『不毛地帯』第4話 このドラマの真髄を見た

はぁー。言葉をなくすよ。(と言いながら、これからだらだら書きますが)

2次防(?)がこんな結末になるなんて。川又ぁぁぁ。恨み言ひとつこぼさないままの、笑顔での長い敬礼に胸が詰まる。ギバちゃん、ハマり役だった! 愚直で男らしい正義漢そのもの。壱岐と酒を酌み交わしながら、国防への理想を語るシーンも良かったなあ。

戦争が終わりシベリアから帰っても、結局、こうやって、あまたの死(社会的な死も含む)の上に生き続け、戦い続け、「泥水を飲み」ながら、すべてを見届けるのが壱岐の人生ってことなんだろうな。

来週からは戦域を中東に移し、竹野内豊も前に出てくるようだし、副社長に昇格した岸部一徳との軋轢や、今日キレまくっていた東京商事の遠藤憲一との争いも続くようだけれど、きっと彼らもいずれ敗れてゆき、壱岐が残されるんだろう。成功者として称えられたとしても、すべての人を見送った孤独や寂寥を噛みしめる老境の壱岐・・・この物語の着地点って、これぐらいしか思い浮かばないんですけど。ああ、原作が読みたくなる!(ドラマが終わるまでは読みませんよ〜)

そして、この物語の主人公は壱岐だけれど、山崎豊子が描きたかったのは、自決した秋津中将であり、戦争で失われたあまりに多くの命であり、川又であり、今後、表舞台から去りゆくであろう(と決めつけ笑)竹野内や岸部でもあるのだろう。あ、壱岐の家族、和久井映見や多部ちゃんにも、今後どんな不幸が襲いかかっても不思議じゃないよね。

そうした無数の犠牲、屍のうえに今がある。「不毛地帯」の主題って、そういうことなんだろうな。壱岐というスーパーヒーローが、いかに崇高に生きたかということではなく・・・・。息をのみ、詰まらせ、胸に重いものがのしかかるような今日の放送だった。

それにしても、これを「開局50周年記念ドラマ」にもってきたフジテレビ。「白い巨塔」に続く山崎豊子原作ということで、視聴率の皮算用やなんかももちろんしてただろうけど、そこにはやっぱり何らかの「意志」みたいなものがあったのかな。

ドラマが始まる前までは、「こんな暗そうなドラマ、しかも、昭和30年代って・・・。せっかくの記念なんだから、パーッと景気良く、未来がひらけるようなドラマを作ればいいのに」と思ったりもしてた(ま、明るい方面は、三谷さん脚本のほうでやるってことなんだろうけど)。でも、今日の川又のような姿、その無念を己の十字架として背負う壱岐の姿を見て、何も感じないことができるだろうか。もちろん娯楽としてドラマを見てるんだけど、こんなにグワーッと感動するのは作り手の力、作り手の熱い意志のためじゃないか。

失われる命、奪われる誇り、潰える理想、そういうものを真っ正面から描こうとするこのドラマに敬意を表する。でも、そんなこのドラマの視聴率がこんなに低いってのは悲しい限り。やっぱりこの暗さが避けられてるのかなあ。うちの夫も、何度もチラ見してるけど身を乗り出さずにすぐテレビ前から去っていくもんな。わかりやすいショッキングなセリフやシーンが続かないとダメなのか・・・

追記。
今日の序盤で壱岐を追及していた刑事さん(恐らく、今日のみの出演)、どこかで見た顔だ〜と思ってたけど、エンディングロールのお名前を見て思い出した。
藤木孝! 去年の大河『篤姫』で、村岡(星由里子)を尋問する幕僚の役をやってた人だ! このときも1回限りの出演だったんだけど、なんか心に残ってたんだよな〜