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 2010年 日本アカデミー賞

テレビ 映画

昔から、毎年楽しみにしています。なんかいろいろ政治的バランスがあるとかで、映画賞としては国内最高格式ではないようだけど、授賞式が地上波で放映されるのってこれだけですからね。
ノミネートされた映画を既に見てることは少なくて、現に今年も1作も見てません・・・。それでも、この授賞式を見るのは楽しい。
まあ人にもよりますが、俳優さん、女優さんたちは、実際の作品以外では、基本的に映画の宣伝ぐらいでしか露出しないものですから、生の言葉を聞けるのは楽しいですし、こういう「彼らの本業に関して」フォーマルな場というのを見られるはなおさら貴重な機会です。最優秀賞なんて受賞した暁には、役者の「素の」歓喜の表情や、演じること、作品に対する思いのたけに触れることもできます。
みなさんドレスアップし、おおむね、エレガントに振舞って私たちをうっとりさせてくれるものですが、まれにシャイすぎる人や妙に笑いをとる人、奇抜な人、斜にかまえた人など、さすがの個性を見せてくれる人がいるのも見どころです。2007年の樹木希林の悪態なんて、そりゃもう天下一品でした。仕事ではどんな嘘も上手に演じるくせに、素の彼女は正直すぎます。
さて、能書きはこのくらいにして、今年の受賞者について書き留めていきましょう。こんな悠長なことできるのも今年だけだと思うので、悪趣味かもしれませんが、受賞スピーチについても書きおこしてみました。

●最優秀助演男優賞:香川照之劔岳 点の記)

まず、僕が尊敬してやまない山崎努さんからトロフィーをいただきましたことを大変光栄に思います。本当にありがとうございます。
わたくしは今、こうして賞をいただきましたが、本当にこのスタッフなくしてはこの映画はできませんでしたし、
また、西田敏行さんと、この『劔岳 点の記』を撮影するということが決まって、あれは東宝のスタジオでしたか、偶然お会いしたときに「お金をかける映画は多いけど、命をかける映画は少ないよね」と(会場、笑い)エールをいただいて、剣岳に向かったことも、いま思い出しております。
(やや目を潤ませながら)そして、この困難極まりない映画を、たとえ一人でもやってのける、と。客がひとりも見に来なくても僕はやる、と言って、最後まで着地をさせた木村大作監督に、本当に感謝します。心からお礼を言います。ありがとうございます。

ほかにノミネート者は、瑛太(ディア・ドクター)、堺雅人ジェネラル・ルージュの凱旋)、玉山鉄二(ハゲタカ)、三浦友和沈まぬ太陽)。
まったく、香川照之という役者は、どこまで株を上げたら気が済むのでしょうか! 天井知らずとはこのこと。演技ばかりでなく、スピーチでまで人の心を揺さぶるとは。関根麻里も、うちの夫も、「今回いちばん良かった」と口をそろえています。むろん私も。こうして字面にしても、簡潔で気が利いていてとてもステキなのですが、やはり香川さん自身が喋ると、こちらまでじーんとして、涙が出てくるようなスピーチでした。強い口調でも、咽ぶでも、喜びを爆発させるでもなく、ただ静かに噛み締めるような、心のこもった口調でね。プレゼンターの山崎努から、恭しい手つきでそっとトロフィーを受け取り、「ありがとうございます」と静かに3度も言っていた姿も印象的でした。
あ、主演女優賞部門で、「日本の俳優さん、誰と共演したいですか?」と聞かれたペ・ドゥナさんが「香川照之さん」と答えたときに照れてた姿もステキだった〜。香川さん、なんか品のある人だ〜。
それにしても玉山鉄二さんがノミネートされてるのにはびっくりしましたね。彼のことは、従前から「私のイケメン三銃士」として愛でておりますが、ここに彼を呼ぶんなら、『南極料理人』の生瀬勝久さんか豊原功輔さんあたりも呼ばれてほしかったです。

●最優秀助演女優賞:余貴美子 (ディア・ドクター)

