『吉原花魁』宇江佐真理ほか (編 縄田一男)

遊里、しかも吉原を舞台にした短編時代小説アンソロジー。帯のキャッチコピーは“江戸の不夜城を彩る女たち”

アンソロジーを買うときの決め手は、やはり執筆陣だ。これも、宇江佐真理藤沢周平が名を連ねているので手に取った。しかし、宇江佐の『紫陽花』、藤沢の『三千歳たそがれ』ともに既読・・・というより、該当作品が収められたそれぞれの作者の短編集を持っていた。

しかし、未読の作品群もなかなか面白かったのでよしとしよう。以下いくつか感想

隆慶一郎の吉原作品といえばもちろん『吉原御免状』だが、それは網野善彦の中世研究を軸として書かれたものらしい(と、本書の解説にあった)。このときGW備忘録 - moonshineに感じた印象が裏付けられました。で、この「張りの吉原」だが、御免状とはまた全然違った華やかさとハードさで、巻頭を飾るにふさわしい快作! 色っぺくてかっこいい話。

この作家は名前すら初めて知りました。吉原といえば心中ネタも鉄板なんだけど、こういう形で見せられるのは初めてでぐいぐい引き込まれた。

こちらは名前はよく見るものの実際に作品を読むのは初めての作者。「付き馬屋おえん」シリーズの中の一作で、過去に山本陽子主演でテレビドラマ化もされたとのこと。テイストが非常に好みだったのでシリーズも読んでみたい。ところで30年余の人生でさんざん時代小説読んできて、“口入れ屋”とか“引き手茶屋”みたいな時代物特有の職業にもけっこう馴染んでいると自負(笑)してきたが、“付き馬屋”というのは知りませんでした。

ふ、風太郎せんせーい! 忍法帳や魔界モノだけでなく、吉原の小説まで書かれていたんですね。さすがの迫力、さすがの異色っぷり、さすがのおどろおどろしさですぅ。妖気にあてられてくらくらしました。