」ふしがないこともないタイプの人間には、なんか変な感じに見える。うん、きっとこの違和感から解放されるべきなんだよね。

ま、たいして真剣におろおろする段階までいかないで済むのは、家族としてはありがたいことである。寝ている夫を尻目に、洗濯をし掃除をし、歯医者に行ったり、友だちに結婚祝いを贈ったり、資金移動させて新しい定期預金を作ったりと雑事を片付けていく。

そして近所のスーパーで買い物をしていると、階下のおばちゃんに遭遇。先日、甘夏みかんをもらっていたので「おいしかったですぅー」とごあいさつすると、いろいろと話し込むことになって、(はぁーやっぱり、どこのおばちゃんも話すの好きだよなー、スーパーで長々と立ち話って主婦っぽいよなー)と思いながらあいづちを打っていると、話のついでにポロッとおばちゃんが口にした事実に顎が外れそうになる。

「娘がロスに住んでてね〜」
「へぇー、ロスですか〜。ご結婚でですか? お仕事で?」
「旦那の転勤でね。あたしも去年の夏、1ヶ月間行ってきたのよ」
「へぇー、すごいですね〜。1ヶ月も〜」
「そうよ、孫に連れられてあちこち行きましたよ」
「へ? お孫さんが連れて行ってくれるんですか?」
「24歳なの」
「え! 24歳! そ、そんな大きいお孫さんがいらっしゃるんですか!」
「そうよー、だってあたし、80だもん」

うっそー! 私の母(66歳)とどっこいどっこいだと思ってた! お肌の感じにしろ、歩き方にしろ、しゃべり方にしろ、老人という感じがまったくないっていうのに・・・。いまの世の中、すごいことになってるな。帰宅後すぐに、興奮してベッドの夫(ビタミン剤の点滴により復活していた)に報告。夫も声を上げて驚いていた。おばちゃんじゃなくておばあちゃん、これから生まれる私らの子どもなんて、あの方にとっては、孫どころか曾孫世代なのね・・・。

夕方、携帯電話に会社より着信あり。時期柄、おそろしくて出られなかった・・・。するとメールが入ってきた。やばい用事じゃなかったのでほっとしてコールバック。夜ごはんは、ピリ辛肉じゃが、切干大根の炒り煮、厚揚げとキャベツの生姜炒め。