『Mother』第3、4話

視聴率はそれほどでもない。そりゃそうだ。

母に捨てられた娘が大人になり、母から虐待を受ける少女をさらって逃げる。娘の実母は血のつながりを隠したまま、死病に冒され余命いくばくもない身でふたりに手をさしのべる。娘の養母は血のつながらない娘をこよなく愛しながら、実の娘もおり、彼女はお腹に心疾患のある胎児を抱えている。
いくつもの母と娘の十字架。

こんなストーリーだもん、見る層は限られているだろう。でも、各所で既に高い評価を得ている。脚本、演出、美術、俳優、子役に至るまで、今のところ死角は見つからず、物語の着地点さえ手を抜かなければ、今年屈指の良ドラマとして記憶されるのは確実。なんせ、こういう設定や展開を、少しもセンセーショナルに扱おうとしていない。このドラマの基調はどこまでも静かで、まじめだ。

それにしても、こんなにも嗚咽、号泣しながら、みんな見てるもんだろうか。昼下がりに2話連続で録画を見て、あまりに泣いたもんだから、その後しばらく買い物に出るのもはばかられた。目が腫れすぎて・・・。

ちょうど、自分のお腹の中に命をもっているから? しかし、私自身は両親からじゅうぶんな愛情を浴びて育ってきたし、三十路を越した今なお、それは続いている。そして平凡な結婚をして自然に授かった我が子を、普通に溺愛して育てる予定なのだが。うーん、あまりにも、涙腺に訴えるものが強すぎる。かといって、私はこのドラマの中の人たちを哀れんで泣いているわけでは決してない!と思う・・・。こんだけ泣くって、相当な感情移入がないと、ないよ。

まあひとつには、田中裕子のせいだってことは確実である。一昨年夏のNHK広島製作ドラマ『帽子』でも、最後、彼女と緒形拳が公園で話すシーンで激泣きしたもんなあ。この世代でいちばん怖いのは大竹しのぶだと長いこと思ってきたが、今こそ言いたい。「怪物、田中裕子」。(@『龍馬伝』ですよ念のため)