『一千一秒の日々』 島本理生

一千一秒の日々 (角川文庫)

一千一秒の日々 (角川文庫)

ふだん、自分とは縁遠いテイストの本を読もう・・・と思って図書館で借りた本。縁遠いといえば恋愛小説である。今さら『ノルウェイの森』でも読もうかと思ったが(読んだことありません)やっぱり恋愛長編ってきつい気がしたのでやめて、短編集を探した。ねっとり濃厚な小池真理子にも妙に惹かれつつ、結局、薄めのサイダーってイメージのこっちにした。

うん、面白かった・・・んだと思う。ある話で脇役だったり片思いの相手だったりする人物が、別の話で主人公になったりする、という、まあ短編集に時々見られる趣向が凝らされていて、最初のほうはそのやり方が何だか鼻について気になっていた。だから1編読んではやめ、また1編読んではやめてといったふうに細切れにしか読む気になれなかったんだけど、後半の4編くらいは一気に読んだ。

登場人物は、いずれもはたち前後の若者たち。自分と、ものすごく距離を感じます(笑)。でも、全部読み終わったとき、「恋って、こういう感じだったりするんだよなー」と思った。夫とも“恋の始まり”みたいな時期があったんだなーとか。テレビドラマで恋愛のシーンを見ても、自分に置き換えてみることってあんまりないので、不思議に思った。私がもともと読書に親しんだ人間だからなのか、この短編集がとてもよくできているからなのか。よくわからない。

とにかく、なんにしても、あとあとまで心に何かが残るわけじゃなくても、読んでいる間この本の世界に引き込まれていたんだと思う。あとあとまで心に何かが残る本はもちろんすばらしいんだけど、そうじゃなくても、この本については満足です。てか、この人、私の中では新人作家さんだったのだが、文庫版のあとがきで「デビューして8年目」て書いてある・・・。時の経つのは早い・・・。