バンクーバー五輪2010 男子フィギュア決着!

五輪の舞台での高橋大輔のフリープログラム「道」は確かに素晴らしかった! 四回転ジャンプに失敗したにもかかわらず、演技終了直後のあの嬉しそうな表情とガッツポーズもうなずける。私があのスケートリンクにいる観客だったら、日本人でなかったとしてもスタンディングオベーションしちゃったかもしれない。緩急ある振り付けといい、盛り上がる音楽といい、最高。もちろん、プレーヤーである高橋選手、“万感こもった”という言葉がふさわしい表現力だった・・・! 

7位、8位の日本人ふたりは明暗分かれすぎ。四回転ジャンプの成功という格好のハイライトがフューチャーされる小塚君と、切れた靴紐のシーンが繰り返し放映される織田くん。

もちろん、きれいに着氷したのは小塚君の努力の賜物だし、靴紐が切れたのは「自分が悪いです」と織田くん自身も率直に認めてたけどさー。「前の選手への歓声で足がすくんだ」「まだまだだなって・・・」と素直に語りながら大粒の涙を流す織田くんの姿には、おばちゃん、うるっときちゃったよぅ。織田君のチャップリンメドレー、日本選手権で見たときすごく良かった。ユーモラスでかわいくてちょっと切なくてよくできたプログラムだったのに。ああ、残念。

金メダルを獲ったアメリカのライサチェックだっけ? 背が高い、手足が長い、黒ずくめ! 恵まれまくった肢体と卓越した表現力が合わさって、怖いほどだった。黒い魔人。NHK教育でやってる人形劇『新・三銃士』のロシュフォール伯爵に激似だよね?! 高橋選手のあとに滑った同じくアメリカのジョニー・ウィアー、森の妖精? キス&クライで大ぶりの真紅の薔薇の冠をかぶったりしてんのに、まったく違和感がない! 4位のランビエール選手のトウの立ったバタ臭い王子様っぷりも良かったです。いやー男子フィギュア、人材が豊富だわ。

そして、銀メダル“に終わった”という心境だろうロシアのプルシェンコ。うちの母親なんかは「負けてあれこれ文句つけるのは男らしくないわ」とか言ってましたけど、私は別意見。

「王者になる資格があるのは4回転を跳べる者だ。すべてのスポーツは進化し続けるべきで、4回転がなければ男子フィギュアに未来はない」

と、長年、ことあるごとに彼は口にしていたし、もちろん自分でも実践してきた。その信念の是非について感想を持つことはできても、試合のあとに彼がそのことについて再び言及するのを非難する権利が私たちにあるだろうか? 自分の信念を貫き、死力を尽くして戦ってきたのは彼(と彼のチーム)なのだ。

少なくとも、前五輪王者である彼が業界(?)の将来について一家言あるのは当然だと思える。それに、その発言の影響力によって巻き起こる論争は、結果的にはフィギュア全体の進化・深化につながるはずであって、あれは決して単なる負け惜しみなんかじゃないと思う。

なんにしても、男子フィギュア素晴らしい戦いだった〜。高橋選手のことはこの数日も相当報道されたし、帰国後もしばらくは取材攻勢なんか続くだろうけど、テレビはSPとフリーの演技をもっとすべて通して映してほしいね。ジャンプのとこや、演技終了直後の様子や、表彰台だけを抜粋して繰り返し流すんじゃなくて。あの演技こそが、見てる人たちを感動させるんだから。