アカデミーの皆さんありがとうございます。受賞のお礼を申し上げます。もう一度いただけるなんて本当にありえない話だと思っていたので、まったく・・・(『ディア・ドクター』卓が「ありえない話」に反応したのか。そちらに“なによ?”と目をやってから)何もお話を考えていなかったんですが、もう一度スピーチできてうれしいです。
小劇場、とてもとても小さい劇場の劇団の出身なので、アカデミー賞という賞は現実的な賞でなかったんですが、現実となって本当に胸が痛いくらいです。
『ディア・ドクター』という話は、「この嘘は罪ですか」という問いかけがよくあるんですが、俳優という仕事は何かになりすまして生きている感覚があります。私も、皆さんが楽しくなれるように、人の役に立てるような嘘を突き通して生きられたらいいなと思っております。
またここに立てるように、嘘のような本当の話になるように、お芝居を粗末にすることなく、誠実に、お仕事をしていきたいと思ってます。
この『ディア・ドクター』の企画をした安田会長、それから友人たち、私を助けてくださった人たち、家族、感謝してます。ちょっと、この、こういう言葉言ってみたかったのでうれしいです(あらためてにっこりと笑う)。ありがとうございました。

ほかにノミネート者は、中谷美紀ゼロの焦点)、木村多江ゼロの焦点)、室井滋ヴィヨンの妻)、鈴木京香沈まぬ太陽)。
余さんは昨年の「おくりびと」で同賞を受賞したので、プレゼンターとして壇上に上がり、自分で自分の名を読み上げました。なんかこのパターンは見たことあるな、と思ってwikiを遡ってみましたところ、役所広司の2年連続での最優秀主演男優賞受賞のときでした(1996「Shall we dance?」−1997「うなぎ」)。
「ディア・ドクター」から受賞者が出てほんとに良かったです。見てもないのに、妙に応援したくなる何かがこの作品にはあります。べー師匠、瑛太、余さん。それに、井川遥香川照之八千草薫さんですって。出てる人たちに人徳ありすぎです。加えて、若く才能あふれ、チャレンジ精神に富んだ西川美和監督ですからね〜。ほんとに仲の良さそうなキャスト・スタッフ陣でした。
今年のこの部門は、全員がアカデミーで“最優秀”受賞経験者ということで、豪華でしたね。鈴木京香中谷美紀の輝くばかりの美しさに目を奪われました。そういえば、広末さんを含めたゼロの焦点3女優の「ほめ殺し合戦」、なかなか面白かったです。本心なのか女優の嘘なのか、まったくつかめないってところが。

●最優秀主演女優賞:松たか子 (ヴィヨンの妻

(トロフィーを顔のあたりで掲げて快活に)いただきました! ありがとうございます。
素晴らしい俳優さんたちと共に受賞させていただいたことだけでもありがたく思うべきだと思って、今日はここに来ましたので、とても光栄に思います。
(脚本の田中)陽造さんがこの役を書いていただいたおかげです。ありがとうございます。そして、根岸監督が、辛抱強く見守ってくださったおかげです。そして、現場のスタッフのみなさん、ここにいない、あの素晴らしいセットを立ててくれた大工さんたち。セットを見せてくれたとき、とてもうれしそうな顔をしていました。彼らもきっと喜んでくれると思います。
そして、最高の夫、浅野さん、ありがとうございます。ほんとにありがとうございました。

ほかにノミネート者は、綾瀬はるかおっぱいバレー)、広末涼子ゼロの焦点)、宮崎あおい少年メリケンサック)、ペ・ドゥナ(空気人形)。
いやー若い。こんなに若いノミネート陣、珍しいです。一列に並んだ壇上は、キラキラと星が瞬くようでした。若いっていいね。普段ならこの中に、大竹しのぶとか吉永小百合とか黒木瞳とかが一人くらい入ってるもんだからね。で、この面子なら松たか子で決まりでしょうって誰もが思うよね〜。松さんも、「あたししかいないっしょ」くらい思ってたんじゃないの? このこの〜。
松さんといえば、もう一回りくらい昔のことですが、デビューして間もないとき、NHKで「紅白歌合戦」の司会という大役をやったんだよね。
ハタチかそこらで、終始ものすごく落ち着いた口ぶり、居ずまいは驚嘆でした。ただ、すべて台本通り、何ひとつ破綻のない優等生の司会ぶりだった。まあ当然のことだと思う。生放送であれだけ完璧に台本をこなせたことは賞賛されてしかるべきです。
しかし、32歳(だよね?)になっている彼女は、「トロフィーもらって当然」ぐらいの勢いのこの場に、おそらく本当に、しっかりできあがったスピーチ原稿を持ってきてはいなかった。それがよくわかる口調でした。名前を読み上げられると、立ち上がって、「劔岳 点の記」の卓にいた浅野忠信のところにサッと寄って颯爽と握手をかわし、スピーチ第一声で快活な仕草でトロフィーを掲げ、飾り気のない笑顔と口調で即興の謝辞を述べる。その姿は、コケティッシュなかわいさながら、同時に、大人の女優としての風格が感じられるものでした。うれしかったです。わたし松さんのファンなんです。そっか、来年は松さんが司会だ! うれしい!
あと、綾瀬はるかが見事に期待に応える天然ぶりだったことを書き添えておきます。

