「天地人」石田三成こそ義の男!

先週、今週と久しぶりに鑑賞。これで石田三成の見納めですからね。

いくら天下分け目といったって、ぬるま湯に浸かりきったこの大河ドラマにもはや期待なんてしてなかったんだけど、関が原の合戦はなかなかどうして良かったよ! なんか、初めて「戦国時代」って感じがした。

西軍の諸将が城に集まって気勢を挙げるところから始まって、終日の戦いのもようから小早川の裏切りが契機となっての形勢逆転、そして、落ちのびた三成が捕らえられるところまでを、45分の尺の中でスピーディーに見せてくれた。今回は、西軍目線だけあって、大谷刑部、島左近といったところには渋い俳優が配され、そのチョイ役とは思えない重みのある演技は圧巻だったし、宇喜多秀家の涼やかな武者ぶり、上地さん@小早川もハマってた。

もちろん、なんといっても三成ですよ! 城では味方の結集に深謝し、つけ入る隙もなさそうな万全の構えで参陣、それが、動かぬ小早川軍と毛利軍に焦れ、小早川の裏切りにあって憤怒し、やがて茫然から無念へと変わる表情・・・見ごたえありまくりだった。

これまで小栗旬の演技を見たことがなくて、昨年、石田三成のキャスティングを見たときは「いくらなんでも若すぎるだろ〜」と鼻白んでいたけれど、ここへきて、今年の大河の唯一の救いはこの人だ!と確信しております。

確かに、そもそもこのドラマでの三成のキャラクター作りが良かった。子どもの頃から恩顧ある秀吉に対して一心に尽くし、豊臣の名のもとに天下を安寧に治めることこそ我が道!という生き様には説得力があったし、そのスタンスを貫きながら、ツンデレ、主人公との友情、主人のためなら悪行も辞さず、苛められっ子、そして悲劇的な死など、さまざまな姿が描かれるのも、おいしい役どころでした。

しかし、この三成に視聴者がキッチリ感情移入できたのは、やっぱり小栗旬という役者によるもの。
才走った能吏、なんて嫌な奴なんだ、と周りに見られ、それを自分でも理解していながら、それでもいい、自分にはこの生き方しかできないという、ある意味、不器用な青年。怜悧な反面、心優しく、気高い理想に殉じた男。小栗さんの演技が、三成を脚本以上に深みのある、魅力的な人物に見せてくれた。最後は、なんて爽やかで透徹とした三成だったことでしょう! 

あんなに頭が小さい、現代的な風貌なのに、なんでこんなに時代劇が似合うんだろうか? 完全無欠のイケメンってわけでもなければ、逆にアクの強いお顔ってわけでもないのに、なんか引き付けられるものがあるんよね。これを天性の華というのか? ここぞという場面での表情とか、もうワシッと心臓つかまれるようだったもん。スッとした立ち居振る舞いや、よく通る声、滑らかなせりふまわしなどは、蜷川さんの舞台やなんかで磨かれてきたのかねえ。

蜷川さんといえば。
小栗さん、シルバーウィーク中だったか、NHKの『スタジオパークからこんにちは』にゲスト出演してて、それはもちろん、関が原合戦の番宣が主な目的だったんだけど、天地人の出演者のみならず、驚いたことに、蜷川さんから小栗さんへのビデオメッセージもあった。そこで蜷川さん、
「旬、オマエは本当に才能のある、これからを担う役者なんだから、ホンを選べよ!」
て普通に言ってて思わず噴いた。このタイミングでそんなこと言われたら、そりゃ「天地人」の稚拙な脚本のこと言ってるとしか思えないじゃないですか〜。蜷川さんも、あまりにあからさまだと思ったのか、
「不良高校生の役とかやっててもしょうがないんだよ。若い奴が不良やって、かっこいいのはあたりまえ、そういう役で下手だって言われる俳優なんて、いやしないんだから!」
と、さらにターゲットを広げた毒舌でフォローしちゃってさ。スタジオの小栗さんも苦笑するしかないよ。

そういえば、しばらく見ないうちにこのドラマ、直接の家臣やよっぽど親しい間柄でなければ、「兼続」「三成」「家康」みたいな“諱(いみな)”を呼び合わず、「直江山城守」「石田治部少輔」「徳川内府」と任官名で呼び合うようになっていたけど、そこらへんだけ、ちゃんとした時代劇みたいになってんのね。