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マイケル・ジャクソン 『THIS IS IT』

映画 音楽

見てきたよ! 

亡くなったすぐあと、最初に公開された『They don't care about us』のリハーサル風景では、ちょうどゆっくりとしたシーンだったのでイマイチわかりずらかったけど、全然元気なマイケル。こんなの見たら、この世からいなくなる直前の人だなんて思えない。

体のどこにもムダな力が入ってないような、軽やかで、でもピシッピシッと決まるダンス。羽が生えてるみたいな自由な歌声。そして、それだけじゃない。ほんとに、この大きなショーは、彼の手の中にある。舞台監督に対しても、ミュージシャンにもダンサーにも、照明にも音響にもCG担当にも、マイケルはきめ細かいオーダーを出し、気軽に言葉をかわす。

  • 「もう少しゆっくり。ベッドから這い出すように」
  • 「月の光が染みわたるみたいに。余韻を大事にしたいんだ」
  • 「そのコードは違うよ。シンプルに、シンプルに。オリジナルに忠実にやりたいんだ。観客はそれが聴きたいはずだから。」
  • 「ここが君の見せ場なんだよ。いちばん高い音で響かせて。僕も一緒にいるから」
  • 「僕がキューを出す。(後ろを向いたままでも)感じでわかるよ」
  • 「音の返しが大きすぎて自分の声が聞こえないんだ。意図はわかるんだけど、良かれと思ってやってくれてるんだろうけど、これじゃ歌えない。耳で聞くように教えられて育ってきたから・・・」
  • 「怒ってるんじゃないよ。愛なんだ。L.O.V.E.」

的確でアーティスティックで、優しい指示。ほんと、マイケルは優しいのだ! そもそも、こんなにも長いあいだ世界中でバッシングされ続けながら、彼自身は周囲を攻撃したり非難したりする声明を出したことが一度もないからね。怒りはすべて音楽で表現されてた。

一緒に仕事をしたアーティストやスタッフたちも

  • 「マイケルは本当にフレンドリーで謙虚。自分の音楽性もそうありたいよ」
  • 「全体を把握しているからとてもやりやすい」
  • 「自分の曲のキーやテンポを知り尽くしている」
  • 「ポップスには珍しい完ぺき主義、原曲主義」

などなどのコメント。
そして、50歳の彼より20も30も若いダンサーたちにとっても、マイケルは輝ける星。

マイケルの体は音楽でできていて、すみずみまでみたされている、それは「スリラー」のころとも何ひとつ変わってない。汲めども尽きない泉のように気軽に取り出してみせる、たくさんのアイデア。打ち合わせ中にハミングしてみせる声や、ビートを刻んでみせたりする手足。

そして彼は本当に音楽を愛している。I'll Be Thereを、Billy Jeanを、彼はこれまで何百回、何千回歌い踊ってきただろう。なのにリハーサル中の歌でだって泣けてくるくらい、大事に歌ってる。それを見守ってるスタッフやダンサーたちから歓声があがり、コンサートの観客みたいに両腕をあげて右に左に揺れる動作が起きる。

リハーサルの風景を映画化するなんて完ぺき主義のマイケルの意思に反する荒稼ぎにすぎない、
ていう声もある。
でも、やっぱり見れてうれしかったよー、マイケル。泣けた。
亡くなるほんのちょっと前の姿がこんなに輝いてるなんて。だからこそ何であんなことになったんだろう、と思うとつくづく残念で、悲しさで泣けてもくるんだけど、でも救われる気持ちになった。
こんなに明確なビジョンをもって、精力的に、魅力的に、音楽をやってたってこと。
周囲のスタッフやミュージシャン、ダンサーたちに尊敬され、愛されてたってこと。

リハーサルの休日前だったんだろう、おもだったメンバーが大きな円陣を組む。
「みんな、とても良くやってる。このまま、自分たちを信じてやっていこう。これはすばらしい冒険なんだ。」とマイケル。
「みんな、無事でね! 楽しい日曜日を!」とオルテガ監督。
ひゅーひゅー、って両手を額の前に突き出すようなポーズをしあうメンバーたち。もちろんマイケルも笑顔。
もちろん緊張感はあるんだけど、笑顔やジョークもあふれてて、もちろん、もんのすごくハイレベルな音楽が鳴ってて、肉体が躍動してて。いい現場だと思った。

そうそう、今日は、11月1日。ちょうど日曜日が映画の日と重なったので、キャナルシティのユナイテッドシネマは、チケット売り場からして大混雑だった。
それにしても、「THIS IS IT」は420名定員のシアター、朝9時半に始まる回で、9割がた席が埋まってた。びっくりした。ものすごく不思議。いったいどんな人たちが見に来てるんだろう。だって日本でもあんなにゴシップ一辺倒だったのに・・・。や、私だって、それに流されてたひとりなのだった。
メディアでの宣伝構成がすごいから、とか、単に映画好きの人たちとか好奇心で来た人とかもいるにせよ、やっぱりマイケルのことを好きな人、かつてとても好きだった人は、たくさんいるんだと思った。だってマイケルだもん。彼は世界中を魅了したのだ。