●最優秀主演男優賞渡辺謙 (沈まぬ太陽

沈まぬ太陽』という映画は、“矜持”というひとつのキーワードが大きなテーマになっていまして、山崎豊子先生が社会に強く何かを求めていく、そういう“矜持”、そしてまた、角川歴彦というすばらしい映画人がこの映画をやってやろう!というふうに思いさだめてくれたその“矜持”、それプラス、若松監督はじめ、すばらしいスタッフ、すばらしいキャストたちが心をこめてその矜持というものを向き合った、その成果がこのトロフィーなんだと今思っています。
山崎先生、本当にありがとうございました。そしてまた、恩地元と同じように、長いロケを、本当にうちで帰りを待ちわびてくれた妻、子どもたち、ほんとにありがとうございました。そして、多くのこの映画を支えてくださったお客様、本当にありがとうございました。本当にありがとうございました。

ほかにノミネート者は、浅野忠信ヴィヨンの妻劔岳 点の記)、大森南朋(ハゲタカ)、笑福亭鶴瓶(ディア・ドクター)。
視聴者の受賞予想では鶴瓶さんがリード! どんだけ愛されてるんだ。しかしもらったのは、やっぱり謙さんでした。なんかね、やっぱりね、ノミネートしたからには差し上げないと、てぐらいの、こう、ドーン!とした迫力が、謙さんにはありますよね・・・。そして謙さんってかなり熱い人だよね。あの生身の熱さは、心酔する人とちょっと引いてしまうひとの二手にわかれるような気がします。と言いつつ、私はその中庸くらいの目で見てるけど。もちろん、謙さんの演技は超一流だと思います。
浅野忠信にもねー、そろそろあげたいよね。窪塚洋介も、吉岡秀隆も最優秀もらってるんだからねぇ。そして壇上にあがった大森南朋の居心地の悪そうなたたずまい、良かったです。

●最優秀監督賞:木村大作 (劔岳 点の記)

今日はちょっとおかしいですね。ただ、『劔岳 点の記』はですね、映画を愛する人たちにとっては、最大の映画だとぼくは思ってます。本当にありがたく喜んでいますが、もうひとつあるんだよね。もう、ここまできたら全員で壇上に立てる作品賞が。最後のお願いです。もう決まってるんですが、ここにいる方によろしくお願いしたい。

ほかにノミネート者は、若松節朗沈まぬ太陽)、根岸吉太郎ヴィヨンの妻)、犬童一心ゼロの焦点)、西川美和(ディア・ドクター)。そうかー日本アカデミー会員は、根岸吉太郎じゃなくて木村大作を選んだのか。ま、どれも見てないからなんとも言えんのやけどね。てか、木村さんのスピーチ、絶対うしろカットしてるよね。短すぎるもん。何を言ったんだよ、このあとー! 問題発言したのか、それとも愚にもつまらないことをぐだぐだ喋ってたのか・・・笑
犬童一心さんは、堤幸彦ばりに浮世のしがらみがいろいろあるんでしょうか。ゼロの焦点、彼が撮ってたなんて知らなかったよ・・・。「眉山」といい・・・。ま、見てなくて言うのもなんだけど・・・。「グーグーだって猫である」でメガデスのギタリストをキャスティングしたりすんのは、そういうのの反動なんですかね(笑)。

●最優秀作品賞:『沈まぬ太陽
受賞スピーチは放送されませんでした。んーまー、見てないからなんとも言えんです。でも、角川歴彦さんがトロフィー受け取ってる姿は悪くなかったな。なんというか、この映画にかかわったひとの矜持に報いた感じの受賞って感じですかね。なんかノコノコ登場してた鳩山首相の水の差しっぷりがすごかった。